「ヘルメス」分類の欠点(大)

《露骨な天禀/Blatant Gift》

内容:

 マギにつきものの、天稟による社交ペナルティが激化します。

第四版からの変化:

 −1から−3相当へ値上げ。周辺を眺めても、妥当なところかと。

コメント:

 ヘルメスの大の美点《穏和な天稟》の裏返しです。天稟の社交ペナルティにはまず、大の美点欠点で左右される

無し《穏和な天稟》or一般人) 通常(《天稟》or《魔法の雰囲気》) 最悪(《露骨な天稟》)

の三段階の程度があって(p.76)、それに加えて、小の美点欠点でもって動物限定の例外処理オプション《動物を怒らせない》or《動物を怒らせる》)をつけられる仕組みになっています。

 俗世との人付き合いをバッサリ切って捨てるなら、この《露骨な天稟》は美味しい(?)欠点です。ただ、町や村に入れてもらえずに(もしくは他のマギから同行を禁じられて^^;) 野宿するくらいは覚悟しておきましょう(笑)

 そうした局面を想定すると、キャラクターが俗世の人や動物をどのように見ているかは、プレイにおいて案外大事になってきますね。劣等人種と見下しているとか、あるいは親しくなりたいのに拒まれるばかりとか。

《無秩序な魔術/Chaotic Magic》

内容:

 即興呪文のレベルが詠唱前の想定から外れてしまった場合、その呪文の制御を失います(何が起こるか分かりません:SGが決定)。

第四版からの変化:

 4版では±5レベルまでなら想定範囲内と勘弁してもらえたのですが、5版では±1までしか認めてもらえなくなりました。でもまあ、即興呪文の最終的なレベルが想定から±5以内に収まらないケースといえば、ストレスダイスで1を振って倍々ゲームになったときか、予期しない強烈なオーラがあったときくらいですからね。ある種ルールの穴だったわけで、妥当な変更かと思います。

 一方で、定式呪文やウィースのボッチ数倍増というペナルティが消え、呪文の習熟禁止も無くなっています。コストは−4から−3へ値下がりですが、まずもって良い取引かと。

コメント:

 呪文全体が荒っぽいのか、あるいは《メルクリウス魔法》のように、準備してゆっくりやるのは得意でも、その場で一気に編み上げるのが不得意なのか。いずれにせよこの欠点、術者本人より周囲が迷惑しそうですね(笑)

 即興呪文限定のペナルティですので、即興呪文を強化する《ディエドネー魔法》《生命直結魔術》とは相性に難あり(もっともこの両者は、即興呪文のレベルの結果を制御する作用も強いですので、それでカバーできてしまう面も大きいかもしませんが)。逆に、即興呪文の不得意なマギが取り、そうして稼いだポイントを回して定式呪文や呪付に卓越するのが王道です。
 なお、《微力な即興呪文/Weak Spontaneous Magic》《即興呪文が苦手/Difficult Spontaneous Magic》を組み合わせると、即興呪文を全く使えないマギが出来上がるわけで、その前提でこの欠点をとれば「実質的にノーペナルティで大の欠点を丸儲け」という発想も当然出てくるとは思いますが……しかし、p.36の前文にありますが、実効のない欠点は原則として取るべからずとなっているのでした。残念(^^;)

《苦手な技法/Deficient Technique》

内容:

 一つの技法のかかわるすべての判定値(行使値・研究値・学習値など)が半減します。

第四版からの変化:

 コスト可変型の《魔術の欠陥/Magical Deficiency》のうち、コスト−4のものが該当します。判定値全体でなくその技法の値のみ半減というバージョンがあったのですが(技法の場合はコスト−3)、それが無くなり、さらに評価額も−4から−3相当へ値下がりしました。

コメント:

 ヘルメスの小の欠点《苦手な形相/Deficient Form》と平行しますが、組み合わせ相手が5しかない形相に対して、10ある技法はそのぶん適用頻度が高いとして、コストが大になっているのでしょう。

 実能力の上昇効率が1/4にまで下がるわけで、これのついた技法はおよそまともに上げる気が失せます。コヴナントの同僚に任せて、ほぼ捨てるくらいの気持ちでないといけません。厳しいペナルティです。

 ただ、そこを逆手に取って、キャラ立てに活かしていくこともできるとは思います。たとえば Creo で取って《憂鬱/Depressed》に「私の手は破壊しか生まない」とか、あるいは Muto のこれと《死の予言》《幻視/Visions》を併せて「見通していながら変えることはできぬ」とか。

 なお、マギたちは徒弟修業のごく初期に、師匠から15の術法それぞれに開眼(opening)させてもらいますが、このとき師匠の値が5点未満だと、徒弟は該当する術法に《苦手な技法》《苦手な形相》がついてしまいます(p.107)。
 《天稟》持ちの貴重な人的資源にこれを「やっちまった」師匠は評議会で責任を問われますし、また、《苦手な技法》がつく理由は他にもいろいろあります(魔法の事故とか黄昏とか、あるいは本性に根ざした他の美点欠点に引きずられて矯正しきれずにとか)が、しかしそれでも、師匠から弟子へと苦手分野の再生産が続いていくのはありそうな話だと思います(《魔術の専門分野》とセットだとさらにグー)。もっとも、単に《無能な師匠/Weak Parens》だっただけという泣くに泣けない話もあるかもしれませんが…。

《延命儀式が困難/Difficult Longevity Ritual》

内容:

 延命儀式の対象になる場合、研究値が半減します。

第四版からの変化:

 WGRE所収の−3の欠点《長寿薬が困難/Difficult Longevity Potion》からのコンバートです。ただし「ウィースの消費量が倍になる」から「研究値が半減」へ内容は一変。実効値が下がる今回の方が、ペナルティは重いと思われます。

コメント:

 延命儀式は一般人にかけると、効力がマギの半分にしかなりません。つまり《延命儀式が困難》持ちは、抗老化については一般人と同等の条件になってしまうということですね。

 また、この欠点の持ち主を「対象とする」延命儀式が半減するのであって、この欠点の持ち主が「行う」延命儀式は通常どおりであることに注意。本人の中になにか、延命儀式を妨げる性質や事柄が埋まっているのでしょう(その辺、Ars Ludorum のサガでの tmiya さんのキャラ Hadrianus は、小の一般美点《不老》との組み合わせでとても綺麗に仕上がってました。一生が他のマギほど長くはないであろうと悟るがゆえの「何かを残す(笑)」衝動とか)。

 あと老化に関しては、4版時代に書いたものでだいぶ内容が古くなっていますが、こちらの拙稿もご参考にどうぞ。(5版の老化についても後で期待値など計算して、「平均余命」とか出してみたいんんですけど、まだそこまで手が回りません^^;)

 なお、ゲームシステム的にいえばこの欠点は、死ぬまでにマギが使える季節数(=成長や呪付の行動回数)を大きく減少させる機能となります。マギが少なくとも50〜60歳まで達しないケースでは、欠点として機能しづらい(p.36)ので、取得を禁じられるサガも結構あるでしょう。逆に、p.32-33などを用いて最初からベテランのマギをプレイする場合や、あるいは高速に時間を進めるサガなどに向きます。

 サガ中の時間経過とそれがもたらす影響についてはp.218にガイドがありますが、極端な話10年単位で進めると、グロッグはバタバタと世代交代していくでしょうから、それを見送る通常のマギとの狭間に立つというのは、見苦しくもなかなかに美味しいポジションな気がします。

《魔術への耽溺/Magic Addiction》

内容:

 魔法の力を振り回したい衝動にかられます。ストレスダイスで呪文を唱えた際、我慢する判定に失敗すると、同等以上の呪文をもう一つかけてしまいます(以下同じで、我慢できないかぎり延々と唱え続ける)。

第四版からの変化:

 コストも含め、ほぼ変化なし。ただし、2回目以降の我慢判定で、1回ごとに大きくなるボーナスをもらえるようになりました。

コメント:

 やめられない止まらない〜♪

 平時の場合「呪文を1つ使うたびに2分休む」のはマギの常套手段(=最も軽い短期疲労なら2分で回復する)ですが、この欠点はそうしたマメな回復を妨げます。不要な呪文をかけてしまうこと自体よりも、実プレイでのデメリットはそちらの面が重いかも。なお、この判定、プレイに熱中してくると案外忘れるので、取ったPLは責任を持って罰ゲームを自己申告するよーに(笑)

 また、【知性】と〈集中力〉にある程度気合い入れてキャラを組んでおけば、中規模の呪文までは我慢判定にわりと成功するので、ペナルティのキツさがだいぶ緩和されるのは確かです(〈集中力〉は幼少期から経験値を入れられますし)。Ars Ludorum のサガで私の使っているキャラがその一例。
 ただこれも、30レベルを超えるような大規模呪文の場合には、そうそう簡単に押さえきれるものではありません。その意味で、マギが成長するほど負担は重くなってきますし、高レベルの儀式に優れる《メルクリウス魔法》等とも相性悪いでしょう。

あとこの欠点にはこんな笑い話(実話)も。
4版時代にコンベンションで遊んだ際、作成済みキャラクター集からPCを選んでもらったのですが、PLの一人がこの《魔術への耽溺》を備えた爆炎のフランボーAを使いまして。

クリーアモン:(InVi を使って)この扉には、開けると爆発する封印がかけられているぞよ。

ボニサグス:PeVi でディスペル……ってまてよ、
        これってきっと、CrIg を ReVi で遅発する仕掛けだよな。
        もしも ReVi の方だけ解除しちゃったら、その場で CrIg が解放されるぞ。

二人:さてどうしたものか(しばし黙考)

………………………………………………………

フランボー:あのぅ、私ですけど、おあつらえむきの耐火呪文があるにはあるんです。

ボニサグス:ん? ならどうして使わないの?

フランボー:いえ、それが……使った場合に自分を抑えられる自信がなくて。
       我慢に失敗するとCrIg35“奈落の炎球”とか撃っちゃうでしょ?
       で、使うのと使わないのと、果たしてどっちが危険かな〜と(=_=)

周りの足を引っ張ってはいますが、こういう「危険物」が仲間にいるのも、それはそれで楽しいです(笑)

《発動条件/Necessary Condition》

内容:

 特定の行為をしないと呪文を発動できません。

第四版からの変化:

 内容同一のまま、評価額が−1から−3相当へ上がりました。

コメント:

 魔法使いサリーの「マハリク・マハリタ....」みたいなもんです。詠唱や身振りの大きさを変えることが事実上できなくなるわけで、見かけよりもかなり重いペナルティ。大の欠点と評価されるのも然るべきことと思います。

 この欠点は《独自の発動法》の逆位置ですから、そちらと併用するのもお勧めです。ただし、前者が定式呪文のみを対象とするのに対して、こちらは呪文全般に適用されることに注意。

 また、《発動条件》の内容を詠唱や身振りを伴わないものにした場合(「恵方を向いて無言で太巻きを食べる」とか^^;)には、《静かな魔法》《目につきにくい魔法》の援護が欠かせません。冗談はさておき例えば歌魔法とか、そういうスタイルをとらせたい時に役立つと思います。その意味で、雑集派はじめ《俗魔法使い》に近いキャラクター向けですね。

《苦痛を伴う魔術/Painful Magic》

内容:

 呪文を行使するたびに1段階の「苦痛度」を蒙ります。同段階の疲労度と同様の行動ペナルティが発生。

第四版からの変化:

 まったく変化なし。

コメント:

 行使値がどれだけ高かろうが苦痛は容赦なく発生しますから、実際のペナルティの量は、疲労度によるものよりも多いでしょう。もちろん疲労度の喪失も別途処理されるわけで、下手をするとペナルティがペナルティを呼んで、雪崩式に倒れるおそれがあります。純粋に行使の回数に依存するだけに、疲労しない(ダイスを振らない)即興呪文でさえ苦痛がくるんですからたまりません。

 また、持続が「集中」の呪文を維持している間にもう一つ別な呪文を唱える場合には、ただでさえ過酷な集中判定が必要ですが、そこへ痛みのペナルティが加わると、ほとんど人間業ではなくなります。これに耐えて呪文を唱え続けた『ロードス島戦記』の黒魔術師バグナードは。こうした行為をしたければ、彼に学んで《忍耐力》《意思堅固》を仕込んでおくのも一法です。あとまあ、呪文に依存する度合いを減らすというアプローチで、呪付に傾斜するとか。

 もう一つ対症療法として、疲労度を回復するヘルメス魔術は、魔術理論の抱える欠陥(エネルギーの限界, p.80)により存在しませんが、痛みをとる呪文ならこれに抵触しません。一時凌ぎならたぶんCrCoで構成できるでしょう。PeCoのガイドラインとも対照するに、基本レベルは軽傷相当くらいが妥当かな?

#ただし、魔法に長時間被曝すると歪曲値が増えますので、その点はくれぐれもご注意を。

《状況の制限/Restriction》

内容:

 特定の状況では呪文や魔術物品が発動しません。術者の状態、呪文をかける相手、周囲の環境など様々なものを「状況」として指定できます。

第四版からの変化:

 《阻害状況/Deleterious Circumstances》から分家しました。以前はコストが可変でしたが、その中の「頻度:普通」&「制限:全体」の組み合わせがこちらです。コストは−4から−3相当へ微減。

コメント:

 《得意な状況》の逆位置。また、いわば「攻め」の弱点であるこの《状況の制限》に対して、「守り」を制限するのが同じく大の《魔法抵抗の弱点》です。屋上屋を架すきらいがあって個人的にはいささかクドい気がするんですが、重ね取りも考えられるでしょう。《誓い》との併用も同様です。

 持ち主としてまずは旧約聖書のサムソンが挙げられます。惚れた女に秘密を漏らして裏切られるところまで、この手の物語の王道ですね。またこの範例から学ぶに、こうした秘密の弱点が物語的に映えるためには、圧倒的な力を普段から感じさせておくこと、そして正々堂々ではかなわないので搦め手から彼を倒そうとする《宿敵》を配しておくことが肝要でしょう。

 状況は他にも「真の名を言い当てられると」「陽光の下では」「化身の大樹を切られると」等々いろいろ遊べます。ビョルネール派だと《心獣》の天敵にひっかけるのがポピュラー(サプリ"Medieval Bestiary"に面白いネタがたくさん出ています)。凝ったところだと性格分類の各種欠点と組み合わせて、「あの奇行には実はこんな訳があったのか!」という演出もできそうですね。

《硬直した魔術/Rigid Magic》

内容:

 呪文行使の際にウィースを使えません。

第四版からの変化:

 コストが−2から−3相当へ出世。5版になって、定式呪文の射程や持続をウィース消費で増幅するルールが消えてしまいましたし、判定値上乗せの用途でもウィースの効力は半減しているので、ペナルティ自体は減少傾向にあるものと思うのですが。

コメント:

 サガの資源の度合い(p.218)にもよりますが、よほど切羽詰まった状況でもなければウィースで行使値を上乗せはしませんから、そちらの制限は大して気になりません。儀式呪文を一切使えない―――すなわち50レベル超の効果を起こせず、永続的な効果も発生させられない―――ことが実質的なペナルティといえます。

 即興呪文をメインにする《ディエドネー魔法》《生命直結魔術》と相性がよく、また呪文行使以外でのウィース利用には適用されませんから、《ウェルディーティウス魔法》にも良さそう。割り切ってしまえば案外お買い得かもしれません。

《短射程魔術/Short-Ranged Magic》

内容:

 対象に触れていないと行使値が半減。さらに、射程が「接触」を越えるものを研究室で開発する場合も研究値が半減です。

第四版からの変化:

 《個人的魔術/Personal Magic》からマイナーチェンジ。閾値が「術者」から「接触」に上がりました。これはかなり大きいです。それに見合って、コスト評価は−6から−3相当へ値上がり。まあ悪くない見当かと。

コメント:

 各々の呪文がもつ三つのパラメータのうち、「射程」にはこの《短射程魔術》が、「持続」には小の欠点《短命な魔術》がペナルティをかけます。「対象」にかかわる欠点は存在しません。

 射程「視線」は射程「接触」とレベル上は同格ですが、そこの処理はSG判断でしょうか(私なら、「触れる」をキーにしている感じがするのでペナルティ適用、かな)。また、気をつけたいのは、「接触」を越える射程の呪文や呪付物でも、現場で使う際には、対象に触れてさえいればペナルティを喰らわずに済むということです。もっとも、わざわざ高いレベルで修得するような真似は普通はしないでしょう。既存の研究書巻を借りてそれを再現する場合でも、開発の段階で研究値が半減するため、そちらが得になるケースは稀ですから。

 いずれにせよキャラクターを選ぶ欠点で、ロールマスターの道士のような自己錬成/ドーピング系のマギや、あるいは《盲目》なマギなんかがお得意様だと思います。腕の延長として実質の「接触」射程を伸ばしてくれるタリスマンには、杖など長いものを選びたいですね!

《学習条件/Study Requirement》

内容:

 読書またはウィース研究によって術法を成長させる際には、対応する存在(例:Ignemなら火)に接しなくてはなりません。

第四版からの変化:

 接する実物の規模が具体的に例示された他はまったく変化なし。

コメント:

  対応する存在に接することでボーナスを得る《実物の研究》の逆位置です。まあその、「田舎の学問より京の昼寝」といいますか。
 読書とウィース研究以外で能動的に術法を上げる手段というと、冒険か指導くらいしかありませんが、どちらも機会が少なくなりがちですので、学習手段を変える方向で制約を回避するのは(意図的にキャラクターやコヴナントの構成を組んでおかないかぎり)困難です。成長を遅らせる欠点としてかなり強烈。

 また、術法の値が上がるほど環境作りに励まないといけなくなりますから、それは傍目には本末転倒な奇行に映ることもあるでしょう(気象実験してAuramだとか、溶岩風呂に入ってIgnemだとか^^;)。だが(魔法使いっぽくて)それがイイという声もありますが。
 いっそライフスタイルと結びつくようにしておくのもいいかもしれませんね。森の護り手なら、深い森に住んで大樹と語らうことが Herbam に資するでしょうし、ヒポクラテスに続かんとする医師であれば、人の生老病死と日々関わることで、自然と Corpus が上がっていくと思います。

《黄昏の誘い/Twilight Prone》

内容:

 魔法の暴走を止められなかったり、あるいは止める意思がなかったりします。ボッチ1つで黄昏判定。

第四版からの変化:

 WGRE出典。黄昏判定のトリガーが厳密化されたことに伴い、ボッチ時にさらにおかわりがくるという内容から、黄昏判定を要求される条件の低下に変わりました。若干キツくなった感じでしょうか。

コメント:

  なぜ黄昏に陥りやすいのかは、性格や魔術理論、Vim の値などから理由づけるとよいと思います。《魔術への耽溺》《ウィースの浪費家》《神聖感受性》《予測不可能な魔術》などと組み合わせると、ボッチの機会が増えて楽しいことになります(^^;)

 なお、マギの一生の長さを左右するのは、年齢よりもむしろ黄昏です。老化は延命儀式でかなり食い止められますから、肉体が滅びるより先に終末の黄昏に入ってしまったり、そうでなくとも歪曲が重なって役立たずになってしまったり。
 ですから、歪曲値の蓄積を促すこうした欠点を取るのは、ある意味寿命を磨り減らすようなものです。もっとも、黄昏を読み解くだけの理解力がある(特に専用美点の《エニグマ》を持つクリーアモン派)なら、黄昏から得られる知識は、抗しがたい誘惑ではありますが。終末の黄昏を人生の終わりとは考えない神秘思想があったりすれば、それは尚のことでしょう。

《未体系化術者/Unstructured Caster》

内容:

 ただの定式呪文を唱えるにも、儀式呪文とまったく同じ手続きが必要になります。また、儀式呪文を修得することはできません。

第四版からの変化:

 内容は変わらないまま、コストが−6から−3相当へ減額されました。ハッキリ言って−6の方が正価なように思うのですが、五版では−3が最大値ですからねぇ。うーむ。

コメント:

 作り置きの呪文は徹底的に苦手なものの、即興呪文はノーペナルティ。「アドリブじゃなきゃねえ」というジャズメンのような欠点です(笑) 《ディエドネー魔法》などで即興呪文に特化するのが王道でしょう。また、うちのアグリッパのように、呪文をバッサリ捨てて、呪付に生きる手もあります。

 なお、この欠点を《硬直した魔術/Rigid Magic》と組み合わせると、定式呪文&儀式呪文をまったく使えないことになり、さらに《微力な即興魔法》《即興魔法が苦手/Difficult Spontaneous Magic》をとって即興呪文も潰すと、一切の呪文を唱えられないマギが誕生します。コストはぴったりマイナス10!
 祖師ウェルディーティウスは、呪付に空前絶後の腕前を誇った一方で、呪文は一つとして使えませんでしたが、それはきっとこういう欠点構成をしていたからに違いない(^^;)

《ウィースの浪費家/Waster of Vis》

内容:

 ウィースを用いるあらゆる場面において、消費量の1/4が無駄遣いになります。

第四版からの変化:

 これもWGRE出典です。無駄遣い量が半減しました。コストは−4から−3相当へ微減。

コメント:

 本文はなにやら混乱しているように見えますが、要するに「1/4が無効になる」ゆえに「最終的に正価分を確保するには(3/4の逆数で)4/3に当たる数を払っておけばOK」ということです。

 まあ言ってみれば、穴の空いた財布というか、ザルというか。《苦手な形相:Vim》や〈魔術理論〉の低さで燃費が悪いのかもしれませんし、あるいは単に使い方が無造作なだけかもしれません。
 いずれにせよ、世俗の富に興味のないマギにとって、ウィースは財貨に一番近い存在です。ウィースの銀行や両替商のような業務もしているメルケーレ派の《赤帽士》たちにとって、この欠点の持ち主はさぞお得意様になることでしょう。

 補填策(?)としては、美点《個人のウィース源》がまず挙げられます。コヴナント収量の1/5目安ですから、環境にもよりますがこれで穴埋めできる部分も多いはず。また、儀式呪文や呪付の頻度が低くなるよう心がけさらに、交易でウィースを引き出せるだけの値打ちがある著書や政治力など、稼ぎも出せるようにしておきましょう(それが浪費に追いつくかどうかはさておき^^;)。あとまあ、コヴナントの同僚には白い眼で見られること間違いなしですから、その点も覚悟して……というかそれをなんとかキャラ立てのネタにしたいところですね。

《魔法抵抗の弱点/Weak Magic Resistance》

内容:

 特定の状況で呪文をかけられると、相手が突破力からレベルを差し引かずに済むため、魔法抵抗が困難になります。

第四版からの変化:

 パルマ無効という内容から、新しい突破力の算出方式に合わせて変化。それに伴って名前も《パルマ・マギカの弱点》から《魔法抵抗の弱点》に差し替えられました。コストは同じ。

コメント:

 同じく大の欠点である《状況の制限》の防御側バージョン。状況の設定については、そちらの記事をご覧ください。

 弱点を衝かれた場合の処理が「突破力からレベルを差し引かずに済む」となっていますが、これすなわち、高レベルの呪文でも平気で通ってくるということです(普通ならそうした大魔法は、唱えるだけでいっぱいいっぱいになって、突破力に割ける力はたいして残らないはずなのに…)。30レベルや40レベルの呪文を喰らえば一撃死も覚悟しなくてはなりませんから、弱点の秘密は文字どおり死守しなくてはなりません。くれぐれもご注意を。

《微力な即興魔法/Weak Spontaneous Magic》

内容:

 疲労して即興呪文を唱えることができません。

第四版からの変化:

 −6の《即興性欠如/Non-Spontaneity》が、この《微力な即興魔法》と《即興魔法が苦手》の二つにパーツ分けされました。

コメント:

 本文にも書かれていますが、《即興魔法が苦手/Difficult Spontaneous Magic》と組み合わせると、即興呪文をまったく使えないマギが出来上がります。定式呪文は呪付で代替できますが、即興呪文は替えがききません。即興呪文ってどうしても非力なきらいがありますから、それ自体で決定打になる場面は少ないですが、一方でその柔軟性から孫の手みたく「痒いところに手が届く」という面もあります。定式呪文などを構成する季節数をサガの中でどれくらいとれるかにも左右されますし、諸条件をよくよく吟味して判断したいところです。

 なお、ローマ系の神官たちが儀式呪文を主としたように(《メルクリウス魔法》)、即興呪文は大本を辿ればドルイド僧たちの技です(《ディエドネー魔法》)。8世紀における祖師ボニサグスの理論統合を経て、13世紀現在ではその別はもうほとんど薄れていますが、前述の美点を持つほどルーツに近い系譜のマギにするなら、その辺の対抗意識をつつくと面白いかもしれませんね。

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