単発シナリオの指針

 アルス・マギカは基本的にキャンペーン指向のシステムです。まずPCを作成した上で、それらPCに持たせた物語欠点性格欠点をシナリオフックとして、数セッション〜十数セッションからなるサガを行うというのが、おそらく想定されている運用だと思われます。

 しかしながら、コンベンションをはじめ、単発で遊ぶケースも実際にはありえます。本来の運用を逸脱するだけに、そうした際には若干の工夫が必要で、ここではそれを考えてみます。

■キャラ構成

 まず、キャラクターの構成の問題があります。すなわちマギとコンパニオンの人数構成。
 特にコンベンションでは、アルス・マギカ卓に来るPLというと、経験的に9割方はマギをやりたい方なものです(残り1割はコンパニオン希望)。しかし全員マギという構成では、天禀の社交ペナルティや、法典に書かれた対外干渉の禁止条項などがあって、他のTRPGほど自由にはいきません。

 これには以下のような方策が考えられます。

  1. それでも全員マギでやる。
  2. 誰かにコンパニオンをやってもらう。
  3. マギとコンパニオンの両方をプレイしてもらう。

 1)はまあ無理を通して道理を引っ込ませる方法です。この場合、マギだけで困らないようにシナリオの内容を組み立てることになります(異界の探索とか評議会ネタとか)。もしくは、思いきって天禀や法典のルールを無視してもいいと思います。
 逆のアプローチとして、本来コンパニオンが担当すべき社交や戦闘といった能力を、マギにもたせる手もあります。キャラクターの作成にいくらかの制約が生じますが、逆にそういった変な(?)マギをやりたい人にはチャンスかも。

 2)は王道。ただ先に述べたように、マギをやりたくて来た人にコンパニオンをやらせるのはちょっと…。PL募集時の説明の段階から、そうした形で組み立てる必要があります。
 魔法を使う楽しみが得られないかわりに、コンパニオンをシナリオの中心に持ってくるとよいと思います。その意味で、コンパニオンにのみ物語欠点を付与するという手がオススメです。

 3)は全員が魔法を楽しめつつバランスも取れるという欲張りな方法ですが、やはり重い!! こちらのシナリオで試みた方法ですが、私自身はもう結構です。失敗とは思いませんが、それでもお勧めはしません。

■キャラ作成

 キャラクターの作成にかかる時間は、慣れた人で30分(コンパニオン)〜1時間半(マギ)。ただこれは、全員の手元にルールブックやプレイエイドがあって、なおかつイメージが最初からある程度ある場合です。ましてルール初見の方ばかりの状況では、一から作成できるチャンスは皆無と思っていいでしょう。何らかの形でスキップする必要があります。

 #もっとも、キャラ作成自体は非常に楽しいので、時間さえあれば単発でも作成推奨です。事前に掲示板やチャットで作成できるとベスト。

 省力化の一つの手として、手前味噌ですが「作成済みキャラクター集」(マギ編/コンパニオン編)があります。ここから選択してもらう場合には、その日のシナリオへの適性を三段階くらいに区分けしておくと便利です。PLに複数の候補を出してもらって、その中で一番適合するものにするわけですね。

 もう一つの手は、美点欠点のパックをいくつか作っておき、そこから選択してもらう方法です。美点欠点の選択が一番時間のかかる工程ですから。
 同様に、定式呪文もパック化するとよいです。美点欠点に次いで時間を喰うのが、定式呪文のレパートリーづくりだからです。シナリオ中で役に立たない定式呪文を外す役割も兼ねて一石二鳥。
 美点欠点パックと定式呪文パックの組み合わせ、その上での技能と術法への経験値の手動割り振りで、時間を省いてわりと効率よく個性付けができます。

 また、もう少し別な方法もあります。美点欠点と技能からなるパックを作り、研究値のベース(【知性】+〈魔術理論〉+オーラ)を揃えておくか、もしくはキャラごとに予め計算して表示しておきます。その上で、定式呪文パックを選んでから、パック付随の術法最低値を満たすように、術法経験値を割り振ってもらうのです。これだと前案よりもさらにPLの負担が減ります。

■物語欠点と性格欠点

 なお、単発/連続のトピックとは必ずしもリンクしませんが、物語欠点とは「こういうシナリオやシチュエーションを出してくれ」という「PLからSGへ」の意思表示なわけです(やや作用は異なるものの性格欠点もそれに準じます)。しかし、予めシナリオを作成しておいて後でキャラクターをつくる場合には、このメカニズムは機能しません。

 そうしたときにはアプローチを真逆にして、キャラクターの設定を一部規定するハンドアウトという形で、物語欠点を「SGからPLに」与えるとよいでしょう。シナリオに確実に反映される上、コストまで無条件に稼げるのですから、PLも喜んでくれるはずです(^^;)

■研究/季節行動の有無

 最後に大きなトピックとして、季節単位の研究作業や長期イベントを盛り込むか否かがあります。

 レベルアップしない D&D でボードゲーム的要素が若干強まるように、研究しないアルス・マギカは普通のファンタジーRPGに少し近くなります。目立った違いは舞台設定と即興呪文くらい? その意味では、即興呪文を自由に使い回せるように、キャラクターの術法値は高めを奨めます。いずれにせよある程度の割り切りは必要でしょう。

 あえて研究作業を入れるとすれば、魔術物品の購入という形で擬似的にやるとか。また、期間短縮のハウスルールも選択肢の一つではあります。

 もちろん単発セッションでも、その中で時間経過が速ければ、正規の季節行動を運用することも不可能ではありません。「三年かけて龍退治の準備をする」といったシナリオがそうですね。こういった場合、研究作業の処理を専門に担当するサブマスターがいると効率がよさそうです。

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