サガ"フォッソル" 第21話

不死身の心臓

キャラクター

 ソーン (テュータルス派マギ)

 アグリッパ (ウェルディーティウス派マギ)

 ドン・セベリノ (猪武者)

 ロダン神父 (近隣教区を預かる老司祭)

※例によって簡易レポートです。ただ、アルス・マギカに不慣れな方向けの補記を少しだけ盛り込みました。

季節行動

 第20話の後、リアルで一年近くが経ってしまいました。ミケラントスのPLが就職活動で当面参加できなくなった影響で、ヴィラールの方の筋書きはひとまずお休み。舞台はまたプロヴァンスに戻ります。

 さて、アルス・マギカでは、季節単位で時間が流れます。1季節ごとに各々行動を決め、成長していくのです(そのかわりミッション達成等では経験値を得られません)。読書や訓練で経験値を得たり、オリジナルの呪文を開発したり、魔術物品を作成したりetc...。自分なりの将来計画と相まって、この季節行動がすごく楽しい。

 前回のセッションからゲーム内時間で1年(4季節)流れたことにしました。ドン・セベリノは剣術師範として用心棒のグロッグたちに稽古を付けて過ごします。またこれまでの功績を認めてか、チェインメイルとラウンドシールドを買い与えてもらいました。今まで革鎧以外は剣一本で頑張っていた彼、たしかに人外魔境な技量で「当たらなければどうということはない」のですが、ひとたび当たった時に簡単に落ちそうでしたので…。
 ロダン神父は村人たちの魂の世話をしたり、本を読んで〈神学〉や〈哲学〉を伸ばしたり。ただロダン神父、この年で51歳になり、老化判定がかなり厳しくなってきました。【体力】【反応】などの特性値が軒並み下がり、一度は「生命の危機」表まで振らされる始末。ダイスにもよりますが、持ってあと5〜6年かなぁ。美点《真の信仰》のおかげで死後は天国確定ではあります。

 マギたちはというと、ソーンは所蔵の魔術書を読んで Intellego(ワレ識ル)と Vim(魔力ヲ)の値を大きく成長させました。この二つの術法依存で判定する、魔術物品の調査に備えたものです。今後この手の仕事は「おれにまかせろ」かも。
 そしてアグリッパとも手分けして、前回のセッションで敵マギの研究室から押収した品の鑑定や研究書巻の解読に臨みます。一応全部処理しおえました。収穫は「フォッソルの資産」のページを参照のこと。

 フォッソル全体の金銭収支は、「金の卵を産む鶏」が平年より5%増しに働いてくれて、31ポンドの黒字。もっとも、アグリッパが自動人形を作り始めると、100ポンド以上もの費用がかかってしまいますから、そうそう左団扇というわけでもありません。
 一方、アグリッパの魔術物品「学天則」が自動写本してくれた7冊を、管区内のコヴナント"アクアリウス"に提供し、その代価として、蔵書に欠けていた Muto(ワレ変ズ)の大全書を写させてもらってきました。[レベル15, 品質16]という名著です。これで Muto の成長には困らないハズ。

 ウィース(魔力の結晶)に関しては、これまでのセッションで様々なウィース源を開拓してきているおかげで、収穫量は申し分ありません。問題は種類が偏っていることです。だぶついている Terram(大地ヲ)のウィースは今回、アグリッパが〈魔術団知識〉で判定したらダイスが回りました。そのためレバント管区の紛争地で、Terram に欠乏しているコヴナントに心当たりがあり、2:1(通常の倍相場)で Intellego(ワレ識ル)のウィースに交換してきました。余っている分は赤帽銀行に預け入れ。
 ウィース源(特にIntellego)を探すシナリオをやりたいねぇという声が出ていました。実力値持ちの大フクロウを探すシナリオとか。あるいは豊かな地を求めて暗黒大陸に?(そのためにはラサの猫バス計画に協力する?)などなど。次はそういうシナリオでも組みますか。

発端

 今回のシナリオの発端は、満身創痍の騎士が、無気味に脈打つ黒い塊を谷に持ち込んだところから。「悪魔崇拝者どもが邪な儀式に使おうとしていた品だ。奴らの手に渡さないでくれ。破壊したいが、剣も火も効かなかった」といいます。マギたちはかねてから地獄の結社と抗争中でしたから、まあそれならと引き受けました。この谷は結界(ReVi20"炉辺の守り")を張ってあるから、連中はおいそれと入ってこれないしね。

 騎士はソーンの Creo Corpus(ワレ創ル/人体ヲ)魔法で一命を取り留めました。詳しい話を聞くと、彼はドン・セベリノと同じく、アルビジョワ十字軍に滅ぼされたカドネ城の落ち武者とのこと。十字軍の指導者ながら実は悪魔崇拝に堕している教皇特使アルノー・アマルリックを襲撃し、この塊だけをなんとか奪ってきたそうです。
 ソーンたちは当初この塊をロダン神父の教会に保管してもらう(神聖オーラの効力を期待)つもりでいましたが、そのことを聞いて考えを改めました。教会の上位者に当たるだけに、教皇特使が一言命令すれば、神父は渡さざるをえないのです。おまけに、結界内なら探知を妨害できていても、谷を出たとたんに見つかって襲撃を受けかねません。

 谷の入口に見張りを立てた上で、1季節かけて魔術物品扱いで鑑定したところ、これは実力値50の大悪魔の心臓でした(実力値は悪魔のHP兼MPみたいなもの)。しかも不死身の魔力が働いていて、普通の魔法では効かない。さらに、黒い汗(地獄界のウィース)を毎季節かきつつ、放っておくと付近一帯を徐々に地獄オーラに汚染していく!

 おまけに、豪華な輿に乗った目つきの悪いでぶの男が、アルノーの使節を名乗って谷の入口に現れ、こう呼びかけていきました。「異端の騎士崩れが、我らの聖なる宝物を奪った。この谷に逃げこんだことは分かっている。直ちに引き渡されればよし、さもなくば再戦と心得よ」。
 谷の付近で足取りが途絶えたとはいえ、確証は無いはずとして、マギたちは対面すらせずに黙殺。アグリッパが"土中歩行器"で地中から眺めていると、男はまもなく引き上げていきました。

研究はじめ

 これらを受けて、マギたちは破壊の方法を早急に研究しはじめました。

 振り切れた値の〈魔術理論〉を誇るアグリッパ博士は、HoH:TL所収の基礎研究ルールを使って、破壊方法の鍵を探ります。試作品(ここでは実力値を減殺するワンド)をいくつも実験でつくり、特殊結果表で「発見」の出目を振ったら発見に至るポイントが溜まる、というもの。
 試作品のレベルが高いほど、得られる発見値も大きくなりますから、アグリッパは研究値いっぱいの50レベルの充填品で狙いました。〈魔術理論〉の高さで特殊結果表の出目を多少操作できる恩恵もあり、アグリッパはこの年の暮れまでかけて、うまいこと10点の発見値を得ました。残り20点。

 一方ソーンは、ドン・セベリノを護衛に連れて、手掛かりになりそうな書物や品物を入手しに歩きます。最初に向かったのは、悪魔を改心させたという伝説のある聖人の泉。行ってみたら聖人(の幻影?)が現れて、「岩をも動かす信仰心がなければ汲むことまかりならん」と言われたので、老骨鞭打ってロダン神父に来てもらいました。

 しかし泉の水を手に入れていざ帰ろうとしたとき、例の輿に乗ったでぶ(仮称)に率いられた、悪魔崇拝者の手勢に襲撃を受けます。連中もこの泉を見張っていた模様。ロダン神父の応援(「聖なる影響力」で神聖オーラ内の特定の判定に修正を加える)の下、ドン・セベリノが時代劇ばりに6対1のチャンバラで踏ん張りますが、手傷を負って押されぎみ。ソーンの呪文も抵抗されてしまいます。
 そこへロダン神父の祈りが聖人を動かしました(高い神聖オーラのおかげで、「聖人の加護を請う」判定に成功したのです)。セベリノの傷がみるみる全快&泉の水が悪魔崇拝者の前衛を水びたしに。どうやらこの泉の水は邪悪な力を打ち消す働きがあるらしく、魔法抵抗を失った敵はソーンの Rego Mentem(ワレ操ル/精神ヲ)呪文の前に次々と眠りました。
 この情勢を見たでぶ(仮称)は、「おのれ、儂には魔法も鉄も効かぬとはいえ、部下どもがこの有様では退かざるをえぬか」と言うと、悪霊の名を呼ばわって配下ごとテレポート。一行は窮地を脱しました。研究室に戻り、泉の水を調査することで発見値10点獲得。

研究おわり

 残り10点の発見値を独力でやろうとするとまた一年かかってしまいそうなので、二人はさらに他人の褌を借りることにしました。

 まず、ソーンの師匠と同じコヴナント"カウェルナ"に属すフランボー派のアルドルが、地獄界の魔力(特にドーピング)を炎に変換することで自滅させる Muto Vim(ワレ変ズ/魔力ヲ)呪文を開発していたと聞いて、その呪文書を借りに行きます。
 "カウェルナ"といえば、問題は師匠のゲルマニクスなのですが、例の心臓が産出した地獄界のウィースを(それと告げずに)握らせて、アルドルを紹介してもらいます。第19回のフユギモソウのときと同じく、後でどんな仕返しがくるかスリリングです(笑)
 アルドルは事情を聞くと、快く呪文書を貸し出してくれました。なんでも亡き師匠ダミアヌスとフローリアの三人で、昔この悪魔を破る魔剣を鍛えたことがあったのだそうです。聖人の泉の水が手に入らず、とどめを刺すには至らなかったようですが…。呪文書を解読することで発見値5。残りは5点。

 赤帽士のファレルに頼んで、話の出たフローリアのところに行ってもらうと、こちらも手掛かりになる書巻を貸してくれました。しかし、帰路に近道しようとして通った「紅葉の森」で妖精に盗まれてしまいます。代わりに入っていたのは紅葉一枚。
 「葉は茂ることなく枯れることなく、とこしえに森を彩る」と謳われる紅葉の森。妖精の女王は「そうねえ、月の光を織った布など欲しいかしら。水の羽衣でもいいわ」なぞと無理難題を仰いますが、アグリッパが1季節かけて、金属枠に月長石をあしらった見事なイヤリング(ReIgで月光を貯めて輝く)を作り、これを献上して事なきをえました。ソーンは「おいしいお菓子と紅茶を用意しているから遊びに来てね」などとメッセージを送っていましたが、さてどうなるでしょうか。
 書巻を調査すると、他ならぬこの紅葉に関するもので、不浄な者を焚きつけにする用法が書かれていました。これで発見値が30に達し、問題の心臓を破壊する魔法をつくることができるようになりました。

終幕

 この1234年秋、ついにアグリッパは心臓を破壊するための特製のワンドを呪付しました。相手の魔法抵抗は依然として強力であり、それを破るために力量の大半を割かねばならず苦戦しましたが、発動回数を1日1回のみにすること、1回あたりの実力値減少をわずか2点に抑えること、そして発動できる期間を初回起動から7年以内に限定すること、この三つの設計の工夫でどうにか完成させることができました。充填品として2季節かけて量産するより、期間限定の簡易呪付物とする方がリーズナブル、という面白いケースです。

 アグリッパがこの切り札を制作中に、十字軍に偽装した悪魔崇拝者の軍勢が谷の入口を封鎖し、兵糧攻めを仕掛けてきたのですが(さすがに結界内に入る勇気はなかったらしい)、ソーンがかねて入手の魔術物品"雪の宝珠"の Creo Auram(ワレ創ル/大気ヲ)で雪雲を呼び起こして深い雪を降らし、敵軍の布陣や兵糧調達を逆に妨げることで、うまく撤退に追い込みます。

 完成したアグリッパのワンドで一日一回心臓を叩くこと25日目、ついに実力値が0になって心臓は塵と化しました。残骸の塵からウィースを回収できたおまけつきです。これにて目標達成!

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