楽士の呟き

2004年冬

12/14

 とうとう第五版出ましたね。第四版の八年の集積と、二年がかりの念入りなテストプレイを上手にフィードバックして、期待以上の素晴らしい出来映えです(詳しくは速報の方をどうぞ)。うちのトループでは、23日に第四版の遊び納めをやって、新年から第五版にシフトする予定です。

 デザイナーの David Chart 氏が10月22日付の日本日記に、「物語をつくるのを手助けするツール」という方向性を書いておられて、新版にはそれが色濃く反映されています。ルールシステムはあくまでも道具でしかないですから、手にした人の工夫次第で使い方はいくらもありましょう。けれども、設計者の頭の中でどんな使い方が想定されていたかという情報は、自分なりの活かし方を見つけていくにあたって、把握しておく価値があります。この辺、楽譜と演奏の関係と同じ。

 さすがに今回の更新は大がかりでしたし、クリスマス〜年明けにかけて演奏会が三本続き、正月返上で練習しないとまずい気配ですので、しばらく更新滞ると思います。訪れてくださっていた皆様、相済みませんm(_ _)m 年内にもう一回くらい更新できるといいなぁ…。

12/26

 TRPGのルールブックに負けず劣らず、楽譜の値段は高いです。今年一年間に買った楽譜は全部で60冊・260,465円也。三百年前の古文書の複製ですから、まぁ無理もないですけど、こっちは只でさえ金が無いのに。こういうときばっかりは、音大の図書館にアクセスできる人が羨ましい。

 年内の演奏会は昨日で最後です。パーセルの『夕べの祈り』で一年の無事を感謝して閉じました。
 イギリスのオルフェウスと呼ばれたパーセルですが、彼の歌曲は一緒に弾いていてとても気疲れします。音楽より言葉が優先するので、歌詞の片言隻句に至るまで、ニュアンスに神経張ってないといけません。おまけに、"shall"は頭の子音の立ち上がりが遅いとか、"exceling"は語尾を飲み込むのに時間がかかるとか、そういう発音に起因する微妙なタイミングのズレにもぴったりついていく必要がありますしね。もうふらふら。

 年明け早々の10日にヘビーな演奏会が待っているので、受験生みたくそれが終わるまで私には正月来ませんが、みなさんは良いお年をお迎えください。

1/3

 felix sit annus novus.
 例によってラテン語であけおめ。一年の計は元旦にありと申しますから、年初から一発、大風呂敷を広げてみました。「全美点解説に挑んでみる!」(*1)。需要はあると思いますし、一度にドバッと書いてもいいんですが、やっぱり得意の亀ペースでいくつもりです(*2)。5版基本ルールに載っている美点欠点は、たしか全部で300くらいあったはずですから、これで当分は更新のネタに事欠きませんな。ふっふっふ。

(*1) 実はイトーさんの「全魔法解説に挑んでみる!」のパクリだったり。
(*2) いっそ、
しぐれさん帝国日報みたく、毎日一個連載なんて出来たら良かったのですが、無理せず不定期連載ということで。

1/11

 昨日はガンバソナタを中心に据えたオール・バッハ・プログラムでした。成人の日で、なおかつ雪模様でもありましたから、そんなにお客様はいらっしゃらないだろうと思っていたのですが、蓋を開けてみたら予測の倍の150人を越える人出、満員で入場をお断りせざるをえないほどでした。いったいどこから湧いて出たのやら(失礼!)、共演のチェリストと二人して首をひねったものです。

 広いホールで舞台と客席に距離があるなら取るに足らない人数でも、250平米のスタジオにすし詰めの聴衆というのは相当な迫力で、思わず何ともないところでトチる始末。聴き手にビビって音を外す音楽家なんて、血をみて震える剣士と同じで、洒落にもなりません。やれやれ。

あの雨のそぼ降る春の日、見知らぬ人からの電話。
「チェロのNですが、チェンバロのRegulus先生を…」
先生なんて呼ばれる身ではないから、正直面食らった。

その日のうちに合わせた途端、たちまち腕を認めあう。
ともに大病をした身であること、ともに抱く青雲の志。
歳も近くて、これを同志と言わずに何と言おう?

あれから九ヶ月。
畑は違っても、若さゆえの柔軟性でおおらかに身を乗り出して、
互いにずいぶんいろいろなことを教えあい、また学びあった。
自分と似て非なる存在を、相手の裡に見いだしたから。

昨日を最後に東京へ行ってしまっても、
友情は永遠に変わらない。
士別れて三日、刮目して相待つべし。
また会う日には、そう言って微笑み交わせるように。

1/23

 聞いてやろう、宣伝相の悩み

 みなで歌おう、独逸青少年團歡迎の歌(北原白秋作詞&高階哲夫作曲)

  (東方千年帝国協会さんの傑作フラッシュです)

1/29

 クリーアモン派面々入れ墨って消せるんでしょうか…?

2/6

 ここ一年ほどの間に遊んだフリーのゲームから、オススメをピックアップ。

 The Battle for Wesnoth

キング・オブ・キングスと、初代マスター・オブ・モンスターズと、ファイアーエムブレム、これらを足して三で割ったような、良質のシミュレーションゲームです。とにかくバランスが良く、この出来でフリーとは驚き!
不利な夜は退き、昼を待って騎兵突撃かけるHorseman、ZOCをすりぬけバックスタブかますRogue、槍や剣の効かないスケルトンを撲殺するHeavy Infantryman、などなど。燃えます。

 Dark Lord's Saga 3rd

やはり優れたゲームバランスが売り。グラフィックやサウンドから、カード名やフレーバーテキストまで、全体の雰囲気もきわめてクールです。熱心なプレイテスターのコミュニティがあると、こうしたゲームのデザインにどれほどプラスになるか、よく分かります。

 御神楽

フリーのシミュレーションRPG自作ツール"SRC"のシナリオ。上記二作に比べるとゲーム的な面は落ちますが、なんといっても機体改造と機密漏洩度のシステムがアツイ。オープニングのアニメーションもえらくセンスいいです。

2/17

 このごろヴァイオリンのN氏やトラヴェルソ(=バロック時代のフルート)のM嬢と一緒にやるステージが多く、プライベートでも時々N氏の安アパートに集まってダベっています。このアパートがまた築20年・二間で家賃17,000円という年季物で、雪国にあって素晴らしい低気密・低断熱を誇っているのですが、それはさておき。

 このあいだもホットプレートでお好み焼きをつつきながら喋ってましたら、調性の話になりまして。

  M嬢:「色合いで感じるんですよ。変ホ長調だと緑な感じ」

  N氏:「おぅ、分かる分かる。俺も変ホ長調は緑だよ」

  M嬢:「でもNさんの見ている緑と、私の見ている緑って、同じとは限らないんですよねぇ」

   (なにやら哲学の認識論っぽいことになってしばし混迷)

  Reg:「僕は色だと分からんですね。そうでなくて、ハ長調だと澄みきった光の下の静けさとか、
      ト長調だと温かな明るさで、ニ長調は正午の日差し、イ長調は生気みなぎる輝きってな感じ」

  N氏:「明度と澄度、それにエネルギーって軸なわけ?」

  Reg:「ええ。あと、鍵盤の調律をおぼえる過程で調性を自覚していったクチだから、
     キルンベルガーの響きが根っこになってますね。それに他の調律法の印象を
     加味した感じ。たとえばミーントーンのハ長調がもつ絶対的な清澄さは…」

  N氏:「でもまあ、たしかに楽器のしがらみはあるかもしれないねぇ。
     ヴァイオリンはニ長調だと、開放弦いっぱい使えて良く鳴るしさ」

  M嬢:「ワタシもニ長調がいいです(←トラヴェルソはD管)」

  N氏:「そういえば、馴染みの曲で感じるのってない? 変ホ長調は英雄とか(←オケのコンマス)」

  Reg:「僕の感じだと変ホ長調は典雅明晰で、英雄じゃないなぁ。でもそれがレパートリーの違いですか」

 そんなこんなで、得物による視点の差がなんとも面白いんです。TRPGのパーティーでもきっと酒場では、ファイターやらクレリックやらが、それぞれの立ち位置からあれやこれや言い合ってるハズ。それが一人では決して得られない実になるのです。

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