「性格」分類の欠点(大小両用)
《野心家/Ambitious》
内容:
ある分野において誰よりも成功したいと願い、そのために血道を上げます。
第四版からの変化:
新規参入組。
コメント:
北大のクラーク博士の言を借りれば"少年よ大志を抱け(Boys
be ambitious)"。「当代きっての画家になろう」「末は博士か大臣か」「管区随一の魔力を手にしよう」といった野心を表します。上昇志向で活発に行動していける、使いやすい性格だと思います。オススメ。
《守銭奴/Avaricious》
内容:
何らかの物欲にとらわれており、それをたくさん手に入れて死蔵するのが喜びです。
第四版からの変化:
新規参入組。
コメント:
金の亡者はもちろん、本文にあるように書物やウィースでも可。集めるばかりで使わず、宝の山で眠るのが好きな龍みたい。《気前がいい/Generous》の真逆です。
中世のキリスト教圏では蓄財はあまり良い目で見られず、特にそれが貸付利子などによるものだと、随分眉をひそめられたようです。そのため金融業にはキリスト教徒でないユダヤ人が就くことが多く、それがまた差別に繋がっていくのですね(シャイロックとか)。
マギにとっての金銭に一番近い存在といえばウィースであり、これはこれでメルケーレ派の赤帽士たちが種類の交換や貸付・質入れなどのサービスを提供しています(詳しくはHoH:TL参照)。ちなみにこの赤帽銀行(^^;)、年利20%という超高金利なので、そちらに大口で"預金"して利殖を稼ぐのも美味しいかなぁ。もっとも、欧州のマギはもっぱらキリスト教徒、よって無利子が原則の中でそれをやれば、まさしく《悪名高い/Infamous》になるでしょうが…。
また、対象が書物であれば、各地の修道院や勃興しはじめた大学がそれぞれに秘蔵の書物を蓄えているでしょうから、写本交換などによってそれらを集めるのが生き甲斐という風になるのでしょう。物質化した叡智を書棚に山と積み、それを眺めてうっとりしていたり。
なお、性格欠点には、いわゆる七つの大罪(傲慢・怒り・嫉妬・怠惰・好色・大食・貪欲)に対応するものが含まれていて、これもその一つです。すなわち《尊大/Proud》《怒りっぽい/Wrathful》《妬み症/Envious》《好色/Lecherous》《大食漢/Greedy》そしてこの《強欲/Avaricious》。《怠惰/slothful》だけは基本ルールにありませんが、そちらは小の性格欠点として『ヘルメス諸派:神秘教団(Houses
of Hermes:Mystery cults)』のビョルネール派の章に掲載されました。
これら七つの大罪や、その対極の七つの美徳は、神聖界や地獄界の者(司祭なり悪魔崇拝者なり)が他者を感化するルール("RoP:Divine"や"RoP:Infernal"に所収)でもよく用いられます。
《思いやり深い/Compassionate》
内容:
困っている人を見過ごせません。
第四版からの変化:
新規参入組。
コメント:
心優しい正義漢。良い主人公になれるでしょう。大の性格欠点の中では一番人格的(?)な内容で、取る方も多いと思います。物語に誘いやすくて
SG は大助かり。
他の PL
と合意が取れていれば、本人がヒーローでなくとも、後先考えずに厄介事に飛び込んでは他の
PC
に助けられ、その過程で絆を深めるというのも美味しいでしょう。また、綺麗事といえば綺麗事、甘さといえば甘さですから、スレたキャラクターを周りに配置してやると、お互い引き立て合って面白そうです。その意味でこれは、いじりといじられを兼備したキャラであり、卓全体にとっても有り難いですね。
《ライフワーク/Driven》
内容:
人生全体をかける大目標があり、それに向かって日々邁進します。
第四版からの変化:
文章は書き直されましたが、おおむね変化なし。性格欠点となったのに伴って、対象別に複数回取れるというのが削除された程度です。
コメント:
プロジェクトX(笑) マギでいえば、ヘルメス理論の限界を破ろうと日夜努力を続けるボニサグス派の研究者なんかがお得意様です。俗世なら圧政からの解放、異教の地への伝道、天下布武などなど。夢を見ようじゃありませんか!
#剣を捧げた姫に「雨にも濡らさずお守り申し上げます」なんて少女小説ちっくなのもいいかなぁ。
#あるいは「○○様を王位につける」とかね。
キーポイントは他のキャラクターとの折り合い。目標に向かう努力がうまく他のキャラクターの人生にもからむようにお互い構成しておくと、プレイが始まってから事故らなくて済みます。事前の摺り合わせが大事。
《妬み症/Envious》
内容:
他人は分不相応にうまい汁を吸っていると思っており、その幸福を損なおうとします。
第四版からの変化:
新規参入組。
コメント:
七つの大罪の一つ(詳しくは《強欲/Avaricious》の項目を参照ください)。
欠点名のわりに、なにか偏向を感じるほど狭い解釈が提示されていて、その結果「この欠点は
PC 向きでない」などと書かれているわけですが、個人的にはそれもちょっと勿体ないかなぁという気も。こと色恋沙汰では嫉妬が魅力ということもありましょうし、小としてくらいなら、そんな取り方もありなんじゃないでしょうか(それとも、そういうのは《悪癖/Compulsion》でやれということなのかな?)
また、《野心家/Ambitious》との組み合わせもよいと思います。惚れた腫れたでない職業上の問題(笑)として、出世競争や秘呪継承の跡目争いなどの物語において。
《気前がいい/Generous》
内容:
自分の持っているものを惜しみなく分け与えます。
第四版からの変化:
新規参入組。
コメント:
《強欲/Avaricious》の逆。中世において気前の良さはその人物の器の大きさを示す美徳であり、それゆえ貴族たちは吝嗇と見られぬよう気を遣いました。
しかしまあ物には限度というものがありますよね。大で取っていたら、それこそ自分の食い扶持が充分でなくとも皆に振る舞ってしまいそうです。他人にたかられることも多そう。
でも一方で、それだけ人の輪に囲まれてもいるわけで、社交面の土壌は豊かでしょう(《有名/Famous》《人脈/Social
Contacts》《世俗の影響力/Temporal
Influence》などで表現)。《富裕/Wealthy》はあってもなくてもそれぞれにそれっぽいかな?
《大食漢/Greedy》
内容:
飲み食いが大好きで、ことあるごとに暴飲暴食します。
第四版からの変化:
新規参入組。
コメント:
これも七つの大罪の一つ(詳しくは《強欲/Avaricious》の項を参照)。現代に比べて大食に罪の意識が高いのは、農業の生産性が低く飢饉も稀でなかったという時代の環境も反映しているものと思います。
どっちかっつーと質より量の食いしん坊っぽいので、美食倶楽部の海原雄山より、黄レンジャーとか「気は優しくて力持ち」のヒーローかな。《大柄/Large》なり《肥満/Obese》なりと組み合わせたいところ。
《憎悪/Hatred》
内容:
ある人物もしくは集団への憎しみに燃えています。
第四版からの変化:
コスト−1だったのが性格欠点として順当に採録です。本文は全面的に書き直されており、復讐の現実性についてのニュアンスが多少弱まりました。
コメント:
性格欠点の中でもキャラクターを強烈に突き動かしてくれるため、動機付けにはまったく苦労しません。むしろ薬が効きすぎて、他のPCとの兼ね合いを上手に回すのが課題になるでしょう。物語分類の欠点である《宿敵/Enemies》や《確執/Feud》との使い分けも考慮のこと。彼我の力の差や、憎悪の原因となった事柄などから選択するところだと思います。
また、あるキャラクターに憎悪対象と自分の両方が友好的な関係を結んでいたり、吹き込まれた誤解に基づく憎悪だったり、そしてさらにその事実を伏せておいたりすると、さらに豊かな物語につながると思います。憎悪をあきらめるのも一つのドラマ。
《好色/Lecherous》
内容:
色恋沙汰が大好きです。
第四版からの変化:
新規参入組。
コメント:
これまた七つの大罪の一つ(詳しくは《強欲/Avaricious》の項を参照)。伝説級でいうとドン・ジョヴァンニにカサノヴァ、はたまた『辺境警備』の隊長さんなんかも。本能と文化の匙加減でいろいろなパターンが遊べそうですね。それにマギの場合は長寿儀式をしていると子供を作れなくなる(作らなくなる)ので、それもまたなんとも…。
《お節介焼き/Meddler》
内容:
他人にお節介を焼きたがります。本人は良かれと思ってですが、受ける方には煙たがれやすい。
第四版からの変化:
これもコスト−1から性格欠点として順当に採録です。ただし性格と評判のおまけは消えました。
コメント:
縁談大好きの仲人おばさんなんかが真っ先に浮かびますが、「皆に信頼はされそうだけど、愛されそうにはないかも」って報われない委員長タイプもあるでしょうね。他のキャラクターの物語に絡んでいく方向で立ち位置を考えるとよいと思います。
あと、オルコットが『続・若草物語』の中でオールドミスについて書いているこんなくだりも。
紳士たちよ、ということは、若い者たちということだが、老嬢には丁重に接しなくてはならない。老嬢たちがどんなに貧しく、見かけが悪く、すましかえっていても。真の騎士道とは、社会的地位、年齢、肌の色に関係なく、いついかなるときでも、年上の人に敬意を払い、弱き者をかばい、女性に仕えることにあるのだ。
やさしかった叔母上たちを思いだしてみるがいい。お説教をたれたり、つまらないことでさわぎたてたりしたかもしれないが、世話をしてくれたり、やさしくなぐさめてくれたりもしたではないか。それもほとんどの場合、ろくに感謝もされずに。困ったときは助けてくれ、とぼしい貯えの中から「小遣い」をくれ、老いた指で一針一針繕い物をしてくれ、どこへでも喜んで歩を運んでくれたではないか。だから、大切なお年寄りのご婦人方に、感謝をこめて多少なりと目を向けてもらいたい。女性というものはいくつになっても、人から注目されるのがうれしいものなのだから。
…この性格欠点の典型を的確に描き出していると思う次第。
《楽天的/Optimistic》
内容:
成功も失敗も含めて、何事も最終的には良い方向へ転がっていくと考えています。
第四版からの変化:
新規参入組。
コメント:
運命の善意を信じ、また実際それに恵まれて、活発に行動を重ねていく人物像が浮かびます。《確固たる自信/Self-Confident》を持っている割合も相当に高いことでしょう。失敗にへこたれずゴールを信じていける素養は、現代でいえば起業家、そしてサガでいえばある種の英雄に不可欠なものと思います。いわゆるPC1枠を取りたい人は是非!
また、こういうキャラがいるなら、他のキャラは《悲観的/Pessimistic》など慎重な性格にしておくと、綱引きができて楽しいかもしれません。元気づけられたり、逆に過度の悪意からそれとなく護ったり。
《自信過剰/Overconfidence》
内容:
過度の自信を持っており、失敗など考えもしません。
第四版からの変化:
コスト−2から性格欠点として採録。まずは順当かと。
コメント:
失敗の可能性をおそれずアクティヴに行動するということで、大の性格欠点になりうるとされているものと思います。放っておくと「俺はやるぜ、俺はやるぜ」とどこまでも突っこんでいきかねないので、これもまた脇に慎重派のキャラを置いて、「どうどう」とブレーキをかけてやりたいところ。
もしくは、自信値の消費による自己抑制を一つの見せ場として計画して、あえて小でとっておくのも一つの方法でしょうか。いつもは「大丈夫だって」というお調子者が、大事なもののために「今度だけは念には念を入れておかねば」と腰を落とす場面。
《敬虔/Pious》
内容:
信心深く、宗教の教えに忠実です。
第四版からの変化:
新規参入組。
コメント:
岩をも動かす《真の信仰/True
Faith》の持ち主にこの性格欠点が多いのは当然でしょうが、そこまでの境地には至らなくとも、敬虔な信徒は大勢いるはずです。毎週ミサに参列し、普段のお祈りも欠かさず、周囲から一目置かれる真面目な人かな。
平信徒もふくめて神聖界の与えてくれる力には、秘蹟による信仰値の獲得や祈りによる神の助力、奇蹟の可能性、聖人の加護などがあり、サプリメント『異界の力:神聖界(Realms
of Power:Divine)』に掲載されています。それらを積極的に活用するとそれらしいでしょう。
あとまあ、自らに禁じるほどに、罪の蜜はますます甘く感じられるということもあると思います。悪魔もSGも、こういうキャラは余計に狙いたくなりますね(笑) 周囲に放蕩者なPC/NPCがいれば放っておけないかもしれませんし、その辺りで物語が作れそうです。
《尊大/Proud》
内容:
自分は誰よりも価値ある人間だと信じています。
第四版からの変化:
新規参入組。
コメント:
七つの大罪の一つ(詳しくは《強欲/Avaricious》の項を参照)。対極にある美徳は、友や隣人との連帯を示す信義です。周囲をみな格下に見るので、実際いかにも友達少なそう。もっとも、一種のノブレス・オブリージュというか、エリート意識からくる強烈な責任感という形で関わっていく手はあるでしょう。
なお、内陣の秘儀を授けられたウェルディーティウス派マギは、小の性格欠点《匠の自負/Hubris》を必ず持つことになります。自らの腕前に対する驕慢を示すこの性格は、この《尊大/Proud》とも通ずるところがあり、両方を持てば相当厄介な偏屈職人になることでしょう。
《怒りっぽい/Wrathful》
内容:
些細なことでも怒りにかられてしまいます。
第四版からの変化:
新規参入組。
コメント:
七つの大罪シリーズ(詳しくは《強欲/Avaricious》の項を参照)もこれで最後。ちなみに4版時代のシナリオ集『魔の祝祭(Festival
of the Damned)』は、これら七つの大罪をモチーフにしたシナリオでした。
この《怒りっぽい/Wrathful》は要するに癇癪持ちで、堪忍袋が小さい、キレやすい性格を表します。ただし、なにかしら特定の引き金(禁句とか)で暴走するケースは、大の物語欠点《激憤/Fury》が担当しています。性格分類と物語分類はそれぞれ取得数に制限があるので、それらの兼ね合いから代用策として使うことも出来なくはありません。
激情的な性格はトラブルメーカーで厄介といえば厄介ですが、熱血漢とも言え、涙もろいようなところもあるとなかなか魅力的だと思います。燃えさかるフランボー派やコンパニオンの傭兵隊長なんかにいかがでしょう?
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