「一般」分類の美点(小)

《素質(能力)/Affinity with Ability》

内容:

 対象の能力について、取得経験値を1.5倍します。複数回取得できますが、一つの能力に重複はダメ。

第四版からの変化:

 新規参入組。《素質(術法)》に便乗してのデビューです。

コメント:

 早熟の《強化》に対して大器晩成の《素質》という棲み分けは健在ですが、成長に必要なそもそもの経験値、そして《強化》のボーナス量が、術法と能力では異なるため、この宿命のライバル関係も少し様子が違ってきます。

 こちら能力版では、修正込みの値が10に達するまでは《強化》が、11からは《素質》が有利。能力において 10 といえば、凡人だと一生それで暮らしてきたベテランでも足りない値ですから、中級で優劣が逆転した《素質(術法)》に比べると、《素質(能力)》の株はいくらか低めに思えます。
 しかし見方を変えて、これを取ることで節約できる経験値を、優劣逆転するタイミングで比較すると、術法版の22点儲けに対して、能力版は92点儲けと圧倒的。結局、大器晩成の志向が非常に強い美点という捉え方が当たっているのでしょう。

 なお、サプリ"Houses of Hermes: True Lineage"にて、《語学堪能/Linguist》という姉妹美点が入りました。そちらは単一の技能でなく、言語技能全般を対象にするかわりに、割り増し量が1.25倍に抑えられています。言語関係は著述や写本など、書籍がらみの能率(ひいてはコヴナントの成長速度)に大きく影響しますから、これはこれでなかなか魅力的。

《教わり上手/Apt Student》

内容:

 他者から直接教わって成長する場合、取得経験値に大きなボーナス。具体的には、マンツーマンの「訓練(training)」と多人数教育の「指導(teaching)」がボーナスの適用対象となります。詳しくは p.164 を参照のこと。

第四版からの変化:

 たぶん新規参入組。前からあったような気もするのですが、改めて眺めてみたら見あたりません。

コメント:

 飲み込みが早いという美点。とにかく教えてくれる先生がいないと話になりません。このゲームのキャラクターたちにとって、季節単位の時間はきわめて貴重なリソースですので、自分の研究や成長を犠牲にしてまで教えてくれる人物は稀です。相当な代価が必要でしょう。得られるボーナス量が、《読書家》など他の成長系美点にくらべて倍近い大きさなのも、そうした適用機会の少なさに対するバランス取りのはず。

 おそらく一番現実的な手段は、コヴナントで建設値を払って、指導者をお抱えにしてしまうことです。かかる建設値は書籍とほとんど同じで済みますし、この美点や《教え上手/Good Teacher》があれば尚のことお得感がありますが、ただ、本と違って人間は老いますから、後継者を育てさせたり、場合によっては長寿儀式をしてやったり、という措置が必要になります。

 マギなどの《天稟》持ちとそれ以外の一般人という組み合わせで教師/生徒関係になるときには、どちらが教師でどちらが生徒でも、《天稟》の社交ペナルティが成長値にも悪影響を及ぼしてしまいます(p.75)。一応注意なさってください。
 もっとも、パルマ・マギカでカットはできるでしょうから、毎日パルマの儀式に同席してもらえば、面倒くさい以上の実害はありません。本当に問題になるのは、パルマで囲いきれない人数を指導(teaching)で教えるケースくらいでしょうか。

《秘儀知識/Arcane Lore》

内容:

 キャラ作成時から秘儀技能が取得可能。さらに、秘儀技能にのみ使える経験値を50点もらえます。

第四版からの変化:

 コスト据え置きで、作成時の一時金がつきました。誰一人見向きもしなかった日陰者に、ついに陽の目をみるときが…!

コメント:

 キャラ作成にあたっては、わりと経験値が不足する傾向にありますから、初期経験値を増量する美点はとても魅力的です。長いサガならともかく、単発セッションではほとんど必須といっても過言ではありません。

 ただし、一時金の質/量はともに《有能な師匠》に完全に負けています。マギならまず《有能な師匠》を取り、それでも足りない場合(困ったことに実際に起こります)に、さらに《秘儀知識》を取るという順序になりましょう。

 マギ以外のキャラクターなら秘儀技能の取得資格という面も活きますが、しかし〈ヘルメスの掟〉と〈呪文操作〉はマギでないと使い道がごく限られますし、〈パルマ・マギカ〉なんぞ取ろうものなら、自動的に魔術団の殲滅対象ブラックリストに仲間入りです。結局、超常美点の持ち主が〈突破〉をとるケースか、もしくは学者さんなんかが各種の〈異界知識〉を取るケースくらいでしょうか。(もっとも、後者の場合には《異界の造詣》というライバルがあるのですが)。

《凶暴化/Berserk》

内容:

 傷を負ったり負わせたりすると、怒りに我を忘れて、攻撃値・吸収値にボーナス、防御値にペナルティ。

第四版からの変化:

 疲労判定へのボーナスが消えました。他は変化なし。

コメント:

 旧版時代からあいかわらずビミョーな美点です。大の物語欠点には《憤激/Fury》もあることですし。個人的には、有利でもないが不利でもないという感触なので、これを中心にキャラを立てるのでなければ、あえて取りたいとは思いません。いずれにせよ、周囲のマギは、Mentem魔法でしっかり制御できるようにしておきましょう。

 あと、戦闘数値による部隊編成の制限がいかにあったとしても、そしてグロッグのテンプレート(p.21)に載っているとしても、バーサーカー部隊はいかにも危険です。同じ場所に複数の狂戦士を配置するのは控えた方が賢明かと(^^;)

050920追記:SG判断の大きいところかもしれませんが、ルールブックの記述をみるかぎり、敵味方の識別は「微妙に」できているっぽいです。とりあえず敵が全滅するまでは、味方を攻撃しなくてもいいみたい。

《読書家/Book Learner》

内容:

 本を読んで成長する場合、取得経験値にボーナス。

第四版からの変化:

 コスト据え置き。能力に入れる場合の経験値1点あたりの価値が下がりましたから、ボーナス量の上昇は見かけだけです。もっとも、術法を伸ばす場合は見た目通りの微増ですが。

コメント:

 当然ですが、読書するためには、字が読めないといけません。すなわち、〈自由学科〉1点と、書かれている言葉(多くは〈ラテン語〉)4点が必要。

 さらに言えば、〈自由学科〉は学術技能なので、マギ以外のキャラが最初から持つためには《教育/Educated》なり《司祭/Priest》なりといった美点を別途取らないといけません。
 もっともゲーム開始後にはこの制限は外れますから、言葉と〈自由学科〉さえ誰かが教えてやれば、学のないキャラクターでもちゃんと読めるようになります。そういう意味で、野蛮人にわざとこの美点を仕込んでおくのも、それはそれで面白いかもしれません。これぞ「呉下の阿蒙に非ず」(^^)

 もう一つ別な視点として、《素質(術法)》《素質(能力)》といった、単一技能に限定した美点との比較があります。《素質》は5割増しで大きいですが、《読書家》のボーナス量も捨てたもんじゃない。品質が低くて、必要な学習期間が長くなる環境では特にそうで、おおむね品質が 6 なら互角、それより低ければ《素質》より《読書家》などが有利になります。
 適用範囲については、《素質》が術法単位であるように、《読書家》などは学習方法で縛りがあるわけで、どちらが広いかはキャラクター次第というよりありません。たとえば単一術法に特化した専門家なら《素質》が、幅広く習得する万能型なら《読書家》が有利なのは明らかでしょう。それと、キャラクターというよりコヴナントかな。蔵書を多くして、読書家のマギが集まるとか。

 最後に、第四版を長くやっていた人はうっかりしやすいのですが、第五版では書籍も指導も、学術以外も対象にすることができます。つまり、〈片手武器〉の紀要書で『五輪の書』ってなこともありうるんですね。教会関係者以外に識字率がほとんどなかった史実の13世紀欧州には似合いませんが、実践(practice)などに比べると、読書で得られる経験値は確実に大きいです。読み書きって大事だなあ。

《細心(能力)/Cautious with Ability》

内容:

 対象の能力についてボッチダイスが2つ減少し、破滅的な失敗をしづらくなります。(この効果によって、ボッチダイスを0にすることも可能です)。

第四版からの変化:

 コスト据え置きで、減少数が1つから2つになりました。強化は強化ですが、そんなに目立って変わった印象ではありません。

コメント:

 魔法を対象として同様の機能を担う《慎重な魔術師》の弟分です。減少数で劣るものの、兄貴分と違って0個まで持っていける点がチャームポイント。

 ボッチが即座に歪曲値の増加、ひいては黄昏へと繋がる魔法に比べ、能力判定にそこまでの危険性はありません。せいぜい、滑りやすい足場などの悪条件下で白兵戦をするケース、厳戒態勢の敵地へ〈隠密〉で忍びこむケース、そのくらいでしょうか。そりゃああれば無いより良いでしょうが、あくまでも贅沢品といった感じ。

 積極的な用法をあえて探せば、集団戦のボーナスをひたすら防御に回したりして、相手にのみリスクのある持久戦を延々と続ける、ってのはどうでしょう? 周辺環境(がもたらすボッチダイスの数)の加減にもよりますが、ボッチの可能性を完全に消せるわけですし。

《頭脳明晰/Clear Thinker》

内容:

 嘘や混乱に惑わされず、理性的な判断をくだす際にボーナス。

第四版からの変化:

 まったく変化なし。

コメント:

 商人であれ外交官であれ、対人交渉に携わるキャラクターを地味に支えてくれる縁の下の力持ち。〈魅惑〉をはねつけ、〈詐術〉に乗らず、〈陰謀〉の策を見抜き、といった案配です。魔法にすら有効なので、効き目は充分。こういう愉快なへりくつにも負けません(^^;)

 マギでいうと、審問士派はもちろん、トリアノマを祖とする政治系のボニサグス派あたりが持っていそう。一方で、とりたてて社交に積極的でないキャラには、あまり意味がありません。キャラクターを選ぶ美点といえそうです。

《常識/Common Sense》

内容:

 何かマズイことをしようとしたときに、SGが助言してくれます。

第四版からの変化:

 こちらもまったく変化なし。

コメント:

 ルールブック本文では初心者の補助にと謳っていますが、個人的にはあんまりオススメできないかなぁ。私はわりとナッキーさんと同じような考え方をしてますんで。それに、この美点があろうとなかろうと、また初心者であろうとなかろうと、卓における「常識」の摺り合わせ/形成はどのみち大事です。たとえば、どこまで時代考証するかはサガごとに決めるべきことですが、第16章には「純粋なファンタジー」から「超詳細な考証」まで、選択肢が幅広く提案されています。ご参考にどうぞ。

《教育/Educated》

内容:

 正規の学校教育を受けました。キャラ作成時から学術技能が取得可能で、さらに、〈ラテン語〉と〈自由学科〉にのみ使える経験値を50点もらえます。

第四版からの変化:

 コストは変わらず、もらえる経験値が15点(相当)増えています。また、初期年齢の制限がなくなりました。

コメント:

 本を読むためには〈ラテン語〉4と〈自由学科〉1が必要。これだけでもう55点かかり、足が出てしまいます。経験値の割り振りに夢をふくらませる暇なんてありませんね(^^;) この美点がなくとも、「地位」分類の美点各種が学術技能の取得を可能にしてくれますが、(単発や短期のサガでは特に)経験値が足りず結局こちらも取るハメになるケースも多そう。

 一方、マギがこれを取る場合はもう少し事情が違ってきます。上記の〈ラテン語〉4と〈自由学科〉1は、マギの必修リストにも含まれていますから、それを弟子入り前に前倒しして修得してしまえば、徒弟期間の経験値がそれだけ浮くわけです。
 その観点での競合先は《有能な師匠/Skilled Parens》。向こうの方がもらえるポイントは大きいですが、《教育/Educated》は弟子入り前の経験値の割り振りに取得資格を与えてくれるのが売り。キャラクターに合わせてどうぞ。

《忍耐力/Enduring Constitution》

内容:

 疲労や負傷でおこる行動ペナルティが緩和されます。さらに、痛みに耐える判定にボーナス。

第四版からの変化:

 単品では変化なし。ただし、負傷関係のペナルティ処理が変わったので、そのぶん強化と見ます。

コメント:

 行動ペナルティは思ったより厳しいです。詳しくはp.178〜179にありますが、たとえば

  • 負傷によるペナルティが1点でも入ると、疲労ありの即興魔法は使えない。
  • 同じく3点以上になると、もらえる経験値が半減。研究室での作業は完全に不可。

とか。思わず「えっ!?」という感じで、特に四版からのプレイヤーは間合いを見誤りやすいので要注意です。なんといっても、怪我で思うように動けずに、季節を無駄に過ごすのは痛すぎ。(長患いで何年も切歯扼腕させられた時期があるだけに、私はこの辺どうも力が入ってしまいます(^^;)

 そうした前提でみると、この《忍耐力》はなかなか美味しそうですね。特に《大柄/Large》《巨人の血脈》と組み合わせてサイズを大きくしたり、《強靱/Tough》で吸収値を上げたりしておくと、文字通りのタフガイになれます。

 あとは、本人およびコヴナント全体の治癒力との兼ね合いでしょうか。本人の【体力】が高かったり、《回復力/Rapid Convalescence》があったりすれば、治りが早いです。コヴナントに関しては、〈外科処置〉や〈医学〉に優れた医者は、あるいはCrCoの高いマギはいるのか、ウィース供給は潤沢か、特定個人専用に調整された治癒呪文はあるか、等々。そうした諸条件が調っているほど、この美点に頼らなくともよくなります。

《妖精の血/Faerie Blood》

内容:

 先祖のどこかで妖精の血が入った家系です。その妖精の性質を反映した特定の判定と、老化判定にボーナス。また、キャラ作成時からすでに〈妖精界知識〉を取れるようになります。

第四版からの変化:

 例として挙げてある妖精が、2種類から5種類に増えました。あとは、シーのもつ【魅力】の上乗せが、通常人の上限(+3)を越えられなくなったくらいでしょうか。

コメント:

 p.38の一覧では「一般」分類になっていますが、p.42の本文では「超常」分類とあります。エラッタは出ていないようですが、どっちなんじゃろ? 本稿ではひとまず一覧に従って「一般」に入れましたが、上位版である《濃い妖精の血》との整合性からは、「超常」の方が妥当かもしれません。

 妖精はそもそもが(良くも悪くも)純粋ですから、塵芥たるただの人間を見るのとは違って、同族っぽい存在には(これまた良くも悪くも)興味を抱くはずです。また逆にこの美点の持ち主からも、定命の社会にどこかなじめないでいるところがあるのかもしれません。周りに頓着せずに翔んでる人もいるでしょうし(妖精体質^^;)、不適合について真面目に悩んでしまう人もいるでしょう(酒を飲んだときだけ解放とかもあり?)。

 また、妖精の種別を比較したとき、ルール的にわりとバランスが取れているようですので、気兼ねなくキャラクターのコンセプト優先で選んでしまってOKと思います。あえて言えば、p.28のサンプルキャラが採用しているように、《ウェルディーティウス魔法》をもつマギなら〈製作〉ボーナスのドワーフ、というくらいでしょうか。

《有名/Famous》

内容:

 良い事柄でもって人々に知られています。

第四版からの変化:

 +1の《よく知られている/Well Known》と+2の《名高い/Famous》の二種類に分かれていたのが統合されました。コストで前者を、性能で後者を採っているのでお得ではあります。

 また、評判のルールが変化しましたから、この美点の評価も変わるわけですが、評判を広げるのが大変になって既存の評判の価値が上がった一方で、交渉判定に影響できなくなった点で評判自体の効き目は下がっており、強化か弱体化か、にわかに判断がつきません。

コメント:

 評判のルールはp.19とp.167を参照のこと。面白い概念で、実際の運用については四版時代に書きましたこちらの記事もご覧ください。

 評判の形成や変化は非常にゆっくりで、他人に印象を与えるような行いを、地道に一つずつ積み重ねていく必要があります。杓子定規に考えると、この美点で与えられる強度の評判が生まれるまでには、その評判に即した行為(しかも話のネタになるほどの)を50個もやってきた計算になるわけで、それだけで少なくともただ者ではないことが分かります。
 しかも、評判は1キャラにつき1つが基本で、高い方優先で塗り重ねていけますから、これだけの良い評判を最初から持っているのは、イメージ戦略の上でもきわめて有利です。つまり、不都合な評判がつきはじめても、すでにそれを超過する評判があるわけで、すぐさま振り払うアクションに入れますから。

 ただまあ、これだけ有名だと、一種の「有名税」もあるかもしれませんね。町中の人間がキャラクターと評判を即座に結びつけます。本人だと分からなければ別ですが、「面が割れている」土地ではイメージ壊す言動は控えるべきかと(^^;)

《独創性/Free Expression》

内容:

 新しい芸術作品を生み出す際にボーナス。

第四版からの変化:

 まったく変化なし。

コメント:

 魔法における《発想の天分》の、芸術バージョンといったところでしょうか。判定のスケールに比してボーナス量がかなり大きく、詩人や画家のキャラクターによく似合いますので、あまり深く考えずに持たせてしまいがちですが、案外それは罠かもしれません。なにせ芸術でなく魔法をテーマにしたシステムですから、実際にプレイしてみると、お飾りになりやすかったりするのです。注意していればそれなりに対応できますので、これを持つキャラクターをプレイするときには、SG/PLともに意識しておきましょう(たとえば妖精と歌比べをするとか、宮廷風恋愛で恋文を送るとか)。

 あとこれは余談で、伝承ヨーロッパには当てはまらないかもしれませんが、大げさにいって18世紀前半までの(史実の)欧州においては、芸術の在り方が現代とは違います。当時は絵画も音楽も、熟練した職人の作り出す実用品であって、別に新奇なものである必要はなかったのです。常に新しい実験をしなくてはという強迫観念に囚われて、同じスタイルを磨くことを退嬰的だと否定する現代音楽の風潮よりは、よほど真っ当だと思うんですけど。古い音楽を専門とするチェンバロ弾きの贔屓目でしょうか。

《教え上手/Good Teacher》

内容:

 著した本の品質が向上し、また直接指導する際にも、生徒の取得経験値に大きなボーナスがつきます。

第四版からの変化:

 新規参入組。+1の《健筆家/Strong Writer》に含まれていた書籍の品質向上をベースに、指導のボーナスを付け加えて出来た形です。

コメント:

 《読書家》《教わり上手》の裏返し。自分自身に直接のボーナスは一切無く、これほど利他的な美点も珍しいです。コストの異例な低さも、そうした部分を考慮してのことでしょう。

 もっとも、個人でなく社会の中でみたときには、後世に残る名著をものしたり、名伯楽として優れた門人を輩出したりすれば、そこに集まるであろう敬意や影響力は絶大なものになります。また、こうした人材のいるいないが、成長速度や生産力/競争力を介して間接的に、コヴナントの盛衰を分けることも十分に考えられます。そう考えると大変お徳ですが、さて誰が猫の首に鈴を付けましょうか(笑)

 関連するルールのポインタとしては、《教わり上手》の項で触れた天稟の社交ペナルティの問題(p.75)と、本を書く際に力量にゆとりがあれば、レベルを下げることで品質を上げられること(p.165)。それぞれチェックなさってみてください。

《情報通/Gossip》

内容:

 約50%の確率で、価値のあるニュースを誰よりも早く聞きつけます。また、地方の評判を二倍扱いで判定でき、新しい評判を撒くことさえ不可能ではありません。

第四版からの変化:

 コストが+2から+1相当へ微減。それ以外はまったく変化なし。

コメント:

 軽視されがちですが実は恐ろしい美点。敵に回すとひどい目にあいます。なにしろ、スキャンダルや影響力の所在をつかんでいる上、虚偽の評判を立てたりもできるのですから…。そういう意味で、ただの噂好きよりも、人望のある職人の親方とか、娼婦の元締めとか、そういう腰の据わった造型をしてみたいもの。アルスマギカ日本サイトで あのんさんに薦められて読んだ駒崎優『足のない獅子』は、その辺がなかなか面白かったです)。

 なお、仇敵というかライバルは《有名》持ちです。噂を流しても、元からある評判をなかなか覆せないので、ほとんどハブとマングース。

《卓越(特性値)/Great (Characteristic)》

内容:

 ポイントを割り振ってすでに常人の上限まで上げてある特性値1つが、この美点によってさらに1点上がります。複数回取得可ですが、この美点の力をもってしても値は+5が限界。

第四版からの変化:

 これまたコストが+2から+1相当へ微減。それ以外はまったく変化ありません。

コメント:

 単一の技能ではなく、ある分野全般に秀でた才能を表現します。現代に喩えれば、野球選手もマラソンランナーも基礎体力は共通して必要、といった感じ。《強化》にくらべて上乗せ量が低いのも、こうした適用範囲の広さゆえのバランス取りといえるでしょう(特性値は8つしかない…ということは、全判定に対するこの美点の適用率は、実に12.5%にまで上るのです!)。

 この美点の最大の価値は、常人の限界を破れることです。常人の範囲内で伸ばすのであれば、《豊富な特性値》の方がお買い得。上手に使い分けましょう。

《豊富な特性値/Improved Characteristics》

内容:

 特性値に割り振れるポイントが増加します。複数回取得可。

第四版からの変化:

 新規参入組。ありがたや。

コメント:

 「どの特性値も捨てられない」という難儀なキャラにさしのべられた救いの手。《卓越》とは対照的に、多くの分野に秀でるための美点で、たとえばルールブック3章のテンプレートでは文武両道の騎士が取っています。

 《卓越》と違って常人の上限にしばられる点、派手好きなPLにはウケないかもしれませんが、美点コストあたりの特性値の上昇幅は、《卓越》より確実に大きいです。見かけに騙されないように。

 余談ですが、美点スロットをこれで埋め尽くすと、8つある特性値の半分が+3、残りの半分も+2という、才能あふれる万能人となります。
 世の中のすべてを並以上にこなせて、けれど一つのことしかできない天才には決して敵わない。専攻を選ぼうにも、どれをやっても同じように出来るから、どれも選ぶ気になれない。この世界って、なんて退屈なのかしら。
 …これはこれで、けっこう深いキャラになるなぁ。o ○

 あるいは、何もしないで優秀なキャラが、努力して自分より優秀な同輩に嫉妬するってのも、ひねりが利いて面白いかも(笑)

《鼓舞/Inspirational》

内容:

 演説が神がかっていたり、大変なカリスマ性があったり。人々を奮い立たせて、性格判定にボーナスを与えます。

第四版からの変化:

 まったく変化なし。ただし、魔法の自然抵抗の概念がなくなったため、性格判定の価値は若干の下落傾向にあります。

コメント:

 ああ、独逸第三帝国宣伝相とか、ジオン公国総帥とか?

 冗談はさておき、実際のテーブルではいまいち印象の薄い美点ですが、うまく決まればカッコイイ。魔術団はギリシャ・ローマの民会に近い意思決定システムを持ち、政治系のボニサグス派や審問士派を中心に、雄弁の才は大変重んじられますし、また、

「アダムが耕し、イヴが紡いでいたとき、誰が領主だったか!?」

とアジって大規模な一揆をひきおこした説教僧ジョン・ポールも、おそらくはこれを持っていたことでしょう。

 演説でなくとも、ジャンヌ・ダルクのごとく、いるだけで兵どもが奮い立つという事実があれば、それは戦いの行方を左右します。もちろんこんな異常な例でなくとも、単純に「勇将の下に弱卒なし」という諺もありますしね。

《直感/Intuition》

内容:

 手がかりのない状況で、約50%の確率で「正しい」選択肢を選ぶことができます。

第四版からの変化:

 特に変化なし。

コメント:

 んー、個人的には、使いどころに困ってしまう美点です。この美点に正しい選択をしてもらうこと自体は、(逆説的ですが)やっていて別に楽しくないので、やっぱ《予感》みたく周囲に信じてもらえるかどうかで遊ぶところですかねぇ。それとも割り切って、卓のメンツ全員でにぎやかにギャンブルする感覚なのかな?

《鋭い視力/Keen Vision》

内容:

 視力に関する判定にボーナス。ただし射撃には適用されません。

第四版からの変化:

 これまた変化なし。

コメント:

 人間は視覚に依存する生物ですから、同コストの《鋭い聴力》より基本的にはコストパフォーマンスが良さそうです。とはいえ、知覚情報の遮蔽をセオリーとする魔術戦において、映像は真っ先に消される存在であり、一概にはいえませんが。

 「対象:視覚」の呪文を多用するマギや、斥候のグロッグなら優先的に取るべき美点、それ以外のキャラには趣味の域だと思います。《強化:認識》で済ませられる範囲が広いことにも留意すべし。

《大柄/Large》

内容:

 身長2m前後の恵まれた体格をしています。サイズが上昇。

第四版からの変化:

 四版時代はサイズ上昇が疲労度増加にも結びついたため、マギとコンパニオン/グロッグでコストが違っていましたが、その要素がなくなった五版では小に統一されました。コスト自体も減少。

コメント:

 《巨人の血脈》のマイナーバージョン。タフなキャラクターをつくりたいが、大までは払えない、もしくは巨人とかでない常人の範囲内に留めたい、そういったケースで役立ちます。他のゲームでいうと、ヒットポイント20%増しにあたるわけで、効き目は充分。もっと人気が出てもいいんじゃないかなと思いますが。

《埋もれた魔力/Latent Magical Ability》

内容:

 本人すら知らない魔力を秘めています。

第四版からの変化:

 コストが+2から+1相当へ微減したのみ。

コメント:

 すぐには何の効果もないし、内容も選べないかわりに、当たればでかい(かもしれない)という美点。宝くじを買うようなものですね(^^;)

 物語的には、一種の伏線のような扱いをするとよさそうです。たとえば記憶喪失なキャラが、思い出したら実は○×だった、なんてのは、結構この美点にしっくりくると思いません?

 埋もれた魔力が開花したら、適切な大の美点を付与するのが手っ取り早いと思います。いつどのようにかは、最終的にはストーリーガイドの裁量ですが、できればトループ全体でネタを出し、タイミングを計るべきでしょう。どのように美しく語れるか、卓を囲む全員の力量が問われます。

《失敗から学ぶ(能力)/Learn (Ability) from Mistakes》

内容:

 特定の能力について、1差で失敗するかボッチするかすると、大きめの経験値を得られます。ただし各ストーリーで1回まで。複数の能力について取得可能です。

第四版からの変化:

 得られる経験値の量が増えていますが、スケールが変わっていますので、実質量は同じです。コストも変更無し。

コメント:

 「判定頻度が高い」かつ「失敗時の損害が小さい」能力に適します。たとえば、重装甲で大楯を構えた防御型の戦士が、武器技能にこれを取るなんてどうでしょう?

 いくら得られる経験値が大きめとはいえ、適用されなければ意味がないわけで、行動はひたすら積極的にして、とにかくダイスを振りまくること。その際に、ボッチダイスを減少させる《細心》を併用するかどうかは悩むところですね。ボッチは致命的な結果をもたらす場合もあるので、いくら判定回数を意図的に上げるとはいえ、できれば単なる失敗でもらいたいので…。
 いずれにせよ、失敗を過度に恐れない前向きな性格で、なおかつフィードバックの地道な努力を怠らないキャラクターになると思います。野球でいうとバント名人の川相とか?

 なお、成長促進の美点としては珍しく、時間経過のゆっくりなサガで有利になることに注意。別な観点から言うと、季節の多くを成長ではなく呪付などに充てるマギにも向きます。

《軽やかな手業/Light Touch》

内容:

 軽妙な手業が必要とされる判定にボーナスがつき、ボッチダイスも減少します。ただし射撃には適用されず。

第四版からの変化:

 +2から+1相当へ値下げされましたが、ボーナス量が1/3に激減しました。

コメント:

 適用範囲は広いですが、あまりにボーナス量が少なすぎます。《卓越:器用》《優れた特性値》に優るのは、ボッチダイスの減少だけ。巾着切りの少年とか、《強化》を取ってまださらに上乗せの欲しい楽士とか、その辺りが取るくらいでしょうか。

《反射神経/Lightning Reflexes》

内容:

 予期しない状況に遭った場合(そしてそれに気づいた場合)、考えるより早く反応します。行動の内容は至極大ざっぱにしか決められませんが、その際の速度は余人の追随を許しません。

第四版からの変化:

 コストが+2から+1相当へ下がった他は、まったく変わりません。ただし、戦闘におけるイニシアティブ値の重要性が大きく下がったので、値引き以上の弱体化とみます。

コメント:

 いわば後の先をとる美点。ただ、この反応はまさに考えるより早いので、敵味方の識別すらできません。下手をすると一層の窮地に陥る可能性もあり、周囲は良くも悪くもこの美点の存在を意識しておくことを求められます。

 また、あくまでも先手を取れるだけですから、その貴重な手番一つで主導権を握れるようにしておきたいところ。攻撃に充てるにせよ移動に回すにせよ、持久戦でなく急戦型の設計でいきましょう。

《持久力/Long-Winded》

内容:

 疲労判定にボーナス。

第四版からの変化:

 まったく変化ありません。

コメント:

 呪文行使には適用されず、また長期疲労は判定の余地なしですから、この美点で疲労を回避できる場面というのは、実はほとんどありません。

 むしろ目当てにすべきなのは、短期疲労の回復にかかる時間を半減する判定です(p.178)。また、高い【体力】の持ち主がこの美点をとれば、わざわざ休息せずとも、行動しながら強引に疲労を回復していくことすら、不可能ではありません。そして疲労の回復はそのまま、呪文行使能力の回復に繋がります!

《幸運/Luck》

内容:

 運の要素が強い場面の判定にボーナス。

第四版からの変化:

 コストが+2から+1相当へ微減。性能は変化なしです。

コメント:

 この美点が適用されるシチュエーションが多いキャラクターというのは、すなわち取った技能が役に立たない場面に多く遭遇していることになります。気合い入れて修練し、実力でもって道を切り開くキャラには似合いませんね。

 典型的なパターンといえば、懶惰な博徒でしょう。真面目に努力するなんてくだらない、今日は東へ明日は西へと風まかせに流れ、運と度胸を恃みに幾多の修羅場をくぐってきた渡世人。しっかり仁義を切りましょう(^^;)

《平衡感覚/Perfect Balance》

内容:

 平衡感覚にかかわる判定に大きなボーナス。

第四版からの変化:

 まったくナシ。

コメント:

 軽業師や旅芸人、岩登りの達人や猫っぽい変身術師なんかに似合います。しかし、実際にこの美点の適用されるシチュエーションがどのくらいあるかというと??? 枝渡りやら鵯越の坂落しやら、キャラクターのコンセプトの段階から、そうした場面を自分で作っていけるように仕込みましょう。

《射抜く眼差し/Piercing Gaze》

内容:

 じっと見つめることで、後ろ暗いところのある人を動揺させられます。脅迫にかかわる判定全般にもボーナス。

第四版からの変化:

 コストが+2から+1相当へ微減。あとは同じ。

コメント:

 鋭い目つきの審問士派に御用達。世俗でも、周囲に畏怖される黒衣の領主とか、教会法を駆使して法廷バトルを展開する辣腕の学僧とか。ReMe20“夜の精霊の圧服/Coerce the Spirits of the Night”のような呪文を想定して、脅迫のボーナスに着目し、死霊術師の系譜で取るのも一手です。使いどころが多くて、キャラクターの造型には困りません。

 人付き合いを考えたとき、この美点の持ち主を苦手に思う人も多いはずで、尊敬されることはあっても、親愛の情をうけることは少ないかもしれません。その辺りをつついてやると面白い物語になりそう。(もっとも、私がリアルでみてきたかぎりでは、本人に人間的な魅力がある場合には、この美点なんて関係なく慕われるものですけどね)。

《恵まれた幼少期/Privileged Upbringing》

内容:

 学問や教師に恵まれた環境で育ちました。一般・学術・戦闘の技能に振り分けられる初期経験値をもらえます。

第四版からの変化:

 新規参入組。第五版になって一気に勢力を広げた、初期経験値増量系の一派です。

 余談になりますが、第四版だと全流派とも、技能に与えられる経験値は、テンプレートの取得済み+自由割り振りで合計55点でした。これは五版の275点に相当します。さらにご存じのとおり術法は150点割り振りでしたから、足して425点。第五版ではこれが240点になっているわけですから、キャラ作成時に使える点数が半分強まで落ち込んでいる計算になります。どうりでいつもいつも足りないわけだ…。
 →070427追記:打ち消し線入れた後段は早計。幼少期(言語75点+その他45点)と弟子入り前(年あたり15点)を足せば、最終的なポイントは400点前後となって、第四版と同等になります。

コメント:

 学術技能のみの《教育》や戦闘技能のみの《戦闘訓練》に比べ、もらえる初期経験値の割り振り先が広いのが特長です。その代わり前二者と違って、該当分野の取得資格はついてきませんので、通常の作成の過程で得られた経験値は、一般技能にしか入れられないままです。いわば幼少期限定の《富裕》みたいなもの?

 取得資格をもらえないというのは、実際にやってみると意外に不自由なものです。つまり、本当に必要なところに経験値入れるためには資格が必要で、それがないと手元の経験値を無駄に腐らせてしまう、という場面が多いのです。上手に使い分けましょう。

《庇護/Protection》

内容:

 後ろ盾になってくれる有力者がいます。評判つき。

第四版からの変化:

 コストが+3から+1相当へと大幅減。個人的には今回の方が妥当だと思います。

コメント:

 設定的にも用法的にも、後ろ盾がどこの誰で、どういう人間なのかということが大事。その上でさらに、自分がそれをどのように「利用」しているか、あるいは後援者との関係はどうなのかを考えます。たとえば虎の威を借る狐だったり、才能を信じてくれる数少ない理解者だったり。また、それら物語面を表現する意味で、《富裕》や《敵》と相性がよさそうです。石田三成柳沢吉保あたりをモデルにするのも面白いですかねぇ。

 なお、イェルビトン派や芸術系のコンパニオンは、この美点のお得意先です。すなわち、ミケランジェロやダ・ヴィンチには、教皇ユリウス二世なりロレンツォ・ディ・メディチなりといった、一癖も二癖もあるパトロンがいたように。アルス・マギカとほぼ同時代の例を挙げれば、ブロンデルにリチャード獅子心王、ヴァンタドーンにアリエノール・ダキテーヌ

051101追記:以下のイタリック部分は、木霊す声にて Vampire.S さんより頂戴しました情報です。(Thanks!!)

 それと、〈庇護〉ですが、つらつらとサプリメントを読んでいると、どうもオーダーのマギに寛容な君主/Monarch としては、イチバンの大物は現神聖ローマ帝国皇帝フリードリヒII世にしてシチリア王フェデリコ陛下のようです(ミケーレ・スコトゥスみたいな自然魔術師も雇用してますが、オーダーとも独自につながりがあるそうで。もっとも、Tribunal of Hermes: Rome の設定はちとあんまりな気がしますが)。

 あと、4th 時代の〈贖宥状/Indulgence〉も実はこちらに統合されているのでしょうから、法皇聖下も(特に House Jerebiton の Primus から直接の指令を受けている場合は)候補になるんでしょうねぇ。

 個人的な感想ですが、この Indulgence は Ars Magica の歴史を通じて非常に大きな役割を果たしてきた Virtue だけに、なくなってしまってちょっと寂しかったです。

《強化(能力)/Puissant Ability》

内容:

 対象の能力を使用する際、値を割り増し。複数回取得可。

第四版からの変化:

 可変の美点《才覚/Knack》の後継です。修正値のコスト比は倍になりました。

コメント:

 それぞれの項でも書いているのでいい加減耳タコかもしれませんが、《強化》のライバルは《素質》。そして能力版では、修正込みの値が10に達するまでは《強化》が、11からは《素質》が有利という棲み分けです。
 個人的には、能力の《強化》は、ボーナス量が+1でも良かったように思うのですが…。その方が《素質》の極端な大器晩成が緩和されてバランスが良くなります。もっとも、たとえバランス上は+1が妥当でも、《卓越(特性値)》との絡みでそうはしづらかったのかもしれず。

 また、ボニサグス派は〈魔術理論〉か〈陰謀〉を対象として、この美点を無料取得します。前者はヘルメス理論やパルマ・マギカを編み出した祖師ボニサグスに、後者は公私ともにボニサグスの良きパートナーとして、魔術団草創期の政治面を担ったトリアノマに、それぞれ由来するものです。ボニサグス派については、著作や研究の評価システムや外交の処理なども含め、"Houses of Hermes: True Lineage"に詳しい。

 なお、四種の〈異界知識/(Realm) Lore〉については、取得条件の緩和がおまけとして付いてくる分、《異界の造詣》の方が優ります。要注意。

《回復力/Rapid Convalescence》

内容:

 負傷の治癒判定にボーナス。

第四版からの変化:

 まったく変化なし。

コメント:

 注目すべき点は、治癒判定が行われるのは、負傷の回復時だけではないことです。

 すなわち、《忍耐力》の項で言及した、傷の度合いに応じた基準を越えた行動をした(=無理した)場合に傷が悪化するかどうかでも、治癒判定は行われます。つまりこの美点と高い【体力】があれば、単に治りが速いというのみならず、怪我をしていてもかなり無理がきくわけですね。軽傷や中傷くらいなら、動き回っても平然としていられます。

《聖遺物/Relic》

内容:

 聖遺物を所有しており、その中には信仰値がこもっています。

第四版からの変化:

 《真の信仰》と同コストだったのですが、こちらだけ+3から+1に大幅値下げです。なぜ?

コメント:

 《聖遺物》はいわば《真の信仰》の持ち主のなれの果て(?)で、彼らの霊が天に召されると、遺体や遺品が聖遺物になったりします(それらを狙って臨終の床に人々が集まったという笑えない話も)。

 ゲーム的に《真の信仰》との差は、内蔵か外付けか、それとコストの大小ですね。もっとも、《聖遺物》をもつ人物がシナリオに出るというと、えてして暴君だったり悪徳修道院長だったりしがちですが(魔法抵抗を持たせたいSGの陰謀^^;)

 詳しくはサプリ"Realms of Power: the Divine"を参照のこと。信仰値の用法の拡大/明確化のほか、信仰値の大きな聖遺物をもつ美点などもあります。

《火事場の馬鹿力/Reserves of Strength》

内容:

 1日に1度だけ【筋力】の実効値に大きなボーナスがつきます。ただしその後で疲労判定の反動あり。

第四版からの変化:

 コストが+2から+1へ。他は変わりません。

051101追記:以下のイタリック部分は、木霊す声にて Vampire.S さんより頂戴しました情報です。(Thanks!!)

 〈火事場の馬鹿力〉、昔は何に使っていたっけ……と思い出したところ、確か騎士が騎乗している際に無視できている Enc の修正を、下馬したときに一時的に無視するためにつかっていました。

「一回の判定」でないことを上手に利用した用法でしたね。

コメント:

 CrAn35“織り姫の網の罠”などの捕縛呪文を喰らったときや、障害物に閉じこめられたときなど、ピンで高い【筋力】判定を要求される場面で役立ちます。また、単純にダメージの上乗せに用いても、一撃の重さが重視される五版のダメージスケールでは、充分役に立つでしょう(もっとも、ダメージ狙いのみでこれを取るのは効率が悪いです。武器技能に対する《強化》等の方が回数制限がない点で圧倒的に有利)。

 使用後のドローバックについては、特に気にするほどでもないかと思います。軽視はできませんが、無条件で疲労させられるわけでもないので、それなりに手はあるでしょう。

《確固たる自信/Self-Confident》

内容:

 自信度と自信値の初期値をほぼ倍に割り増し。

第四版からの変化:

 自信関連のルールが根本から書き直されたため、この美点の内容もそれに合わせて変化しています。美点としての有効性は、上手い具合に、改版前と同程度のポジションに調整されていると思います。

コメント:

 5版になってから一年、漠然と思っていたことが、先日ようやく言葉になりました。

アルス・マギカの自信度って、つまりは 度胸 のことじゃんか。

 ここ一番というときに、萎縮したり浮ついたりするどころか、かえって普段以上の力を発揮するキャラクターですね。そして兄弟子の言葉を借りるなら、「上手くなることはもちろん大事だが、その上手くなったものを本番でちゃんと表現できる舞台度胸というのも同じくらい大事で、それがないと結局下手なのと同じ」。この美点は、テュータルス派の無料取得美点でもありますが、さもありなんといったところです。

 ちなみに、意外かもしれませんが5版では冒険でボーナスの経験値が得られることはなく(季節単位の成長の一オプションに吸収)、キャラクター本人の能力のうち、シナリオをこなした回数で直接に変化しうるのは、黄昏や歪曲をのぞけば、評判とこの自信度/自信値くらいです。実際、リアルにおいても私の経験的に、この度胸というやつは、どれだけ修羅場をくぐってきたかに大きく依存するものですしね。

《鋭い聴力/Sharp Ears》

内容:

 聴力に関する判定にボーナス。

第四版からの変化:

 まったく変化なし。

コメント:

 聴覚は視覚に比べ、位置特定などが不自由な感覚なので、平行する《鋭い視力》に比べて、対象のパラメータに五官をとる呪文に資することでしょう。それに相手に魔術をかけられるかどうかは、つまるところ、何らかの手段で相手を知覚できているかどうかですし。

 また通常の人間の場合、聴覚は視覚にくらべて情報量が少ないですが、それは聴覚が視覚の下位互換であることを意味しません。たとえば身体をすっぽり隠すほどの大楯を構え、そのカバーを押し立てて前進してくる敵には、視覚でなく聴覚(そしてInAu“蝙蝠の耳”のようなT:聴覚な呪文)が役立つでしょう。

 なお、そうした知覚判定では〈認識〉がまず間違いなく用いられるであろうことを考えると、これら感覚別の美点でなく、〈認識〉を対象とする《強化》で一括して高めることも検討するべきです。というか、ビョルネール派の心獣の具合など一部の例外を除けば、まず《強化》を取った上で、まだ足りないときにはじめて《鋭い視力》《鋭い聴力》を取る、という順序がマンチ的には正しいのかも。

《人脈/Social Contacts》

内容:

 特定の人種や業種にコネがあり、見知らぬ土地でも渡りをつけられます。対象とする集団を変えて複数回取得可。

第四版からの変化:

 こちらも変化なし。

コメント:

 差別されながらもしたたかに生き延びるユダヤ人のネットワークとか、各々の理想と会則を掲げて全土にたくさんの院を構える各種の修道会とかが定番でしょうか。ゴシック式の大聖堂を建築する石工の組合、十字軍の理想と現実を目の当たりにした中東帰りの戦友、トレメーレ派内部の党派構造などなど、使い道はいくらでもあり、夢が広がります。

 なお、アポ取り後の交渉内容までは、この美点は面倒みてくれません。別途そちらの能力確保もお忘れなく。

《意志堅固/Strong-Willed》

内容:

 外界によって意志を曲げさせられないための判定にボーナス。

第四版からの変化:

 これ自身は変化なし。ただし自然抵抗の概念が消失し、性格や意志では対抗できない Mentem 呪文が増えたため、その点で株を下げました。

コメント:

 いまやメジャーな使い道は黄昏の抑止策でしょうか。また、痛みに集中を乱されずに呪文を唱えるのにも役立つでしょうから、荒事に立ち会うつもりのマギには結構役立ちそうです。

 また、抵抗できない精神呪文が増えたとはいえ、《射抜く眼差し》を含めて世俗の脅迫や拷問に対しては相変わらず有効で、プロの密偵や、正統的なヒーローにも似合うでしょう。

《異界の造詣(界)/Student of (Realm)》

内容:

 四つある異界の一つに詳しく、該当する〈異界知識〉にボーナス。それぞれ別の界を対象に複数回取得可。

第四版からの変化:

 新規参入組。キャラ作成方式の変化に伴うものと思います。

コメント:

 超常の美点をもつコンパニオンが、関係する界について取るのが王道。いわゆるフェアリードクターが妖精界で取るとか。いずれにせよ競合相手の《強化》を押しのけて入るためには、この美点でもらえる取得資格を生かせることが必要です。特にキャラ作成における幼少期のプランニングがミソ。

《世俗の影響力/Temporal Influence》

内容:

 血筋や地位のために俗世で重きをなしています。グロッグは取得不可。

第四版からの変化:

 コストが+2から+1へ微減。また、グロッグに対する取得制限が加わりました。

コメント:

 本文にも書かれているとおり、マギとどのように協調していくかがポイント。魔術団には俗世不干渉の掟があり、俗世の側も、主人や友人が怪しげな妖術師にたぶらかされている(笑)とみれば、良い顔はしないでしょうから。それがこの美点のスパイスであり、楽しみどころです。

 またこの美点は、イェルビトン派の無料取得の候補としても有力だと思います。実際問題、対俗世の外交要員としてイェルビトン派の存在は大きく、審問士も多少は大目に見ざるをえない部分があるようですし。一族のゴッドファーザーとか、そんな感じ。

《強靱/Tough》

内容:

 吸収値にボーナス。

第四版からの変化:

 単独ではまったく変化なし。ただし五版になってから、一撃一撃の重さが大事になったため、その影響で価値は上がっていると見ます。

コメント:

 深い傷ほど行動ペナルティがきつく、治癒にかかる時間も加速度的に伸びます。一般的な人間ではダメージ5点刻みで傷の深さが決まりますから、この美点があれば一段階浅い傷で済むかもしれませんし、猫や鳥などに変身するビョルネール派に至っては、生死を分ける機能すら持ち得ます。サイズが小さいキャラクターほどオススメ。

《旅芸人育ち/Troupe Upbringing》

内容:

 旅芸人の一座で育ちました。特定の芸とその周辺の技能判定にボーナス。

第四版からの変化:

 適用される技能の範囲が狭まり、ボーナス量も微減しました。やや弱体化。

コメント:

 単一の技能を対象としない点で《強化》と棲み分けが図られています。旅が常に危険と隣り合わせで、町や村ごとの帰属意識が強かった中世にあって、旅芸人は恰好のスケープゴートにされてしまうこともままありました。そうした意味もあって、世慣れて飄々としたコンパニオンやグロッグに似合いそうですね。

《まことの愛(PC)/True Love (PC)》

内容:

 結ばれるべき運命の相手がいます。愛を支えにできる性格判定や、恋人とともにいるための行為にボーナス。ただし、恋人としばらく会えないでいると落ち込んでしまい、ほとんどの判定にペナルティを受けます。

 またこの美点は、恋愛感情でなく友情についても、名前を《真の友/True Friend》に替える他はまったく同内容で使用できます。

第四版からの変化:

 +1だった友情バージョンが、+2だった恋愛バージョンに吸収合併されました。コストは逆に+1相当に値下げです。

コメント:

 これが美点扱いになるのはPC対PCの場合であり、NPCと結ぶときは「物語」分類の同名の欠点となります。また、必ず相思相愛であって、片想いではダメなことにも注意。(そういや薔薇や百合の人はどうなるんでしょうね? 中世のパラダイム(Medieval Paradigm)としては地獄落ちですかそうですか)。

 いずれにせよこの美点は、砂を吐くようなラブラブっぷりを見せつけるだけではしょーもないのです。世のロマンスを見れば明らかなように、逢いたいのに逢えないからこそ物語が盛り上がるのですし、愛を支えに二人で困難をくぐり抜け、その過程でさらに絆が深まるさまを描くことで、単なるイチャイチャよりも遙かに印象的に二人の愛情が浮き彫りになるわけで。ロミオとジュリエットに倣えとは言わないまでも、身分違いとか、俗人と聖職者、あるいはマギとコンパニオンのカップルとか? 障害がなくとも、互いのためを思えばこその行き違いとかあるでしょうしね。

 一方《真の友》のバージョンですが、こちらはこちらでアツイ。桃園の誓いとか、アントーニオとバッサーニオとか。漢が漢に惚れるというやつね。

「彼の人(=西郷隆盛)は妙な人だ。一日接すれば、一日の愛を生じ、三日接すれば三日の愛を生じる。親愛、日に加わり、もはや去るべくもあらず。この上は、すべての善悪を超えて、生死をともにせん」
(中津藩士・増田宋太郎、西南戦争で西郷に殉じるに当たって)

 あと、円卓の騎士ランスロット卿は、アーサー王に《真の友》を、王妃グィネヴィアに《まことの愛》を取っているに違いない。恋と友情の板挟みはツライねぇ(←手本にしたいような自爆設定(笑)

《不老/Unaging》

内容:

 老化による特性値低下を無視します。外見年齢も一定に。

第四版からの変化:

 この種の効果は、四版ではシナリオ集"Bishop's Staff"の NPC に実例がある程度で、それも美点《永遠の若さ/Eternal Youth》のコストは、対になる欠点《狂気/Insanity》とともに?となっています。黄昏の影響でついたイレギュラーな美点欠点だったかな。いずれにせよ正規のリストにはありませんでした。

コメント:

 錯覚しがちですが、寿命の長さ自体はまったく延びません。もっとも、死ぬ直前までピンピンしていて、ぽっくり逝けるという、夢のような美点であることは確か(笑) 《死の予言》の良き相棒でもあります。

 いずれにせよ、どーみても超常な力が絡んでいますから、設定面ではその辺の具合がキモになります。突飛なところだと、実は生身の人間でない、作り物なんだという手もありますかねぇ。外見年齢については、それら設定に沿って決めることになるでしょう。ブレカナのフィニスを扱った天野架さんの記事とかご参考にどうぞ。

《ウェヌスの祝福/Venus' Blessing》

内容:

 異性を惹きつけます。色恋沙汰(ないしはそれに発展しうる芽)では、異性に対する【交渉】と【魅力】の判定にボーナス。

第四版からの変化:

 まったく変化なし。

コメント:

 小の美点だというのに、なんか(現実世界では)夢のような内容が続きます。

 世の中の半分は異性ですし、聖人君子はそうそうおらず、誰しも邪心(笑)はあるものですから、これがプラスに働くケースは多いことと思います。まぁマギのように、人間以外を相手にするキャラはまた別かもしれませんが。女たらしとか妖婦とか、そういうキャラに似合うでしょう。

《戦闘訓練/Warrior》

内容:

 十字軍をはじめとする戦役に加わった経験があります。キャラ作成時から戦闘技能が取得可能で、さらに、戦闘技能にのみ使える経験値を50点もらえます。

第四版からの変化:

 《古強者/Veteran》から名前が変わり、マイナーアップが施されました。もらえる経験値が増え、さらにキャラ作成時の取得制限の緩和が加わっています。

コメント:

 戦闘技能も経験値はあればあるだけ欲しくなる部類ですから、特に単発セッションや短いサガなら、大いに役に立つことと思います。p.21〜22にある戦闘系のグロッグのテンプレートが、一部の例外をのぞいて全員これを取っているという事実からも、そのことは明らかでしょう。

 五版のアルス・マギカでは、凡庸な戦士でも、指揮官のもと数人で統制のとれた部隊を組めば、剣の達人を十分に倒せます。部隊を組むに当たっては、力量にあまり差がないことが条件になりますから、誰かが飛び抜けて上手くとも下手でも、かえって邪魔になるんですよね。グロッグや指揮官系のコンパニオンの場合、周囲と釣り合った値にすることが肝要です。

《旅慣れ/Well-Traveled》

内容:

 各地を旅してまわり、異郷の人々とつきあうことに慣れています。経験値を50ポイント獲得し、〈俗語〉〈地域知識〉〈取引〉〈酒豪〉〈魅惑〉〈作法〉〈人間知識〉〈詐術〉の各技能に割り振ることができます。

第四版からの変化:

 会話や習俗に馴染む判定にボーナスという形から、初期経験値増量系の一派へ。完全な衣替えです。

コメント:

 ここにリストアップされた技能はいずれも便利ですが、すべて一般技能であり、そのため取得資格が必要ありません。幼年期から振っていける技能も含まれており、平行する《教育》などに比べると、有り難みは若干落ちます。人付き合いを担当するコンパニオンやグロッグがお得意様ですが、他に取るとしたら、バイリンガルなキャラ(十字軍帰りで遠征先の言葉をかじったとか)あたりでしょうか。

 ちなみに、綴れ織りのコーナーのサガ・フォッソルでは、セッションにおける判定頻度の点で〈認識〉に次ぐ第二位が、出会った相手の様子を察する〈人間知識〉となっています。そうなると、対抗してポーカーフェイスを装う〈詐術〉も有用。この辺は各卓ごとに大きく異なるところと思いますが、一応ご参考までに。

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