楽士の呟き
2005年夏
6/12
テレビや新聞でも取り上げられていますが、大バッハの自筆楽譜がドイツで新たに発見されましたね。本の外観はこちら。さっそく録音も上がってきています(ニュースタイトルの下、青地の
Audio Extra をクリック!)
見つかった書庫にゆかりのアマーリエ王女ってたしか、バッハの次男が伴奏者として仕えたフリードリヒ大王の妹です。その縁でバッハの楽譜をたくさんコレクションしていたハズ。そう考えると(靴箱の中から出てきたという点をのぞけば^^;)けっこう納得のいく話かも。
あと、2005年夏の名句として Errare Humanum Est
を取り上げましたが、そういえば『ギア・アンティーク・ルネッサンス』もわりとこういう精神のシステムでしたなあ。
失敗を繰り返しながらもポジティブに行動してゆくキャラクターが一番「強い」というのが、このゲームの設計思想ですから。(サプリメント『エンドレス・エナジー』より、デザイナーの伏見健二さん)
積極的な行動がなにより良い結果を呼びこんでくれるというのは、デビュー以来ここまでの私の実感でもあります。失敗から学ぶということだけでなく、有為の人材というものは、活性度の高い人間のところに自然と寄ってきてくれるものですし。
6/19
そうそう、バッハといえば先日も、業界紙にこんな論文が載りまして。
『平均律クラヴィーア曲集』表紙の唐草模様には、バッハ秘伝の調律法が隠されていた!
見るからに「と」な説ですが、しかし一抹の可能性を捨てきれないのは、それがバッハだからです。だいたいが18世紀の音楽というものは、同時代の哲学者ライプニッツが「(音楽とは)魂が知らずしらずのうちに数を数えること」と言っているように、〈自由学科
/ Artes Liberales〉の一分野としての伝統を受け継いでいます。ですから、曲に数秘学っぽい象徴表現が織りこまれるのは日常茶飯事。中でもバッハはそれが顕著でして、「奴なら下手するとやりかねんぞ」と。
論より証拠で一例ご紹介しましょうか。(以下、礒山雅『J.S.バッハ』より)
象徴がじっさいどのように使われるかを、わかりやすい例をとって調べてみよう。《ミサ曲ロ短調》に含まれる〈グローリア〉の冒頭部分は、次のような歌詞をもっている。
いと高きところにいます神にのみ栄光あれ。
また地にては、善意の人々に平和あれ。
まずわれわれは、金管(三本のトランペットにティンパニが加わる)と木管、弦の三つのグループが、三拍子で、ニ長調の三和音を輝かしく奏しはじめるのを聴く。この氾濫する「三」は、神を数で象徴するものにほかならない。なぜならば、キリスト教の唯一神は、「父」と「子」と「聖霊」の三つの位格をあわせもつ「三位一体」として規定されるからである。
こうしてひとしきり、神の栄光の讃美がくりひろげられる。しかしちょうど100小節目にたどりつくと音楽はぴたりと静まり、調性はニ長調から、ト長調へと下ってゆく。活発に動いていた通奏低音も鎮まって、「地には平和を」の音楽が、しめやかに流れる。
それまでの三拍子は、ここで四拍子に変わる。なぜなら、四は方位(東西南北)や元素、気質等の数として、地球・人間・現世を象徴するからである。トランペット(神の栄光を表現するのにふさわしい楽器として、バッハの楽譜ではつねにいちばん高いところに置かれている)も響きをやめ、声部の総数は、しばし14となる。これは、平和を願う人々のひとりに、ほかならぬバッハがいることを示すと解釈できよう。
(引用者付記:バッハの名前の綴りを数字に直して足す
B(2)+A(1)+C(3)+H(8) と14)
旧約聖書、詩篇の第100篇が「全地よ、主に向かって喜びの声をあげよ」ではじまっていることを、ここに付け加えるべきだろうか? 第100小節における印象深い転換に接すると、その背後に、「全地よ」(ルター訳を直訳すれば「すべての世界よ」)という呼びかけをもつ詩篇への連想があると考えたい気持ちにかられる。
自筆譜などの資料を隅々まで精査し、こうした「お約束」を踏まえて解読していかないと、まったくとんちんかんな演奏になってしまいます。ある程度の定まった伝統や規範がありつつも、一人一人自分しか使わない表象語彙があったりもして。マギたちが他人の呪文書を読むときと一緒ね(^^;)
6/28
↑の調律法ですが、百見は一聴にしかずということで、とりあえず試してみました。試し斬りの相手はもちろん、この暗号が書かれていた(と主張されている)『平均律クラヴィーア曲集』。(余談ですが、この『平均律〜』ってのは、日本ではもう定訳になっちゃってますが、その実、完璧な誤訳です。Wohltemperierte
すなわち『美しい調律の〜』が正しい。一昔前まで平均律以外の調律法が遺失呪文扱いだったために、こんな誤訳が定着してしまったのです)。
で、弾いてみたところ、#系♭系ともに深部まで潜っていっても平然としていられる、しんかい2000のような調律でした。その副産物として、多くの調律法が苦手とする#系浅めの短調にも強いです。
ただ一方で、これまた多くの調律法がもっとも輝かしい響きを与えてくれるイ長調とニ長調が、この調律法ではわりと濁ります(五度圏サークル書いて理論面から考えても、この組み立てでは綺麗になるはずがない)。そしてなにより、全部の調性がわりとのっぺり似たり寄ったりの感じになって、それがかえってつまらない印象も。
結論から言って、私だったら、普段の演奏会には使いませんね。まともな曲を弾くかぎり、これより格段に美しく響くブレンドをいくらでも組めますから。思うにこれは、特殊用途向けなのです。つまり、24調の調性宇宙を制覇した史上初の曲集である『平均律クラヴィーア曲集』、この曲集を全曲通して弾くとなったら、私はこれを有力な選択肢として考えるでしょう。
…ということは、見かけほど「と」でもないのか??
8/7
一ヶ月以上も放置プレイで、訪れてくださった方々には申し訳ありませんでしたm(_
_)m
6月末から7月いっぱいは、
- 師匠とチェンバロ二重奏の演奏会
- 大学で即興演奏や装飾法などを実演
- オルガンでイタリア最古の印刷鍵盤曲集(1517年)の演奏
- 格安の夜行バスを使った0泊3日の弾丸ツアーで
Ars
Ludorum のサガに参加
- 東京から Czan さんを招いてサガ・フォッソルのセッション(あとでプレイレポートなど上げるつもり)
- お店の駐車場に停めて買い物に出ていたあいだに、飲酒運転のオヤジに突っこまれて車が中破
- 喧々囂々の交渉でもぎとった代車に、楽器と共演者を乗せて山梨まで片道350km。かろうじて間に合う。
エトセトラエトセトラ、とにかくバタバタしてまして(ぜいぜい。 8月のうちに態勢立て直せたらいいなあ。
8/16
わたくしRegulusは、ある時はチェンバロ弾き、ある時はマギ、而してその正体は…
Robotic Electronic Guardian Used for Learning and Ultimate Sabotage
(学習用 兼 最終破壊工作用
電子護衛ロボ)
フォッソルの面々だと、アグリッパが面白かったですねぇ。
Artificial General Replicant Intended for Peacekeeping and Potential Assassination
(平和維持と将来の暗殺に向けた
人造総合複製人間)
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