「地位」分類の美点(小)
《知識階層/Clerk》
内容:
書記官・会計人・法律家・学生・官吏といった、読み書きを求められる身分にあります。キャラ作成時から学術技能を取得可能。助祭以下の下級聖職者も含まれます。
第四版からの変化:
新規参入組です。前だったら《自由民/Freeman》と《教育/Educated》の組み合わせで表現していたところでしょうか。
コメント:
当時の識字人口はごく少数です。庶民は当然のように文盲ですし、貴族もたいがいは字を読めず、文書や手紙はお付きの司祭などが祐筆代わりに書いてやっていました。実際アルス・マギカにおいても、読み書きを可能にする〈自由学科〉を持つキャラクターが、コンパニオンやグロッグにどれだけいるかを考えてみれば、実情は明らかだと思います。
書かれていませんがおそらく、シトー会などの修道士や修道女も、この美点に該当するんではないでしょうか。特に、《托鉢修道士》と違って、女性が取れるのは貴重です。《真の信仰》持ちのシスターとかやりたい方はどうぞ。
この美点に関連して面白いトピックといえば、闘争の末に自治権を勝ち取って「都市の空気は人を自由にする」といわれた都市のことと、それからゴリアルドゥスですね。ゴリアルドゥスってのは要するに遊歴書生で、侏儒屋さんの記事とか
Tokino
Siren さんの記事とかをご覧ください。(この項にかぎらず、Tokino
Siren さんのサイトは社会史/文化史/音楽史と渾然一体になって大変面白いです。ご用とお急ぎでない方は是非)。
唯一の難点は、初期経験値の増量が無いこと。どのみち《教育》を取らざるをえないハメになりそうなのは、気のせいでしょうか…。
《クーストース/Custos》
内容:
コヴナント内か、もしくは世俗の荘園や修道院で、同輩より上の地位を与えられている使用人です。戦闘/学術/秘儀のいずれか一分野と〈ラテン語〉の取得資格を得ます。
第四版からの変化:
《グロッグの長/Grog Leader》を吸収合併しました。評判と物質的な特別待遇という内容から、取得資格に完全に書き直されています。コストは同じ。
コメント:
まず一つには、現代の会社でいうところの課長クラスですね。グロッグ部隊の士官であったり、庶務全般を取り仕切る執務官であったり。若手を率いる渋面の軍曹とか、ルーズなマギの生活に口を挟まずにはいられない《お節介焼き/Meddler》で苦労性な執事とかが典型です。世俗のケースでいえば、領主の代官などが該当するでしょう。
もう一つには、マギが厚い信頼を寄せるグロッグのエリートです。護衛としてそば近くに常に付き従い、幾多の修羅場で主人をかばいぬいてきたグロッグなら、マギとのあいだに特別な信頼関係が生まれていても不思議はありません。あるいは誰しも認める腕前をもつ、職人気質の写字屋とかね。
なお、小の美点に共通する弱点ですが、初期経験値の増量がついてこないので、その点だけはちょっと考えなきゃいけませんね。《コヴナントの住人》な部下のグロッグはどうせ、取得資格欲しさもあって《戦闘訓練》とか取るんでしょうから、上司がそれより弱くては示しがつきまへん(^^;)
《落伍した徒弟/Failed Apprentice》
内容:
何らかの理由で一人前のマギになれなかった人物です。学術技能と秘儀技能、および〈魔術理論〉を取得可能です。
第四版からの変化:
特になし。
コメント:
修業を完了できなかった理由はいろいろ考えられます。
- 超常美点があって、師匠が指導しきれず、しくじってこじらせた。
- 師匠はよくしてくれたが、《真の信仰》などのために、どうしても魔法になじめなかった。
- ゲドが危うくそうなりかけたように、師匠の禁を破って恐ろしい結果になった。
- 行方不明になったり処刑されたりした師匠に心酔し、他の師につくことを潔しとしなかった。
- 《まことの愛》に走って修業を捨てた。
などなど。PCのマギの(元)兄弟子や弟弟子にあたったりするとなお面白いと思います。
少し話が逸れますが、ブレイド・オブ・アルカナやる人にアルス・マギカを紹介するとき、魔術団のことを「BoA
のセプテントリオンみたいなもんだよ」というと通りがいいようです。生まれもった天稟の有無で魔法を使えるかどうかが厳然と決まり、そうした同族を子供のうちから非合法の手段も辞さずに保護(拉致)してくるところとか。
そしてその BoA
の SSS の一話にもあったように、天稟を十分に開花させられなければ、俗世の家族から引き離されながら団内にも居場所を作れず、安息の故郷を奪われる結果になるのです。それを思うといろいろ辛い境遇なんではないかなぁ。
あと、先日こういうのも目にしました:「大学院のダークサイドについて」。私は大学に行ったことが無いんで嘘か本当か分からないんですが。マギの世界にこういうことが無いのを願います。
《紳士淑女/Gentleman/woman》
内容:
貴族の端くれです。特に不自由のない暮らしをしていますが、たいした財産も相続権もありません。
第四版からの変化:
《下級貴族/Lesser Noble》から名前が変わり、お小遣いの額(笑)の記述が削除されました。コストは半減です。
コメント:
いわゆる部屋住みの若い嫡男や、分家しない次男三男、本家の傍流などが該当します。サリカ法のような長子総取りの相続制度であれば、次男以下に夢はないわけで、いずれ気概のある者は自力で所領を切り取るべく十字軍に加わり、女子は政略結婚で他家の当主に嫁ぎ、といったことになるでしょうか。あるいは副将として当主の脇を固める者もいるかもしれませんが。
しかし一方でこれは、《封建貴族》のように立場に縛られる不自由があるわけでもなく、かといって下々の者のように日々の暮らしにあくせくする必要もないという、ほどよいポジションでもあります。貴族出身の多いイェルビトン派なんかだと、領主の年若い甥や姪が「変わり者の叔父さん」の庵を好んで訪れるってのは一つのパターンですね(この辺クトゥルフと似たようなもの^^;)。優秀ではないかもしれませんが、なにかと使いやすい美点だと思います。
《騎士/Knight》
内容:
騎士叙勲を受けています。戦闘技能の取得資格に加えて、高品質の武具と軍馬を持ちます。《封建貴族》との併用が可能。
第四版からの変化:
《武者修行中の騎士/Knight-Errant》から名前が変わり、設定面がグンと広がりました。コストは半減。一方で、武具関係の美点が消滅した関係で、そちらの明確なボーナスが無くなっています。従者も消えました(;_;)
コメント:
初期経験値の増量が無いのは相変わらず難点ですが、コストの相場としてはやむを得ないところでしょう。p.23のテンプレートがやっているように、《富裕》でも取って凌ぐしかなさそう。取得資格を一切持たない《封建貴族》の穴をうまく埋めてくれますから、《封建貴族》を取るキャラにはその点も含めてオススメです。
逆に、できれば《貧乏》は取らないように。本文の記述で、せっかくの銘刀や軍馬まで取り上げられてしまいます。まあ痩せ馬に乗って一旗揚げんとする貧乏武士というのも、それはそれでロマンではありますが(^^;)
《托鉢修道士/Mendicant Friar》
内容:
人々を訪ねてまわり、福音を広め、霊的な慰めを与えます。キャラ作成時から学術技能を取得できます。一方で、修道士として《戒律》を別途取る義務アリ。《大学講師》を併用することもできます。
第四版からの変化:
装備の価格面の制約が消えました。コストは据え置き。
コメント:
財産を持たずに托鉢を趣旨とする修道会は、フランシスコ会やドミニコ会が代表格です。ドミニコ会士の中には、かの大神学者トマス・アクィナスもおり、《大学講師》との併用は彼のような人物を想定したものでしょう。(ただ、フランシスコ会にはA.D.1220現在ですでに聖クララ以下の女子修道会もあるはずなんですが、男性しか《托鉢修道士》を取れないとはこれ如何に?)
清貧/貞潔/服従からなる修道会の《戒律》は、「物語」分類に属する大の欠点です。SGが修道会の上位者をNPCとして指示を出すことで、シナリオを作りやすいようにする仕組みだと思います。自然に旅して回れる身軽さも、コンパニオンとして好都合でしょう。
《傭兵隊長/Mercenary Captain》
内容:
傭兵隊を率いる隊長です。戦闘技能を取得可能。
第四版からの変化:
武具の優遇措置が消えていますが、一方で戦闘のルールに指揮の要素が導入されたのは大きな強化です。コストは+2から+1相当へ微減。
コメント:
競合先の美点は《騎士》ですが、身分と軍馬を誇る《騎士》に対して、こちらは配下の傭兵隊がアドバンテージです。優秀な指揮官が部隊を率いたときのボーナスは非常に頼りになりますから、〈指揮〉技能は是非とも高くしておきましょう。部下の傭兵たちはグロッグとして処理すればOKです(テンプレート「一般兵/standard
soldiers」のデータをそのまま使うと楽)。
用心棒として隊ごとコヴナントに雇われたとするのが手っ取り早いと思います。社会から信用がないぶん責任もないですから、プレイ中でもなにかと動きやすくオススメ。《騎士》と違って女性に取得できることも売りです。
《司祭/Priest》
内容:
司祭に叙階されています。学術技能を取得でき、《大学講師》との併用も可能です。一方、叙階にともなう《誓い》が必須。
第四版からの変化:
収入の額が削除されました。コストは+3から+1相当へ大幅減。一方で、神聖界のサプリメントが新しくなったのに伴って、聖職者に与えられる権能のルールが弱体化しています(前が凶悪すぎただけですが^^;)
コメント:
司祭は7つの秘蹟を授けることができます。つまりミサを挙げたり、信徒から懺悔を受けたり、結婚式で新郎新婦を結んだりできるわけです。関連するルールは、サプリメント"Realms
of Power: The Divine"を参照のこと。
当時の人々は、司祭がいてくれないとそれこそおちおち死ぬこともできず(終油と懺悔をせずに死んでは天国に行けない)、日々の生活に不可欠な存在でした。そのため社会的地位は高く、また教会法の管轄下にあるため、世俗の法の力は及びません。
そうした強い社会的背景があるだけに、立場を利用して蓄財や権力にうつつを抜かす悪徳司祭も少なくありませんでした。告解を悪用して《情報通》、信心深い領主に取り入って《庇護》、国や地域に縛られないカトリック教会のネットワークで《人脈》などなど。
また、教区というのは、要するに日本の仏教でいうところの檀家みたいなもの。豊かで敬虔な檀家が多ければ、お坊さんの生活が豊かになるのも自然で、これが《貧乏》に対する取得制限の理由です。
逆に、教区をもたずに領主や富裕層に個人的に召し抱えられてお付きの司祭となり、文字や文書など祐筆としての仕事をした者もいます。山城では敷地内に礼拝堂を建てて、そこに司祭を一人置くというのはよくあることだったようですし。領主の腹心という立場で《司祭》のコンパニオンを作るのも面白いかもしれません。
少し脱線ですが、まっとうに聖職を扱いたい方は、生のキリスト教に一度触れてみるとよいと思います。つまり、実際に教会を訪ねて、礼拝を見学させてもらったり、神父/牧師さんとお話ししたりするのです(ただしその際カルトは避けないといけないですが)。西洋史の一方の柱であるにもかかわらず、日本では実体を知らずに論じる方が多い。歴史や文化を理解する上で、知っておくと有利なことばかりですので、信者でない私からもオススメです。
もっともアメリカ人が、「キアイ!」とシャウトするとSTRが18/00になるサムライとか、NINJA鉢巻きでクリティカルヒット!のニンジャとかを愛するように、日本人が異端審問や破戒僧に幻想を抱いても、まぁ悪くはないんでしょうが(^^;)
おまけ:じゅらさんに教えていただいたネタサイト「最新 日本ガイド」
《賢人/Wise One》
内容:
通常の身分の埒外にいながらも一目置かれている存在です。秘儀技能と学術技能のどちらか片方を取得可能。
第四版からの変化:
特になし。
コメント:
本文が超常美点の取得を勧めているように、魔術団に属さない俗魔法使いが最大のお得意先です。そのキャラクターが《賢人》なのか《放浪者》なのか《追放者》なのかは、周囲にどのような目で見られているかで決まります。敬意や畏怖もて受容されているケースがこの《賢人》ですね。
また、俗魔法使いでなくとも、世俗から少し外れた立場の人物一般がこの美点の候補になります。そういうことも含めて、薬草師や占い師、隠者などが似合うでしょう。
[戻る]
|