楽士の呟き

2003年夏

6/1

 ホームページの開設については、思い立っては見送るというのを水面下で繰り返してきました。他の仕事との兼ね合い(優先順位)からいって、そこまで手が回らないだろうと考え、自重していたのです。
 いまでもその状況は変わっていないのですが、ペースや間口を慎重に絞っておけば何とかなるんじゃないかと思えるようになりまして、とうとう開設に踏み切ってしまいました。さて捌ききれますかどうか。

 もっとも、開設とはいっても、元からあったトループ内の連絡用ファイルをリファインしたにすぎません。一般の方々の閲覧に耐えうる体裁をととのえはしましたが、今後も重心は相当程度そこにあるわけで、とりたてて広く宣伝するつもりはありません。たいして力を割いてお迎えできるわけでもなし、縁のあった方がひょいと訪ねてきてくださればそれで十分です。

6/16

 二台目の楽器を買いました。ガンダム風に言うと、こんな感じ。

 ああ、ゲルググに飽きたってわけじゃない。「性に合わない」ってギャンに乗り換えた上官のお下がりでね、新兵だったオレはこいつに育ててもらったようなものさ。丹念に手を入れて、オレ様専用にカスタマイズしたしな。これからだって乗っていくとも。
 だがね、当面は地上勤務、それも水中戦ときた。ゲルググじゃ水に入れねぇ。仕方ねえから技術部に頼んで、アッガイを一機回してもらったんだ。乗ってみると水陸両用モビルスーツってのは便利でよ。なんせ単独でゲリラ戦ができんだ。
 でさ、この春に司令部に行ったら機体のコンペやってて、そこにあったんだ。ズゴックE。さすが最新鋭、反応がゲルググ以上に敏感だぜ。こいつに乗っていけば、MSパイロットとしてもっと先が見える気がする。もちろん水にも入れるしよ。今週末の配備が待ちきれねぇぜ。

 ええ、ジャーマンに飽きたってわけじゃありません。「性に合わない」ってフレンチに買い換えた姉弟子から下取りしたもので、初心者だった私はこの楽器に育ててもらったようなものです。爪の材質を変えてメスで削ったり、鹿革で磨いたりと、自分の手で丹念に整備してきましたしね。これからも弾いていきますとも。
 ですが、ここ半年は伴奏の仕事が主、それも狭い教会でです。大型のジャーマンではスペース的に入れません。仕方ないので八王子の工房に頼んで、ヴァージナル(=小型/六角形のチェンバロ)をレンタルしてもらっていました。使ってみると小型の楽器というのは便利なものでして。なにせ自分一人で楽に持ち運べるのです。
 で、この春コンクールに行ったら楽器の展示会やってまして、そこにあったんですよ。D工房のスピネット(=小型/斜め弦)。さすがは当代きっての名工、反応がうちのより遙かに敏感でした。この楽器を弾いていけば、チェンバロ奏者としての腕も上がるでしょう。もちろん一人で持ち歩けますし。今週末の納品が楽しみです。

7/1

 後になって気がついたのですが、↑の楽器がうちに来たのはちょうど夏至前夜のことでした。そのまた前の日には、ファレル役のおやぶんさんとソーン役のもりあみさんの間にお子さんが産まれましたし、めでたいこと続きです(^^)

 そういえば、数日前に地元の中国庭園で演奏したのですが、そこで面白いものを見ました。庭の池に「瞑想館」という建物があって(リンク先の二枚目の写真)、それがあの奇天烈なデザインのソーン研究室そっくり!!
 さすがバブル期に富豪が作らせた(後に市が買い上げ)ものだけあります。もちろん中にも入ってみました。なかなかに奇妙な空間で、巡っていたら目眩がしそうになりましたよ。

7/6

 来月、モンテヴェルディのオペラ『ポッペアの戴冠』をやります。悪女ポッペアがバカ殿ネロをたぶらかし、邪魔者をことごとく消して、見事皇后にまで成り上がりめでたしめでたしという"勧悪懲善"の物語。こんなストーリーを喜ぶ17世紀のヴェネツィア貴族、ひねてますねぇ…。
 舞台は古代ローマ、ネロ帝の治世ということで、埋もれし書物に書いた『クオ・ワディス』と重なります(厳密には『ポッペア』の方が数年前のセッティング)。個人的には、主人公のネロやポッペアよりも、哲学者セネカの神々しい死に様の方につい目が…。彼の自殺の場面の直後に、いちゃつく若者のデュエット、さらには死を喜ぶネロたちの快活な歌でたたみかけるなど、醒めた視線の台本も冴えています。

7/14

 『ポッペア』の話のつづき。
 このオペラには、オットーネという登場人物(男性)がいます。後のいわゆるオトー帝ですが、この時はまだ廷臣にすぎず、ポッペアに未練たらたらの元恋人という役回り。
 で、今回の公演では、彼の役をアルトの女性が演じます。まあこれ自体は、バロックオペラの蘇演ではままあること。本人も「自分は女子校出でタチ役だったからノープロブレム」とか言ってましたし。
 しかしここで立ちはだかる難関が。劇中にはこのオットーネが女装するシーンがあります(暗殺のための偽装として)。つまり、オットーネ役の彼女は、そこで普段どおり女物の服を着るのではイカンのです。男性が女装するときの心理を表現しなくては。……ガンバってください。

7/23

 先だってのサークル例会では、『ポッペア』のプロットを『ウエストサイドストーリー』ばりに拝借して、"ヴァンパイア:ザ・マスカレード"をプレイしました。百円ショップで仕入れた造花の薔薇をテーブルに飾り、血の契り用にトマトジュースも完備です。
 PCは二人で、セネカの弟子のトレメールと、オットーネの親友のトレアドールという立ち位置。原作とちがってSTが愛の神ではなかったので、deus ex machinaな介入は起こらず、オッターヴィアと結ぶことを選んだ彼らは見事ポッペアの暗殺に成功。ついでにネロまで殺してしまいましたが。

 そういえば、前回埋もれし書物に追加した『オクシタニア』の他に、カタリ派ものの小説というと、ジェイムズ・カウアン『吟遊詩人マルカブリュの恋』があります。ひたすら地味な作品なので、人によっては読むのが大変かもしれませんが…。
 マルカブリュをはじめ、ドイツのフォーゲルヴァイデとか、アルス・マギカの時代の歌のCDもいくらかは出ています。そのうちそれらの紹介記事も書いてみますかね。

8/1

 ふと思い立ちまして、Phil J Tollinton氏の Fight Simulator Program を使って、サガ"フォッソル"のアゼルセベリノを戦わせてみました。
 一万勝負デスマッチをやらせたところ、セベリノの 3620勝 6380敗。イニシアティブ値が同じなので間合いの取り合いは互角ですが、攻撃値が相手の防御値より2点低いセベリノはそうそうアゼルに当てられません(防御重視のロングソードの宿命)。対するアゼルは、一旦イニシアティブに勝って懐に潜りこめば、セベリノに間合いのペナルティが大きくつくため、その一撃が決定打になります。これはスタイルの相性からくる結果とでも言えましょうか。
 ただ、これは二人がともに徒歩の場合で、セベリノが本来あるべき姿(馬にまたがる)になれば、実に 9156勝 844敗と圧倒的です。馬上の騎士強し。まぁアゼルもアゼルで、不意討ちが彼のスタイルなわけですから、一概には言えません。

 デルストレーゴの塔の“漂う羽の贈り物”を書いていて思い出したのですが、ピサの斜塔で例の実験をしたガリレイ、彼の父親はなかなかのディレッタントで、趣味で書いたリュート曲などが現在まで残っています。当時のイタリアでは、家長の長男が弟妹を養う習慣だったので、金持ちの家なら次男以下はわりと遊んで暮らせたとか。羨ましい(^^;)

8/20

 借りているのも含めて、今うちにはチェンバロが三台あります。それぞれ個性がありまして、この曲を弾くならこの楽器が映えるとか、いろいろ使い分けているわけです。
 しかし、演奏会でよりよい音色を提供しようと思えば、やっておきたい手入れはいろいろあり、とにかく常にかまってやらないといけない。それが三台もあるともう大変(>_<)
 それに、いかに楽器が三台あっても、弾く人間は一人しかいないわけで…。武田信玄なんかは奥さんを四人だか五人だか抱えていたそうですが、いったいどうやって全員を満足させていたのだろうと思う今日この頃です。

 最近とみに忙しくて手が回らず、今回の更新は二年半前に作ったコンベンション用キャラ集でお茶を濁しました。当時は、バッハの平均律クラヴィーア曲集(24のプレリュードとフーガ)になぞらえて、"24のプレジェネレイテッド・キャラクター"なんぞと洒落ていたものです。
 アップしたつもりだった原語/訳語対応表が無いことに、今になってようやく気づきまして、ファイルを入れ替えました。ジオシティーズはなぜにcsvのアップロード許可してくれないものか。そのくせxlsはいいなんて、よう分からんです。

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