段取り八分の仕事二分

case-1

プレイ:2004/07/11
レポート作成:2004/07/16

キャラクター(作成済みキャラ集より選択)

 ジョカス (ボニサグス派B
  自信満々な研究者。キャリア風を吹かせては、周囲のノンキャリアどもの反感を買っている。
  PL:goldkight氏

 ファビウス (フランボー派B
  破壊系のフランボー。一見クールな二枚目だが、而してその実態は…。
  PL:Czan氏

 エイボン (メルケーレ派B
  流派内では少数派の天稟持ち。傭兵上がりという変わり種の旅がらす。
  PL:関口屋氏

 ルシウス (メリニータ派B
  チェンジリングな幻術使い。絵筆を持たせても巧みで、片手間によく壁画を描く。
  PL:シリオン氏

作戦会議

 ターゲットであるドラゴンのデータを配って、さてプレイ開始。

 このままブレスなどを食らったらパルマや様式の値が全然足らないし、こちらから魔法をかけようにも敵の抵抗を抜くのは容易ではない、この事実を認識したPLたちは、なんとか戦わずに済ませられないかと考え始めた。ブレインストーミングとしてさまざまな案が飛び交う。いつのまにやらジョカスのPLが部屋のホワイトボードを持ち出して書き付けていたり。

 そうして出た結論は二つ。

■引っ越し案

 龍と交渉するなどして、コルシカからどこか別の場所に移ってもらう。

 魔法オーラがあるためにコルシカに居ついたのだから、転居先も魔法オーラのある場所を選びたい。
 さしあたってアフリカが有力? ただ、ベルベル人はどうなってもいいが(おいおい)、北岸のコヴナント"サンサロン"とかプレスター・ジョンとかと揉めたくはない。また、龍の生態がアフリカの気候に合うかどうかも謎。その辺の下調べが必要。
 また、龍に言葉が通じるか、交渉に応じる気があるのか不明。何を代価として提示するかも問題。さらに、邪眼をなんとかしないと、いいように丸め込まれてしまうだろう(下手をすれば「注文の多い料理店」)。いずれにせよ、ピレネーの方では一度追い出すのに成功しているわけだから、どうやったのか調べておきたい。

 なお、交渉にあたっては、呪文などで龍の判断能力を一瞬奪い、その瞬間に誓わせるなりする方法を用意。龍の人格特性「謎好き+3」につけこむ余地もある。

■縮小案

 回数は限られるが、ウィースで増幅すれば抵抗は抜ける。MuAnによってサイズを小さくすれば、龍の脅威は攻防ともにずっと小さくなる。うまくすれば、降伏させて手下にすることもできるかもしれない。縮小に成功するまでの防御は、主にルシウスの幻術で対応。また、ピレネーの件をはじめ、過去の退治事例を調べれば、弱点や手段などいろいろ参考になりそう。

 とりあえずこの二案を並行して進めながら情報を集めて、様子をみることになった。
 残り時間が3年12季節と限られているので、後になってあわてないようにと、プロジェクトの順番も考慮しながら予定表を作っていく。ホワイトボード大活躍で、「スケジュール帳がいりそう」とはPLの弁。

仕込み

 さて一年目(1223年)である。

■春

 縮小案のキモになる呪文は以下のとおり。

 “針の大きさの獣”
 Muto-Animal 25 R:接触/近距離 D:太陽/永続 T:個 焦点具:針(+2)
 対象の動物のサイズを4点減少させる。
(→サイズ+5の龍なら大柄な人間程度まで小さくなる)

 これを担当するのは我らが秀才ジョカスだが、いかな【知性】+5と〈魔術理論〉8を誇る彼でも、現在の研究値は29。これを一から編みだそうとしたら、25÷(29-25)=7季節かかってしまう。しかし、MutoもAnimalもそう高くない(5点)彼の場合、まずそれらを伸ばせば研究値が上昇し、開発期間が短くなる。そのため、まずはコヴナントの紀要書を読んでMutoを上げた。

 隠蔽の呪文を担当するルシウスも、事情は大して変わらない。PeIm25の呪文を編み出す予定なのだが、Imaginemに一点集中で振ってある彼の場合、Perdoは不釣り合いに低く、そちらの方が格段に伸ばしやすい(成長に必要な経験点は、値が高くなるほどたくさん必要になる)。ということで、同じく蔵書からPerdoを学習した。

 エイボンは、万が一のとき逃げ出すための足止めにと、龍を混乱させる呪文を開発。人間相手に同様の効果をもつReMe15“麻痺した意思の混乱”が定式呪文のレパートリーにあったので、それを元にしてAnimal版を作ろうというのだ。こういうのはルール的に「類似呪文」扱いになって、研究値にボーナスがもらえるのでお得である。夏に完成予定。

 さて、この季節の目玉はファビウスである。
 彼はコルシカ出身の弟子をジェノヴァに派遣して、難民やジェノヴァ総督から被災以来の経緯をヒアリングさせるとともに、自らは島の地形や龍の様子を調べようと、コヴナント"ハルコー"に赴いた。ハルコーは教団発足以来メルケーレ派の宗主座であり、全管区につながる“ヘルメスの門”と多数の赤帽士を擁して、教団の情報・物流の拠点となっているのだ。

 抜け目のないファビウスは、メルケーレ派のエイボンに頼んで、知り合いの女性の赤帽士に紹介状を書いてもらっていた。そして持ち前の美貌(と《ヴィーナスの祝福》)で籠絡"マイ・スイート・ハニー"は親身になって資料を漁り、コルシカ島の詳細な地図と、10年前(龍が飛来したとき)の記録を探し出してくれた。
 これによって、上陸に適した海岸なども判明したので、ようやく乗り込むのが現実味を帯びてきた。弟子の調査結果と合わせると、ジェノヴァにとっても龍は目の上のたんこぶだったらしい。何度か軍隊を派遣しているが、島に近づくや否や、飛んできた龍に炎を吹きかけられて、どうにもならなかった。今では定期的に牛や金子を(人身御供の人間が漕ぐ船で)差し出し、せめて対岸にまで来てくれるなと願っているそうだ。

 「本気じゃないから、遊びだから」というファビウスは、(ひどいことに)この"マイ・スイート・ハニー"に、プロヴァンス管区の女性の赤帽士へ宛てた紹介状を書かせている。惚れた弱みとはいえ、下手すると刺されますぜ。

■夏

 エイボンは春から続けていた混乱呪文の開発が、この季節いっぱいをもって完了。定式呪文のレパートリーに加わる。

 入れ替わりにルシウスが呪文開発にとりかかる。すでにレパートリーにあるPeIm10“不可視のヴェール”が類似呪文にあたるので、最初から研究値は37もあったのだが、惜しいことに25÷(37-25)=ぎりぎり3季節かかってしまう。ところが春にPerdoを2点伸ばしておいたので、夏には研究値が39になり、25÷(39-25)=2季節で開発できるようになった。秋に完成予定。

 ジョカスはさらに下準備を重ねる。コヴナントの蔵書にあったMuAn15“尋常ならざる大きさの獣”を修得したのだ。これはサイズを2点しか下げられない他は、研究予定の呪文と同様の効果をもっており、類似呪文として「踏み台」にするのを狙っている。

 出先のファビウスは、春に分かった事柄を赤帽士に託してコヴナントに報告しつつ、自らは隣のプロヴァンス管区まで足を伸ばした。目指すはフランボー派の宗主座であるドイセテップ。龍のいたピレネーはプロヴァンス管区の管轄であり、そこの龍対策となればドイセテップのマギたちが絡んでいる公算が高いと考えたためだ。"マイ・スイート・ハニー"が紹介してくれた赤帽士は、うまいことに現筆頭テルティウスに顔がきく人物で(ダイスが1-1-5の20なんだもんな)、甘いマスクのファビウスの言うままに引き合わせてくれた。
 テルティウスはファビウスと同じ破壊系フランボーで、宗主座をウァル・ネグラからこのドイセテップにもってきた辣腕の大魔術師だ。さすがに緊張するファビウスだったが、彼の推測は的中しており、周辺を荒らしていたドラゴンを追い出したのは、テルティウスの直弟子だという。高レベルのPeViで龍の実力値を減殺して屈服させ、管区外へ放逐したのだそうだ。

■秋

 ルシウスの呪文が完成。これをかけてあれば龍に見つかることはありえない。

 “不可視のヴェール ver.3”
 Perdo-Imaginem 25 R:接触/伸腕 D:太陽/年 T:個 焦点具:シダの種子(+1)
 対象の視覚・聴覚・嗅覚・味覚を抹消する。動いたりしても破れない。

 「なぜに味覚まで? 味見されたらその時点でもうダメでしょ?」などと言うなかれ。秘薬を利用した毒まんじゅう作戦の可能性もにらんでいるのだ。どのみち龍の鼻を逃れるためには20レベル超が必要なのだから、行きがけの駄賃である。

 ジョカスはさらにさらに下準備。春と同じく蔵書を読んで、今度はAnimalを上げている。どうせ数点の上乗せなのだから、思い切って実験することにしてしまえばこんな下積みはいらないのだが、余計な副作用がついたりする可能性を嫌ったらしい。

 ファビウスはドイセテップからバルセロナ経由で南下し、龍の古巣のピレネー山麓へ向かう。旅鴉の血が疼いたか、エイボンもコヴナントを出発し、船便でバルセロナへ到着。ファビウスと合流すると、付近で龍の情報収集にあたった。
 二人はここで面白いネタにぶつかった(ダイスで1-1-8…)。赤帽士の話によれば、龍は鱗のない腹に弱点を抱えており、それを自覚していたこのドラゴンは、ある街を脅して、鉄板の腹巻きを着けさせたのだという。さらにその線を追って、腹巻き作成にあたった職人を探し当てたところ、彼の話は実に胸のすくものだった。逆らえずとはいえ、こんなことをさせられるのがたいそうシャクだった彼は、龍にバレないようにして、胸の辺りに一ヶ所穴を空けておいたというのだ!

■冬

 ついにジョカスが呪文の開発に着手。一年がかりで、完成は翌年秋の見込み。

 ルシウスは何か思うところあってか、ふたたび蔵書からPerdoの学習。

 エイボンは同地に留まり、龍との謎かけのネタをくれる賢人や学者を捜してみた。しかし、なにぶん馴染みのない土地だけに(《旅慣れている》の適用外)難航し、思うような成果は上がらなかった。

 ファビウスはエイボンと別れて単身ローマ管区へ帰還。ハルコーに"マイ・スイート・ハニー"を訪ねて、過去に行われた龍退治の記録を片っ端から洗い、方法論を調べていった。PeAn(He)30“狩人は放つ死を招く矢”による狙撃、誘導呪物を通した超遠距離からの儀式呪文など、いろいろな例があるようだ。そもそも実力値40などまだ甘っちょろい方で、60、70に達する個体もあり、そのため周辺環境への作用という形をとって、間接的に魔法抵抗を回避したケースも見られた。

詰め

 二年目(1224年)。迷走気味だが、徐々に形になってきた。

■春

 ジョカスは研究室に引きこもり生活。PLの仕事とニアーで笑えない。早く出来上がるといいね。

 ルシウスは読書を続けながら、暇をみて(1季節に10日まではペナルティ無しで自由になる)コヴナント入口にフレスコ画を描き始める。テーマはファビウスが聞きつけてきた、フランボー派の龍退治。自分たちのが成功したら、連作にして並べるんだとか。

 ファビウスはハルコーで調査継続。半年も一緒にいられて彼女はさぞ嬉しかったでしょう。
 龍と交渉を試みた例を探してみると、初っぱなから贈り物をアピールしていくか、さもなければ姿を消すなりして龍の手出しできない状況を作り出した上でないと、対話は難しいようだった。なにしろ力に溢れて貪欲な獣なのだ。ただまあ、ラテン語が通じるのにはほっとした。
 また、交渉にかぎらず、ほとんどすべてのケースで、ReIgで耐火をつけたり、ReAnで結界を張ったりといった防御策を講じている。ルシウスのPeImがあるとはいえ、そうした保険も用意しておいた方がいいだろうか。

 バルセロナ逗留も半年になるエイボンは、昔取った杵柄で付近の傭兵たちへコンタクトをとってみた。ドラゴンと戦った様子を聞いたのだが、残念ながら大して得るものはなかった。吠え声一つで隊は離散、投石機もブレスの一吹きでオシャカとなれば、まったく勝負にならなかったようだ。

■夏

 ファビウスは一年ぶりにコヴナントへ帰還。いろいろ無知ぶりを知ったとかで、蔵書を読んで、〈組織知識(教団)〉の勉強をはじめる。

 ファビウスが戻り、自分の弟子を助手に回してくれたので、ジョカスは予定を繰り上げてこの季節に呪文を完成させることができた。持つべきものは良き朋かな。でもまだジョカスには次なる仕事が待っているのだ。毒まんじゅう造り。

 ルシウスは龍の立ち退き場所を打診しようと、北アフリカにある旧知のコヴナント"サンサロン"訪問を思い立った。翌月訪問の手紙を赤帽士に託すと、玄関の壁画を一気に仕上げ、旅の支度に余念がない。

 エイボンは一足先に、前線基地にする予定のコヴナント"ウェルディ"を下見に行った。ウェルディーティウス派宗主座であり、魔術工芸のメッカであるこのコヴナントは、うまいことに(?)コルシカ島直下のサルディニア島に位置しているのだ。北岸に立てば、コルシカ島は目と鼻の先である。
 そんな近くにドラゴンが住んでいるというのに、長のストリトゥスは屁とも思っていないようだ。彼に言わせれば、40レベルの“炉辺の守り”に加えて、青銅の巨人も巡回しており、サルディニア島は不沈空母なんだと。ともかく、決行時に間借りすることについては、問題なく許可をもらうことができた。

■秋

 ジョカスはまたまた下準備。蔵書でRegoを伸ばした。

 エイボンはウェルディとウィース交易に当たる。どのあたりが相場なのかそれとなくアタリをつけようとしたのだが、(どうにも出目が悪く)あまりいい率ではまとめられなかった。

 ルシウスとファビウスは、連れだってサンサロンへ向かう。赤帽士を通してアポ取りしてあったし、なによりルシウスはここの面々とは顔見知りだったから、暖かい歓迎の宴まで開いてくれた。外はシロッコが吹きつけていても、CrAq(Re)の水膜とPeIgの冷房が入ったコヴナント内は快適そのものだ。
 懸案のドラゴン受け入れについて、サンサロンは難色を示した。そうでなくとも、ここは野獣や幻獣が数多く徘徊し、これ以上の面倒はごめんだという。二人の説得にもかかわらず、彼らはとうとう首を縦には振らなかった。

 諦めた二人は、コヴナントの蔵書を見せてもらうことにした。古代カルタゴの遺失魔法を研究しているというこのコヴナントだが、まだ目立った成果は上がっていない。ただ、こうした未開の暑い環境にあるためか、今回の龍退治に使えそうな呪文もいくつか見受けられた。
 ReIg25“熱と炎に対する防護”に目をつけたルシウスは、コヴナントのメンツを思い浮かべて修得の可能性を検討した上で、これから時間をかけて術法を上げるよりはと、サンサロンのマギに、これを秘薬として作ってくれないかと持ちかけた。いくばくかの交渉の後、作成時に費やす(つもりらしい)ウィースはルシウスたちが供出すること、作成の代価として、サンサロン付近の獅子をファビウスが退治することで、話がまとまった。

 サンサロンのグロッグを借りて雄図出かけたファビウス。ライオンの群れを見つけた彼は、リーダーを潰せばどうということはあるまいと、PeAnをかけようとしたのだが…ボッチ! たてがみをちりちりにされて怒り狂ったライオンに追い回され、這々の体でサンサロンに逃げ帰る羽目になった。グロッグの何人かはあわれ喰われてしまったらしい。
 サンサロンの面々はさすがに鼻白んだが、ルシウスがポエニ戦争をテーマに描いた壁画が良い出来で、どうにか反故にならずに済んだ。秋の終わりには、4服分の耐火薬が手に入ったのである(熱ダメージを15点減点)。

■冬

 ジョカスは龍の判断力を奪うReAnの秘薬作りに着手。ファビウスが残していった弟子の手を借り、ウィースも7ポーン注ぎこんで気合い入れたので、レベル66の秘薬が2服出来上がった。これなら龍もイチコロだろう。あとはどうやって飲ませるかだが、これはジョカスの領分ではない。エイボンがうまくやってくれるはずだ。

 ウェルディに逗留するエイボンは、彼らの魔術工芸の腕に目をつけ、ブレスを完璧にシャットアウトする鎧を作ってもらうには、どのくらいの値(ここではウィース)を払えばよいのかと相談していた。しかし高位のウェルディーティウス派マギを数季節拘束するのは高くつき、材料費込みで70ポーンと言われては、さすがに払いきれる値段ではない。

 ルシウスとファビウスの二人はサンサロンを離れ、シチリアに残る、イタリア最後の妖精の宮廷を目指す。
 惑わしにひっかかったファビウスは森を延々さまよい歩く羽目になったが、流石メリニータ派のルシウスは心得があり、しかるべき作法に従って訪ないを告げると、客人として妖精王に謁見することができた。「龍にいたずらしたい奴はいないかい?」という誘いに飛びつく妖精はいなかったものの、サンサロンのマギが時折、贈り物と交換にドクツルタケを求めてくるという話を聞けた。なるほど、呪文書にあったPeAnの触媒か。
 絵と引き替えにファビウスを解放してもらうと、二人はサンサロンへ引き返し、赤帽士に頼んで本拠地へ手紙を送った。

だめ押し

 これが最後の三年目(1225年)。誰も作戦の全体像を把握していないのになぜか進んでいく。
 (プレイ時間がだいぶ押していたせいも大きいですけどね)。

■春

 サンサロンのマギたちと交渉の上、ファビウスが中心になって、PeAn(He)30“狩人は放つ死を招く矢”を秘薬として作成することに。ファビウス自身が修得/詠唱するよりも、一度に多数発射できる点を狙った。

 手紙で呼び出されたジョカスは、こちらも然るべき謝礼を払ってサンサロンの呪文書を見せてもらい、PeIg15“魔術師の冷たき手”を修得。冷気に弱い火龍の弱点を衝いた手法で、一旦抵抗を抜きさえすれば、毎ラウンド1段階ずつ耐久度を着実に奪っていく呪文になる。

 ルシウスはサンサロンとウィース交易にあたり、決戦時に大量の消費が予定されている種類を補充していく。

 コヴナントに戻ったエイボンは、手紙をみて弓兵の調達に回った。昔のつてをたどってあちこち回ってみるが、なにぶんコトがコトだけに、なかなか人が集まらない。めげずに頑張る。

■夏

 夏の終わりまでかかって、エイボンはようやく三人の射手を手に入れた。それぞれ達人とはいかないまでも、それなりの腕前をもち、びびっても龍の巨体を外すことはあるまいと思われた。

 ルシウスとジョカスはコヴナントへ帰還。以後冬まで図書館にこもり、来るべき決戦で必要になる術法(Ignem、Mutoなど)を磨いていく。

 ファビウスは"マイ・スイート・ハニー"と最後の逢瀬…ではなくて、ハルコーの記録から龍の好物について調べていった。やはりまずは光り物。二重底の宝石箱で騙くらかしたケースもあったようだ。それに肉。幼い子供の柔らかいのなどは特にお気に入りらしい。

■秋〜冬

 エイボンはファビウスの情報を受け、CrCo(Re)で容器内にかりそめの子供を育んだ。このぷっくらした可愛い(いかにもおいしそうな)子供は、心も魂も持たないし、容器の外に生まれたら一日で崩れてしまうが、エイボンの指示通りに動くはずだ。

 あとはひたすら、最後の追い込みとばかりに術法の研究に励む日々が続いた。

退治

 三年間の成果を整理した一行は、次のような段取りで向かった。

  1. 宝石箱を捧げ持った子供
    エイボンが作り上げたかりそめの子供。唯一姿を現していき、龍を誘い出して食べられる役割になる。
    この子の懐にジョカスの作ったReAn秘薬を潜ませて(ルシウスのPeIm呪文で隠蔽済み)、自爆テロを行う狙い。
  2. マギ四名
    ルシウスのPeIm呪文で隠蔽の上、サンサロンから譲り受けたReIgの耐火薬を各自服用。
    ルシウス自身はさらにReIm10“魔術師のサイドステップ”も重ねてある。
  3. 弓兵三名
    マギと同じくルシウスのPeImで隠蔽。
    各自クロスボウを携行し、子供が食べられたら、PeAn(He)の秘薬を矢に塗って射かけるように命じておく。

 さて、上陸した一行は、エイボンの動かす子供を目印に、その周辺に散開して進んでいった。

 やがて、匂いにひかれた龍が悠然と翼をうちながら飛んできた。龍は単身で宝石箱を掲げる子供に、さすがに不審を抱いた様子で、鼻をうごめかせて念入りに周囲の匂いを確認したが、おいしい子供の匂いしか嗅ぎ取れなかった(ルシウスの“不可視のヴェール ver.3”は、龍の鼻の感度を超えているのだ)。

 安心した龍はゆっくりと降下し、長い舌でぺろりとなめ回し、(エイボンの演じさせている)子供のおびえきった様子を楽しんだ。
 「どうしてそんなに大きなお口をしているの?」「それはね…お前を食べちゃうからだよっ!」
 ぺろりといったのが運の尽き、ジョカスの毒まんじゅうが効いて、龍は頭の中が真っ白になった。

 そこへ見えない矢が三本。いずれも的を外さずに龍に突き刺さる。ただの矢なら蚊の刺したくらいにしかならなかったろう。けれども、これには教団で長らく幻獣退治に使われてきた必殺の魔法がかかっていた。有り余る【体力】で即死判定こそ成功したものの、いずれも手傷を負った。

 次にファビウスの即興魔法。PeTeで腹巻きの留め具を壊し、ガランと落ちて龍の腹は丸裸に。
 さらにジョカスが命がけで龍に接触し(一度に使えるウィース数の上限で、射程拡大にまで回らなかったのだ)、突破力をウィースで上乗せしたMuAn“針の大きさの獣”をかける。見事抵抗を抜き、龍の巨体はみるまにしぼんでいった
(ちなみに持続もウィースで増幅して「永続」)。このうえ二刀を抜いたエイボンが斬りつけたので、もはや勝負あったと見えた。

 ルシウスが降伏を呼びかけたが、龍は自分に何が起こったのか、まだほとんど飲み込めていなかったに違いない。応とも否とも返ってこなかった。
 そこで、どれ、もう少し痛めつけてみるかと、ファビウスにやらせたのがまずかった。PeAnが効き過ぎて、最後の耐久度まで消してしまったのだ。やはりフランボーというべきか、密かに企んでいたドラゴンライダー計画が潰えて一行肩を落としたが、誰彼ともなく笑みはすみやかに戻ってきた。なにしろ目の前の死骸は、貴重な魔法資源の宝庫なのだ。さあ、持って帰って解体、解体。

 …

 ……

 ………

 なんだか一年目当初の計画とは全然違うような気がしますが、気のせいです。ええ。
 ともあれ、悪い龍は退治されて、めでたしめでたし。

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