「ヘルメス」分類の欠点(小)

《粗忽な魔術師/Careless Sorcerer》

内容:

 魔法関連のボッチダイスがすべて2つ増加し、破滅的な失敗をしやすくなります。(ただし本来ボッチしない状況において、新たにボッチの可能性が生まれることはありません)。

第四版からの変化:

 新規参入組。ありそうで無かった欠点ですね。

コメント:

 《慎重な魔術師/Cautious Sorcerer》の裏返し。ドジっ娘や爆発しまくりなマッドサイエンティストには必須科目です(^^;) そのままではただの傍迷惑ですので、てへへと笑って許してもらえるキャラクター性や人間関係を築くよう努力しましょう。
 別なキャラ立てとして、人並みの制御力はあっても、何らかの理由で生来の魔力が強すぎて、容易には抑えきれない、という方向もあるかと思います。荒ぶる《生命直結魔術/Life-Linked Spontaneous Magic》、自らの身体に含んだ《個人のウィース源/Personal Vis Source》、純正なヘルメス理論とは異なる《妖精魔法/Faerie Magic》等々との組み合わせですね。

 なお、ボッチダイス1つという状況が存在しなくなるということは、0を振ったら常に黄昏突入の可能性がつきまというということです。あんまり細く長くは生きられないでしょうね(《黄昏の誘い/Twilight Prone》なんかと組み合わせたら尚更です)。ボッチダイスは習熟や使い魔の金綬で減らせますが、そういった手段をとるかどうかは、キャラ立てとの兼ね合いで考えるということで。粗忽者を極めるのも、それはそれで一つの見識です(笑)

《不器用な魔術/Clumsy Magic》

内容:

 呪文の対象を精密に絞るのが苦手です。照準判定では0を振ると自動的にボッチし、また〈呪文操作〉を含んだあらゆる判定にペナルティがつきます。

第四版からの変化:

 内容は変化なし。コストだけ−2から−1相当へ減少しました。

コメント:

 攻撃に魔法を用いる際には、大きく分けて二通りの方法があります。敵を直接対象にとるか、危害を加える状況を作り出すか生き埋めとか^^;)で、前者は魔法抵抗を破る必要があるものの照準判定は不要、後者はその逆、という規定になっています。この欠点を取るなら、最初から戦闘能力を捨てるか、あるいは抵抗を破るタイプの呪文と突破力を上げる手段を揃えるように。

 組み合わせ相手としては、一般の欠点の《不器用/Clumsy》を一緒にとると、世俗でも魔術でも…ということで綺麗かも。あとは、おっちょこちょいを極めて《粗忽な魔術師/Careless Sorcerer》とか?

 また、対象になるのは呪文であって、呪付作業には影響しないことに注意です。4版時代にはウェルディーティウス派のテンプレートに「よくある欠点」としてリストアップされていましたが、そういった、呪文詠唱が不得意という表現の一語彙としても使えると思います。

《創造性の壁/Creative Block》

内容:

 呪文を開発したり魔術物品を作ったりする際には、研究書巻を用いないかぎり、研究値にペナルティがつきます。実験(arcane experiment, p.107)かますと、特殊結果表のダイスの数が倍増。

第四版からの変化:

 まったく変化なし。

コメント:

 《発想の天分/Inventive Genius》の対になる欠点。成長において平行するのは《想像力不足/Unimaginative Learner》です。「お手本やマニュアルがないと、どうしていいか分かりませ〜ん」という困ったちゃんだったり、あるいは真面目で融通がきかないとか、教えすぎる師匠に依存して育ったため自分で考える習慣が薄いとか、そういった色々な形が考えられます。

 一方で、《優等生/Adept Laboratory Student》あたりを併載し、上下関係の厳しい秋コヴナントやトレメーレ派で働くなら、なまじの一匹狼より適材適所かも。また、自分の適性と置かれた環境にギャップがある場合でも、本人はいろいろ悩むでしょうし、それはそれで物語のネタになるかもしれません。

 あとまあ、《劣等生/Weak Scholar》まで取ってしまって、研究書巻の有無両面を潰してしまうのも、「事前に準備しておくのが不得意」という表現として考えられないことはありません。《ディエドネー魔法/Diedne Magic》などを用いて、完全に即興呪文に特化した構成にするなら特に!

《負の周期魔術/Cyclic Magic (Negative)》

内容:

 魔力が月の満ち欠けや季節の移ろいなど、特定の自然の周期と同調しています。魔力が弱まる時期には、呪文や研究値にペナルティ。

第四版からの変化:

 コストが可変から−1固定に。また、コストあたりのペナルティが倍増しました。

コメント:

 言うまでもなく《正の周期魔術/Cyclic Magic (positive)》の逆位置です。詳しくはそちらをどうぞ。コストも内容も鏡に映ったように対照していて、セットで取ると綺麗です。

《苦手な形相/Deficient Form》

内容:

 一つの形相のかかわるすべての判定値(行使値・研究値・学習値など)が半減します。

第四版からの変化:

 コスト可変型の《魔術の欠陥/Magical Deficiency》のうち、コスト−3または−2のものが該当します(対象がCorpusかVimの場合が−3、それ以外の形相の場合が−2)。判定値全体でなくその技法の値のみ半減というバージョンがあったのですが、それが無くなり、さらに評価額も値下がりしたわけです。

コメント:

 《苦手な技法/Deficient Technique》の兄弟分です。組み合わせ相手の数が異なるために、コストに大小の差がついていますが、それ以外の点は同じ。詳しくはそちらをご覧ください。

《阻害状況/Deleterious Circumstances》

内容:

 特定の状況では魔術にかかわるすべての判定で、合計値が半減します。術者の状態、呪文をかける相手、周囲の環境など様々なものを「状況」として指定できます。

第四版からの変化:

 コスト可変から、「頻度:稀」&「制限:大」の組み合わせに固定されました。コストは−2から−1相当へ微減。

コメント:

  《状況の制限/Restriction》のペナルティ軽減版(発動不可能から合計値半減へ)です。こちら《阻害状況》では向こうと違って、呪付物に適用される旨の明示がありませんが、適用する方が自然でしょう(もっとも、《魔術の専門分野》の例を考えれば、コスト差のバランス調整のために、意図的に適用外にしてある可能性も否定はできませんが)。

 状況の具体的な設定については、《状況の制限》の方で書きましたのでそちらをご覧になっていただくとして、この両者は「全く使えない」か「実力を発揮できない」かという、ニュアンスの違いで使い分けるところかと思います。
 たとえば大地を魔力源とするスタイルを気取るなら、《状況の制限》で「地面に足をつけていないと唱えられない」としますし、氷の妖精の一派なら、《阻害状況》で「気温が高いと力が萎える」とするのが適当でしょう。苦手な環境を他のマギが解消してくれたら水を得た魚、といった感じに仕込んでおくと、ゲーム的に面白いかも。

《即興呪文が苦手/Difficult Spontaneous Magic》

内容:

 疲労せずに即興呪文を唱えることができません。

第四版からの変化:

 新規参入組。

コメント:

 大の《微力な即興魔法/Weak Spontaneous Magic》と対をなす欠点で、併用すると即興呪文をまったく使えないマギになります。併用に関してはそちらをご覧ください。

 両者単独で比較した場合には、さすがコストの大小の差と言いますか、実際の使い勝手に及ぼす害は、こちら《即興魔法が苦手》の方が格段に少ないです。つまり、疲労さえ甘受すれば即興呪文のキャパシティはまったく損なわれず、そしてまた、疲労を許容できない(=1回ごとに2分休むことができないほど切迫した)状況では、いわば片手間行使である、疲労無しの即興呪文では対処できないことが多いでしょうから。

 疲労無しの即興呪文のメリットとは、ダイスを振らなくて済む、すなわちボッチの可能性が完全にゼロであることなのです。《無欠な魔法/Flawless Magic》《慎重な魔術師/Cautious Sorcerer》で幾分なりともそこをカバーできるキャラクターなら、この欠点はお買い得でしょう。

《ばらばらの魔術/Disjointed Magic》

内容:

 知識や経験を他に生かすのが不得手です。新規開発に当たって、類似呪文や封入済みの呪付効果からボーナスを得られません。

第四版からの変化:

 まったく変化なし。即興魔法を唱える際に、類似呪文のボーナスを使えなくなったので、その点で若干軽減している程度でしょうか。

コメント:

 4版時代からひそかに「お買い得商品」と言われていた欠点。この欠点が邪魔になるのは、力量の伸びにあわせて単一のテーマの呪文を何度も何度も再開発してバージョンアップしていくキャラクター(火力呪文とか美貌術とか^^;)か、強力な魔術物品を何年もかけて入魂していくウェルディーティウス派くらいなもので、そうした極度の専門家志向でなければ、実害がゼロに近いカモな欠点だと思います。キャラ立てにプラスになる欠点がどうしても見つからず、でも欠点のノルマにはまだ足りないというときには、これを思い出すといいかも。

 これ自体のキャラクター性を考えるとしたら、まずは〈魔術理論〉に弱いマギ。また、日々是新鮮な境地といえば、歳月にまみれていく我が身を振り返るにどこか羨ましくもあり、《不老/Unaging》やら《魔術の記憶/Magical Memory》やらを使うと、味のある絡みが作れそうです。あとはネタで、《心獣/Heartbeast》トリなビョルネール派とか?

《放心する魔術/Disorientating Magic》

内容:

 呪文を使うと放心してしまい、1ラウンドは何もできません。

第四版からの変化:

 《制御力欠如/Lack of Control》から名前が変わりました。コストは−2から−1相当へ減少。

コメント:

 一回一回の呪文行使に没入しすぎちゃうキャラクターなんでしょうね。〈集中力〉が高いと「らしい」かも。《独自の発動法/Method Caster》の風味づけに用いる手もあると思います。

 この欠点は、発動のに1ラウンドかかる《のろま術者/Slow Caster》に比べて、後払いなだけ基本的には有利です。もっともこちらは、速唱などで支払いの実質をごまかす手段が無いので、まあその点で若干は補正されているのでしょうけれども。

 ただいずれにしても、緊急時の1ラウンドを小の欠点1つで売り払ってしまうのは、ゲームシステム面の取引としては損かなあ。いっそ両者を兼備したとしたら、呪文1つに3ラウンドかかるマギが誕生です。のんびり屋さんということで(実用上はともかく)味はありそう(笑)

《パルマ・マギカの欠陥/Flawed Parma Magica》

内容:

 パルマ・マギカに欠陥があり、ある一つの形相に対しては通常の半分の抵抗しかできません。対象となる形相を変えて複数回取得可。

第四版からの変化:

 まったく変化なし。

コメント:

 状況をキーにした大の《魔法抵抗の弱点/Weak Magic Resistance》は別格として、抵抗を損なう欠点には同じく小でもう一つ《限定された魔術抵抗/Limited Magic Resistance》があり、そちらもこれと同じく形相をキーにしています。魔術団のマギに標準的な「パルマ+形相」という二階建て方式の魔法抵抗のうち、この《パルマ・マギカの欠陥》は前者を、《限定された魔術抵抗》は後者を、それぞれ阻害するもの。

 これら三つはいずれもペナルティの形式が違いますから、極端な場合には、一つの判定に全部の欠点が適用される三重苦状態もありえて面白いです。ただルールの覚えやすさの観点からは、こういった統一感の弱いルール構築は、取り違えやすくてマイナスともいえますが。

 この《パルマ・マギカの欠陥》に関して言えば、少ないなりの魔法抵抗値はとりあえず残りますから、力量ギリギリの高レベル呪文は通りづらく、さほどのペナルティではありません。ただ、《限定された魔術抵抗》と違って、普遍的な防御要素であるパルマまで減ってしまうのは、痛いといえば痛い。純粋にルール的にいえば向こうの方が有利でしょう。

 なお、「小の欠点は一人五つまで」の原則があるので、これを取りまくって全形相に弱い「へなちょこパルマ」というネタは不可能です。残念(^^;)

《俗魔法使い/Hedge Wizard》

内容:

 生粋のヘルメス魔術師でない、紛い物の俗魔法使いと見なされて、団内での信用や地位が低いです。

第四版からの変化:

 本体はまったく変化無し。あとは評判のルールの根本的な変更を、得と見るか損と見るか。

コメント:

  魔術団のマギたちの強みは、ヘルメス理論とパルマ・マギカに立脚しています。すなわち、魔術上の共通語となる汎魔術理論は、系譜間の研究交換を実現することで、事実上一人の魔術師に多数の系譜の秘伝を会得させ、パルマ・マギカのもたらす万能の魔法抵抗は、魔法抵抗をもたない通常の術者に対して、一方的に攻撃を加えることを可能にするわけです。
 これだけの優位をもてば、団外の術者たちを「格下」と見なし、優越意識を持ってしまうのも無理からぬこと。そうした風潮の魔術団にあっては、俗魔法使いとみられることは、いわば公民権を軽んじられることに等しい深刻な問題でしょう。
 ただ一方で、魔術団の掲げる「欧州の全術者は魔術団に属しているか、もしくは将来属す意思がある」(そうでないものは抹殺)という建前と現実との緩衝材として、理論面の審査を意図的に緩めて名ばかりの所属を引き受ける雑集派が存在するという事情があり、この差別はそう簡単には解消できない構造を孕んでいます。

 実際、雑集派にはこの欠点をもつマギは少なくないはずで、派内では(雑集派の連中に派内なんて意識があったとしてですが)さして気にもされないでしょう。逆に、ヘルメス理論を考案した祖師直系を自認するボニサグス派や、階層意識の強いトレメーレ派などからは、あからさまに侮られる場面も多いかと思います。PC/NPCともに人間関係のネタとして王道で、非常に使いやすいですね。

 あとこれは直接は関係ないんですが、

  • 学術は「同じ知識の再発明」という無駄を避けるために存在する。
  • その方法論を習得し実行することが、研究者の前提である。
  • 一方で、既存の知識を受けとるだけなら、そうした技術は必要ない。

というような事柄を前に Vampire.S さんから伺ったことがあって(受け売りなので誤解が交じっているやも)、なるほどなあと思ったものです。ボニサグス以下の魔術理論は「魔法を個人の技から学術へと転換しようとした」とされますが、こうした文脈でみると一層頷けますね。

《両立できない術法/Incompatible Arts》

内容:

 技法と形相の組み合わせのうち、どれか2つがまったく使えません。異なる組み合わせを選べば複数回取得可能。

第四版からの変化:

 使えなくなる組み合わせが、取得一回あたり一つから二つに増えました。コストは変わらず。

コメント:

 5つの技法と10の形相の織りなす組み合わせは全部で50通り。そのうち2通りが潰れるわけですから、損失は単純計算で全魔術の4%? いや、でも使わないものは最初から経験値も振りませんし、実際のプレイに与える制限は、体感もっと少ないでしょうね。(ただし師匠になるなら、好き嫌いせずに全部の術法をちゃんと修めること。でないと弟子が泣きます^^;)

 ちなみに、術法単位で指定して、その術法を含む全組み合わせに適用されるタイプの《苦手な技法》《苦手な形相》は、ペナルティの内容が判定不可でなく半減にすぎません。ですから、ある術法を完全に使えなくするなら、この《両立できない術法》を多数取る形で行うとよいでしょう(例:In+AnとIn+Aq, In+AuとIn+Co等々といったふうにコスト5点分かけて絨毯爆撃し、Intellegoを完全に使えなくする)。ちょっとした裏技です。

《不名誉な師匠/Infamous Master》

内容:

 師匠の評判が悪く、その累がキャラクターにも及びます。

第四版からの変化:

 まったく無し。

コメント:

 評判の内容が異なる以外、システム的には《俗魔法使い/Hedge Wizard》と同様です。ただこちらは本人の責任でない分だけツライものがあるかな(弟子入り先を選ぶなんて、奇跡でも起こらなきゃありえないのに…)。

 これは《ヘルメスの威光/Hermetic Prestige》の逆位置なわけですが、ただまあ七光りがあったらあったで負担になることもあるでしょうし、向こうも楽なばかりではありません。過去を捨てて実力でのし上がるのが漢の花道です(そう思って自分を慰めませう)。あるいは、マギ社会からいかな誹謗中傷を浴びようと、師匠に真ありを信じてついていくというのも、美しい師弟愛ではありますなあ。

《限定された魔術抵抗/Limited Magic Resistance》

内容:

 魔法抵抗の際に、どれか一つの形相からはボーナスを得られません。異なる形相を選べば複数回取得可能。

第四版からの変化:

 コストが−2から−1相当へ減りました。ただ、たとえ0点でも魔法抵抗をもつ意義が増したので、ペナルティも軽くなったと思われます。同方向シフトで妥当なところでしょうか。

コメント:

 《魔法抵抗の弱点/Weak Magic Resistance》《パルマ・マギカの欠陥/Flawed Parma Magica》に続く、抵抗欠点三兄弟の末っ子です。形相由来の魔法抵抗が「供給されない」のではなく「0点で供給される」ことに注意。パルマがなくとも最低限の抵抗は保証されます。

 弱点にするような苦手な形相であれば、どのみち最初から数値は低いものですから、この欠点があろうがなかろうが似たようなものです。キャラクターの個性を増長する性質の欠点ですから、深く考えずに取ってもかまわないでしょう。

 一方で、この欠点の適用対象に自分の得意分野を指定するのは、普通は考えられません。ただ、攻撃一辺倒で防御に欠ける、投げやり捨て身なキャラクターとして、システム面の圧倒的な不利も承知で甘受するというなら、検討してもよいかもしれません。

《散漫な魔術/Loose Magic》

内容:

 呪文習熟では得られる経験値が半減します。

第四版からの変化:

 「習熟が一切出来ない」という内容が、経験値半減に緩和されました。小さいようで大きな一歩。

コメント:

 《無欠な魔法/Flawless Magic》の裏返し。即興性が強かったり、習得が雑だったりして、一つの固定化した定式呪文を丹念に磨いていくという発想に乏しいキャラクターなのだと思います。《ディエドネー魔法/Diedne Magic》《生命直結魔術/Life-Linked Spontaneous Magic》と組み合わせるのが王道。また、対象はあくまでも呪文なので、呪付特化の《ウェルディーティウス魔法/Verditius Magic》もよいでしょう。

《動物を怒らせる/Offensive to Animals》

内容:

 本来もたないはずの《天稟》の社交ペナルティが、動物に対しては適用されます。

第四版からの変化:

 コンパニオン/グロッグ専用でしたが、5版になってからは《穏和な天稟》のマギでも取得できるようになりました。合理的なルール整理です。

コメント:

 ヘルメスと超常、二つの分類に属する珍しい欠点です(他は《幻視/Visions》のみ)。

 また、平行するのは人間対象バージョンは《魔法の雰囲気/Magical Air》。これらはマギ以外が取得するケースが圧倒的に多いのですが、その場合は、魔女や悪魔憑きだという濡れ衣を招き、地域社会から孤立したり排斥されたりする内容になります。マギやコヴナントとの縁を与えるに手頃な手段で、ほとんど物語の欠点と言っても不思議でないくらい。

 一方、《穏和な天稟/Gentle Gift》のマギが取得するケースは、その複雑で特殊な天稟の素性/本性の探求が、そのキャラクターのメインテーマになりそうです。なぜ人間は良くて動物はダメなのか。《呪い(小)/Lesser Malediction》の結果だったり、Animal関連の不具合だったりするんでしょうか。

《定式呪文が苦手/Poor Formulaic Magic》

内容:

 定式呪文が苦手で、行使判定にペナルティがつきます。即興や儀式は問題なし。

第四版からの変化:

 コスト1点あたりペナルティ1点という可変の欠点だったのですが、点数が固定され、コストあたりのペナルティ量もひどく悪化しました。

コメント:

 《即興魔法が苦手/Difficult Spontaneous Magic》《呪付が苦手/Weak Enchanter》と平行する欠点です(もっとも、ペナルティの形はそれぞれ異なりますが)。

 正直、小の欠点でこのペナルティ量とは、かなりご無体だと思います。詠唱の成否に関わるだけでなく、疲労する確率が上がりますし、(定式呪文にとって即興呪文との棲み分けという意味できわめて重要な)突破力も大きく衰えてしまいます。しかも分野や状況の限定なし!

 《神秘の血脈》で疲労を防止しつつ俗世の素人さん相手を専門にするとか、《ディエドネー魔法》で即興呪文に特化するとか、そのくらいしないと三流マギになること請け合いです。もっとも、それを逆手にとって、落ちこぼれとしてキャラ立てするのも、それはそれで面白いとは思いますが。

《短命な魔術/Short-Lived Magic》

内容:

 呪文の持続が一段階低下します。

第四版からの変化:

 ルール変化による書き直しの他は大筋変わらず。コストは−2から−1相当へ微減。

コメント:

 《長命な魔法/Enduring Magic》の逆位置であり、《短射程魔術/Short-Ranged Magic》の兄弟分です。

 それ以上落ちると呪文の趣旨が変わってしまう「陽径(diameter)」、そして時間に依存しない「一瞬(momentary)」「集中(concentration)」「魔法円(Ring)」には、この欠点は適用されません。これらを除くと、実質影響のあるのは「年(year)」「月(moon)」「太陽(sun)」の三つのみとなります。実際のプレイ感としては「年と月がほとんど使えなくなり、太陽には5レベル上での再開発が必要」といった感じでしょうか。

 これはもう圧倒的にキャラクターを選ぶ欠点なので、瞬間湯沸かし器なフランボー派とか、ネズミやカゲロウなどの短命な心獣をもつビョルネール派とか、そういったキャラ立てと組み合わせて考えるところと思います。
 また、本末転倒のようですが《柔軟な定式魔法/Flexible Formulaic Magic》で多少のフォローは効いて、それを本人の懸命な補正努力の結果とみれば、それなりに趣深いかも。

《のろま術者/Slow Caster》

内容:

 呪文行使に要する時間がほぼ倍増します。儀式呪文だけは例外。

第四版からの変化:

 速唱時の処理が明記されました。これもコストは−2から−1相当へ微減です。

コメント:

 《放心する魔術/Disorientating Magic》の先払いバージョンです。単に前納なだけなら劣る一方ですが、こちらはこちらで、速唱をすることで時間の支払いをごまかせるのがメリット。これを取るなら、投射を急ぐシチュエーションがありそうな呪文は、予め習熟しておきましょう。

 ただ、たとえ速唱しても1ラウンドまるまるかかってしまう以上、速唱が本来の役割を果たせなくなるのは事実です。カウンター合戦になったり、咄嗟の脅威から退避するよう迫られたりする場面では、たちまち役立たずの足手まといに落ちぶれますので、その点はご覚悟を。

《神聖感受性/Susceptibility to Divine Power》

内容:

 神聖オーラによって魔術に蒙るペナルティが倍加します。

第四版からの変化:

 内容はそのままで、コストは−4から−1相当へダンピング。

コメント:

 ここから他界の干渉に関する欠点が三つ並びます。それぞれが四つある異界の一つに対応しており、残る一つ、ホームグラウンドである魔法界に対応するものは、《魔術感受性/Magic Sensitivity》として超常の美点に入っています。

 神聖界はキリスト教/ユダヤ教/イスラム教といった諸力で、おおむね他の三界を上回る大権を持ち、サプリメント"Realms of Powers: the Divine"に詳しく載っています。魔術団と神聖界/教会との関わりの大要について、手っ取り早くは5版基本ルールのp.10やp.15あたりでどうぞ。

 神聖界担当のこの欠点の内容はシンプルかつ強烈で、教会はもちろん人里でも、容易に呪文を使えなくなります(行使値に対するペナルティだけでなく、ボッチダイスの増加がひどい)。これだけキツイと、大の《状況の制限/Restriction》に代えて、行使自体を不可能にしまうことすら検討の余地があります。

 少なくとも西欧の管区ではマギにもキリスト教徒が大多数のようで、この欠点があると、自分の魔力にどこか後ろめたさを感じて悩んでいそう。また、《妖精の血/Faerie Blood》なキャラクターが「生まれつき教会の鐘が苦手」と言うのもしっくりきますね。

おまけ:神秘の地を侵食していく神聖オーラの地上げ戦法。いやマジで。

《妖精感受性/Susceptibility to Faerie Power》

内容:

 妖精領域の中では迷ってしまうことがあります。さらに、妖精界の技に対しては魔法抵抗が半減。

第四版からの変化:

 《神聖感受性/Susceptibility to Divine Power》と同様に、コスト面の変動のみです。

コメント:

 妖精界担当のこの欠点では、界の性質を反映して「迷いやすい」という効果がついています。定命の者を惑わすのは妖精の大好きな遊びですし、まして抵抗半減でひっかけやすいとなれば、妖精たちは大喜びで悪戯にかかることでしょう。

 また、妖精界由来の力に弱いということは、メリニータ派の《妖精魔法/Faerie Magic》(プラスおそらくは妖精界の俗魔術師)にも弱いということです。この欠点の持ち主(おそらく)で一番有名なのは、上古のストーンヘンジ管区に生きた伝説の魔術師メルリヌスことブリテンのマーリンでしょう。
 個人的には、妖精から真実や惑わしを与えられるのって、どちらかというとマギよりコンパニオンの役割のような気がするんですが、でもこの欠点はマギしか取れませんし、物語上の立ち位置ではこのマーリンみたいのが想定されているんでしょうか。

 いずれにせよ、平行する他の三界の欠点にも言えることですが、取るときには必ず、該当する異界に対してどのようなスタンスで臨むか、ある程度のヴィジョンをもっておくべきだと思います。取っていれば、SGは絶対にその異界の絡んだシナリオをもってきますから!

《地獄感受性/Susceptibility to Infernal Power》

内容:

 地獄領域の中では体調を崩すことがあります。さらに、地獄界の技に対しては魔法抵抗が半減。

第四版からの変化:

 これまた仲良くコスト面の変動のみ。

コメント:

 前項の《妖精感受性/Susceptibility to Faerie Power》もそうなのですが、魔法抵抗の半減効果は、本人の構築するパルマ・マギカにのみ適用されます。"Realms of Power: The Infernal"(通称地獄本)は未刊行(2006年7月予定)ですが、3版4版のころのからみても、魔法抵抗できないとヒドイ目に遭わされるのはまず間違いないですので、なるたけ同僚のマギにかばってもらうように。

 なお、地獄界との取引を魔術団は法典の規約で禁じていますが、さりとて積極的に敵対するのも歓迎せず、不干渉を最善とします。あたら敵をつくるのは魔術団全体の安全保障を脅かすという考え方からで、この欠点の持ち主の反応も同様に、「触らぬ神に祟りなし」が一番自然かと思います。

 むしろ凝りたいのは、こうした弱点をもつに至った経緯でしょうかね。《悪魔崇拝の影/Diabolic Past》などの前世(?)や親兄弟の素性によるもの、もしくは中途半端に神聖界に傾斜しているために(温室育ちのお嬢さまよろしく)けがらわしいものに触れただけで失神するとか。

《想像力不足/Unimaginative Learner》

内容:

 自分の頭で思いを巡らすのが苦手。ウィース研究で得られる経験値が減少します。

第四版からの変化:

 ペナルティ量が数倍に跳ね上がって見えますが、4版では「ダイス1個あたり−1」という形でしたので、実質はそれほど変わりません。もちろん、経験値全体の価値が上がった分だけ、同じ点数でも負担は重くなっている面はありますけれど。

コメント:

 《自由な研究/Free Study》の逆位置にして、《創造性の壁/Creative Block》の経験値対象版。特に付け加えることはありませんので、それらの記事を参考になさっていただければと思います。

《予測不可能な魔術/Unpredictable Magic》

内容:

 呪文を行使する判定は、どんな状態でも必ずストレスダイスです。本来ダイスを振らない疲労なしの即興魔法でさえ、ボッチの有無をみる判定が必要。さらに、習熟呪文でもボッチダイスがゼロにはできません。

第四版からの変化:

 「習熟不能」から「ボッチダイスの下限値設定」に変わりました。さらに、研究室における特殊結果判定の追加も消えています。一方で、コストの下落はこれらペナルティの軽減以上で、いささかビミョー。

コメント:

 《粗忽な魔術師/Careless Sorcerer》の兄弟分で、「ボッチ→歪曲値増加→黄昏」の三段活用を間接的に招きます。《無欠な魔法/Flawless Magic》《慎重な魔術師/Cautious Sorcerer》の対極にあり、詠唱が荒っぽかったり、残心の取り方が不十分だったりするんでしょうね。

 《黄昏の誘い/Twilight Prone》でも述べましたように、マギの人生の長さは、寿命よりむしろ黄昏/歪曲によって定まります。こうした欠点の持ち主はどうしても、他のマギよりも早くに終末の黄昏を迎えることになるでしょう。自動車の運転免許の適性検査じゃないですが、大きな力を扱うからには、それに見合った慎重さが無いと!

《歪んだ魔術/Warped Magic》

内容:

 呪文を使ったときに、有害な副作用が伴います。

第四版からの変化:

 まったく変化なし。

コメント:

 《副作用/Side Effect》の有害バージョンです。それ以上でもそれ以下でもない(笑)

《呪付が苦手/Weak Enchanter》

内容:

 物品の呪付が苦手で、関連する研究値が半減します。

第四版からの変化:

 新規参入組みたい。ありそうで無かった欠点、なのでしょうか。

コメント:

 呪付を行わないマギというのは、実のところあまり考えられません。最初から相当狙ったキャラで、なおかつコヴナントの同僚とはっきり役割分担する(andできる)というなら別ですが。たとえそうでも、充填品(開発に時間のかかる呪文とちがって、1季節で力量ギリギリの効果を発現できる)に頼れなくなるのは、実際のプレイ感としてかなりストレスになると思います。覚悟して取りましょう。

#個人的には、どうせ取るなら、いっそウェルディーティウス派にして(!)ドラマつくる方がまだしもかと…。

《ひ弱な魔術/Weak Magic》

内容:

 魔法抵抗を破るのが苦手です。突破力が半減。

第四版からの変化:

 適用対象が術法一つから全術法へと大きく広がりました。一方で、突破力の算出方法の変化に伴い、半減処理の実質はかなり軽くなっています。そして、ルール自体が消滅した自然抵抗関連のペナルティが削除。
 コスト評価は−2から−1相当へ減少です。総じてコストパフォーマンス悪化ぎみながら、そこそこの取引かと思います。

コメント:

 相手に無理強いしたりするのを望まない、優しいというか気弱というか、そういった性格が似合いそうですね。

 それはともかく、キャラクターや状況によって価値が大きく上下する欠点です。一般的に、マギが未熟なうちは突破力も0や僅少なことが多く、ほとんどペナルティになりませんが、術法の値が成長するにつれて、次第に重くなっていきます。

 それと、フランボー派をはじめ直接攻撃呪文の使い手に向かないのはもちろんですが、仲間を援護するマギにとっても不利になることに注意。魔法抵抗は本人が集中して抑制しないかぎり常動なのです。
 一方で、魔法抵抗をもたない俗世の素人さんばかりを相手にするつもりなら、この欠点があっても全然苦にならないでしょう。また攻撃にしても、抵抗で遮られないタイプの呪文(狙いで判定する)で揃える手があります。そうした各種要素を鑑みてプランニングするとよいと思います。

《無能な師匠/Weak Parens》

内容:

 師匠は魔力が弱く、また教え方も下手でした。初期経験値と初期呪文が減少。

第四版からの変化:

 コストが−2から−1に下がったのに、ペナルティはほぼ倍増。神様、あんまりです(T_T)

コメント:

 《有能な師匠/Skilled Parens》の完全なる逆位置。向こうのボーナスが量もそっくりそのままペナルティとなっています。こちらのコネは役立たずになるし…。

 詳しくは《苦手な技法/Deficient Technique》の項に書きましたが、師匠が無能だと弟子の魔術にも傷が付くことがあります。そちらも併せてご覧になってください。いずれにせよ、ヘルメスの欠点をなにもかも師匠の責任に転嫁できるので、設定的には気楽です(笑)

《劣等生/Weak Scholar》

内容:

 他者の研究書巻(lab text)に基づいて、呪文や呪付を再現するとき、研究値に大きなペナルティがつきます。

第四版からの変化:

 本体はまったく変化なし。研究書巻のルール変動にともなう立ち位置の変移のみです。

コメント:

 こちらも《優等生/Adept Laboratory Student》の完全なる逆位置。コヴナントの資産や外交力に左右される欠点ですので、その辺をにらんで検討しましょう。

 また、これはあくまで定式呪文や呪付の話ですから、その場で一気にアドリブする《ディエドネー魔法/Diedne Magic》《生命直結魔術/Life-Linked Spontaneous Magic》とは、かなりの好相性だと思います。楽譜が読めなくとも不自由なく活動しているミュージシャンも、世の中には大勢いるそうですし。

《奇妙な魔術/Weird Magic》

内容:

 呪文行使のボッチダイスが1つ増えますが、単純な増加ではなく、そのダイスでボッチが出た場合には、危険というより奇妙な効果となります。

第四版からの変化:

 WGREからの採録です。名称内容ともにまったく変化なし!

コメント:

 性能的には《粗忽な魔術師/Careless Sorcerer》の上位互換で、ボッチダイスの増加数は少ないし0出したときの危険も少ないしと、良いことずくめです。単独のコスト比としてみてもお買い得ですので、本文で「黄昏の効果や風変わりな訓練のせいで....」とあるように、何かこじつけられるなら積極的に取りたいところ。

 ちょっと奇妙な効果になるという点に着目すると、《妖精魔法/Faerie Magic》なメリニータ派には特に似合いそうです。ただいずれにしても、ボッチが増えると歪曲値も溜まります。その辺は予め含み置いてください。

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