「超常」分類の美点(小)

《動物理解/Animal Ken》

内容:

 動物と意思疎通することができます。

第四版からの変化:

 コストは最小のままで、効果の内容も大差ありません。しかし感心したのが記述方法の変化。難易度に対してロールして成否という月並みなものから、人間の言語のルールに上手に乗っかったものになりました。これなら手間をかけずに流暢さまで判断できますし、ルール構築の観点からもスマートです。

コメント:

 会話の相手が人間から動物に変わると、〈現代言語/Living Language〉が〈動物理解/Animal Ken〉に、〈人間知識/Folk Ken〉や〈取引/Bargain〉が〈動物の扱い/Animal Handling〉に、それぞれ置き換わるという捉え方でよいと思います。

 人界をはなれた野山で育ったキャラクターが王道だと思います。小鳥語の先生はもちろん、毛むくじゃらの大男がちんまりと小動物や草木と語らうのも良さそう。人語の習得を制限される欠点《野育ち/Feral Upblinging》と組み合わせれば、さらに過激なキャラクターになります。
 また、基本的には魔法界や妖精界に由来する美点だと思いますが、同時代の聖人であるアッシジの聖フランチェスコのように、神聖界もありでしょう。(というか、どんな動物にもコレで通じるということは、動物の世界にバベルの塔の崩壊はないのか…。いやまぁ「全種族は日本語を話す」世界もありますが^^;

 同等の呪文は InAn25 (基本 10, +2 声, +1 集中)となります。実際には鳥なら Auram、魚なら Aquam といった制約術法が加わるので、それなりに価値のある効果。いちいち唱えなくともいい点も便利ですし、小の美点ということでマギでも取りたくなりますが、その場合は《動物を怒らせない/Inoffensive to Animals》ないし《穏和な天稟/Gentle Gift》などの天稟対策が必須でしょう。

《ダウジング/Dowsing》

内容:

 二叉棒をアンテナにした(?)占いで、捜し物をすることができます。

第四版からの変化:

 内容は変化なし。距離や範囲の目安が明記されました。

コメント:

 発動時の条件として、共感の法則で対象物につながる事物が手元に必要です(sympathiec connection:詳しくはp.84参照)。もっとも、誘導呪物ほど厳しくないですから、そう苦労しないとは思います。

 人でもなんでも探せるとあって、重宝する局面はいくらでも想定され、きわめて実用的です。ただし、探す対象の固有性/希少性が高まるほど難易度が上がりますから、十分な数値を確保することが大前提。美点や経験値をつぎこんで【知覚】も〈ダウジング〉も高くしておかねばならず、自信点もしばしば投入することになるでしょう。ごく便利な美点ではありますが、燃費はあんまり良くない感じです。
 それに対して、本文に出ている水捜しの例だと、同等の呪文は InAq10 (基本 2, +1 集中, +3 聴覚) あたり。中堅どころの万能型マギなら、全形相について即興で出せそうなレベルです。そう考えるとちょっと微妙かも。

《魅惑の調べ/Enchanting Music》

内容:

 音楽を通して人々の心を動かすことができます。

第四版からの変化:

 コストが+2から+1相当に微減しただけで、ほぼ変化なし。五版に入って、こうした超常能力の魔法抵抗のルールが整理されましたが、ちょっと心得のある相手だと通らなくなってしまう状況は同じです。

 WGREにはこれの上級版で、地水風火や動植物にも作用する《呪歌/Magical Music》がありました。WGREから5版基本ルールに入った美点はいくつかありますが、これは落選した模様。

コメント:

 所持者の代表はなんといっても神話の桂冠詩人オルフェウス。難易度24を叩き出して冥府から妻を取り戻した彼は、いったいどれほどの値をもっていたのやら(冥王プルートだけでなく、三途の渡し守カロンも番犬のケルベロスも歌で抜けているから、ストレスダイスの爆発ではたぶんない(@_@))

 《催眠/Entrancement》と違って対抗判定でないのは救いですが、いずれにせよ【交渉】と〈魅惑の調べ〉に高い値が必要なのは確かです。(ボッチしないかぎり)この超常能力の成否に影響しないとはいえ、〈音楽〉にも格好としてある程度の値は欲しいですし、具体的な依頼を相手にするには言葉が通じないといけませんから、言語関係にも振らなくては。そうしてみると、経験値のやりくりは結構大変そうです。

 なお、《催眠》は完全な命令でしたが、こちらは依頼・交渉・扇動といったニュアンス。一度に多数に影響できる点は大きなメリットです。ただ、キャラクターの音楽が人々の態度を左右しているのはモロバレですから、その辺の選択でしょうね(もちろんキャラクターのスタイルにもよりますが)。

《耐性(小)/Lesser Immunity》

内容:

 特定の脅威にかぎっては、一切の害を受けません。ただし《耐性(大)》とは異なり、対象は致命的でないもの、または一般的でないものに限られます。たとえば蛇の毒とか悪臭とか。

第四版からの変化:

 大のバージョンで+5〜+6が+3になったように、こちらもおよそコストが半分以下に下がりました。

コメント:

 やはり何を対象にとるかがポイント。神への誓いでやむなく息子の心臓を剣で突いたら、心臓が右側にあって助かったという奇蹟譚がどこかにありましたが、この美点で実現できるでしょう。「馬鹿は風邪ひかない」もそうですね(笑) アイディアに大きく左右されるので、張り切って頭ひねりましょう。

《清めの手(小)/Lesser Purifying Touch》

内容:

 触れて疲労度を一つ消費することで、特定の病を癒すことができます。病気だけで、負傷などは不可。また、《清めの手(大)》とは異なり、対象の病気は一般人が自力で治癒できるものか、そうでなくともあまり重篤でないものに限られます。

第四版からの変化:

 《耐性/Immunity》と同じく二段階に省かれただけで、ほぼ変化なし。

コメント:

 おおむね《清めの手(大)》と共通ですので、そちらをご覧ください。こちら小のバージョンは、眼病長血なんかが対象に当たるでしょう。

《魔術感受性/Magic Sensitivity》

内容:

 魔法界のものを見分けることができます。ただしその敏感さが仇になり、魔法抵抗にはペナルティ。

第四版からの変化:

 ルール自体が消失した自然抵抗関連を削除した程度で、単独の性能は変化なし。一方で、魔法抵抗の持ち主が希少になったことから、ペナルティの重みにキャラ格差が大きくなりました。

 また、感知のための難易度はストーリーガイドが定めますが、その目安が明示されました。五版全体にみられるプレイアビリティ向上措置の一環です。

コメント:

 【知覚】+2に〈魔術感受性〉4 というキャラを想定すると、感知できる確率は

  1. 標準強度の魔法オーラ: 80%
  2. 中堅クラスの魔獣: 50%
  3. 大規模な呪文: 30%
  4. 中規模な呪文: 0%

とまあこのくらい。もう少し上乗せしておきたい感じですね。この辺の事情は《ダウジング/Dousing》と同じで、有用な効果ながら、判定値の確保に苦労しそうです。

 感知できるかどうかが確率であるという事実も苦しい。InVi 呪文なら、レベルに応じた一定の感度の範囲内にあれば100%ひっかかるし、反応が無ければそれは、より微弱な魔力であるか、あるいは存在しないかだと言い切れるのですが。
 ちなみに、上記の各対象について、対応する InVi のレベルと、探知確率が100%に達するときの〔【知覚】+〈魔術感受性〉〕の値を調べてみると、

  1. 標準強度の魔法オーラ: InVi 3 vs. 判定値8
  2. 中堅クラスの魔獣: InVi 20 vs. 判定値11
  3. 大規模な呪文: InVi 15 vs. 判定値13
  4. 中規模な呪文: InVi 20 vs. 判定値16

となります。どうも見るからに、InVi の定式呪文を憶える方が有利っぽい。せっかくのパルマ・マギカに傷がつく(魔法抵抗が下がる)点もあって、マギが取るのはお勧めできません。

 しかしマギでないならコンパニオン向けかというと、それも怪しい。なにせ対象が魔法界に限られ、妖精・神聖・地獄はまるきり感知できませんから、そんなことにコンパニオンを一キャラ潰すのはいかにも勿体ないのです。コンパニオンがパルマ・マギカの守護対象に指定されやすい、という傾向もありますし。ですから、この美点はグロッグに持たせて、炭坑におけるカナリアのような機能を期待するのが一番有効だと思います。

《予感/Premonitions》

内容:

 なにかマズイことが起きそうなときに、それを前もって知ることができます。

第四版からの変化:

 コスト・性能ともにまったく変化なし。《魔術感受性/Magic Sensitivity》と同様に、難易度の目安が示された程度です。

コメント:

 首筋がちりちりするとか、flashback ならぬ flashing foward を見るとか、そういう感じでしょうか。いかにもサバイバビリティ高そうで、マギやらグロッグやらというヤクザな生き方していても、幾多の修羅場をくぐりぬけて長生きできそうです。

 トロイのカサンドララオコーンは、これがさぞ高かったろうと思われます。また、何年か前にテレビでやっていた、恒例の夏のルパンの一作である『炎の記憶』でも、ヒロインがコレもってました。話の軸として上手に機能していてオススメ。

 要求される判定値はそう高くありません。3〜6もあれば充分でしょう。
 さらにこの美点は、限定的ながら未来を覗き見ています。すなわち「時間の限界」に抵触するわけで、ヘルメス魔法では原則として代替できません。そうした意味でも貴重。

 なお、せっかくこの美点を持っていても、SGに忘れられてしまうと何の役にも立ちません。PLは普段からさりげなくアピールしておくように。その方がお互いのためです(^^;)

《霊視/Second Sight》

内容:

 目に映らないものを看破することができます。Im呪文で潜伏/偽装したマギ、肉体をもたない幽霊、レギオーの境界線など。

第四版からの変化:

 霊体やオーラがらみの他に、幻影を見破れるようになりました。手厚く性能アップした感じです。また、超常美点の例にもれず、判定難易度の目安が加えられてプレイしやすくなりました。

コメント:

 広い用途をもつお役立ち美点です。判定値6あれば8割方「見える」案配と、経験値の要求は緩やかで、さらに魔法抵抗にも遮られません! Inを得意とするマギがいないコヴナントなら、(いや、いるコヴナントでも)、この美点は必ず役に立ちます。小の超常美点では1・2を争う優秀さですね。

 五版で加わった新機能ですが、見破れる偽装は Imaginem に限られることに注意。たとえば MuCo による変身などは分かりません。過信して死角を作ってしまうことのないように。

《聖邪感知/Sense Holiness and Unholiness》

内容:

 神聖界と地獄界のものを見分けることができます。

第四版からの変化:

 変更なし。魔法抵抗のルールが統合整理されたのに伴い、相手の抵抗を破る必要があることが明記されたくらいです。

コメント:

 およそ、《魔術感受性/Magic Sensitivity》の神聖/地獄版に相当します。ただし難易度の設定は異なっており、対象の気配が強くとも弱くとも一定です。判定値6くらいで満足してオーラ感知のみを期待するのか、それとも死ぬ気で経験値つっこんで判定値12〜15まで上げ、人や物にもディテクト・イービルできるようにするのか。キャラによってその辺はっきりと割り切って考えるべきでしょう。

 この美点は珍しく界の制限があり、神聖界のみを源とします。やはり聖人や十字軍戦士、敬虔な修道女などが王道でしょうか。

《姿変えの衣/Skinchanger》

内容:

 該当する動物に変身できる、魔法の外套をもっています。

第四版からの変化:

 この外套を壊されたときに、1季節かけて新しいものを作れるようになりました。かなり安心。コストは+2から+1相当へ微減です。また、変身時の特性値変化や所持品の扱いなどが明記されました。

コメント:

 大の超常美点《変身/Shapeshifter》の機能限定&アイテム版にあたります。レパートリーを一種類のまま増やせないかわりに、変身に判定がいらず、結果として、敵対するオーラの中など負荷のかかる状況でも失敗のおそれがありません。

 キーになるアイテムの形態は外套にかぎらず、変身先の動物から作った品なら何でも結構です。また、謎なのは、《変身》と同じく持続時間が書かれていないこと。望むかぎりずっと、でしょうか。

 なお、このアイテムを使えるのは本人だけですので、貸し借りしても役に立ちません。また、本人の誘導呪物扱いになりますから、再発行できるとはいえ、盗難にはくれぐれもご注意を。
 また、「物理的なアイテムである」ことは、いろいろな物語を誘発します。動物でこそないですが、各地に伝わる天女の羽衣の伝説なんかはその典型でしょう。あるいは、『シルマリルの物語』でベレンとルシエンが吸血蝙蝠の化け物から皮をはぎとり、それを使ってモルゴスの宮廷に潜りこんでいます。

 蛇足ですが、これに相当する魔術物品を計算すると、(基本20、+1 接触、+1 集中、+10L 頻度無制限、+5L 集中代行)で、MuCo(An)45となります。駆け出しの《赤帽士/Redcap》に与えられる魔術物品が合計50レベル相当ですから、それにせまる勢い。

《山野の知恵/Wilderness Sense》

内容:

 方角・天候・災害・物資など、自然から多くのことを読み取れます。

第四版からの変化:

 いずれも+1の美点だった 《方向感覚/Direction Sense》 と 《天候予測/Weather Sense》 をセットにし、情報を取れる範囲をその上さらに広げて、野外統合の美点となりました。前述二美点はキャラクターの造型や趣味でとる美点でしたが、この大幅出世でついに実用水準へ。

コメント:

 超常の美点であり、一般美点の《地の利/Way of the (Land)》や通常の〈生存術〉技能とは、出所が異なります。要するにドルイドとレンジャーの違い、ナウシカとユパ様の違いみたいな(笑)

 呪文にすると、InAu20“船乗りの天気読み/Sailor's Foretaste of the Morrow”やInAq15“早瀬の呼び声/Call of the Rushing Waters”など、多数の Intellego 呪文のてんこもり。これ一つとるだけで、コンパニオンやグロッグでも野外のスペシャリストになれます。コヴナント(またはその縁者)に一人いると便利でしょうなあ。

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