楽士の呟き2005年春3/8 日常的に人前で演奏している身でも、実力を100%発揮するのは簡単ではありません。ですから、実力を60%しか出せないのであれば、6掛けで100に達するように、170の実力を用意するのです。兄弟子の言葉を借りれば、ステージにかけるのは、朝の起き抜けに寝ぼけながらでも弾ける曲が適当。ぎりぎりいっぱいの曲は負荷がかかると破綻しやすいですからね。 要するに、準備をしっかりしておけるほど、加速度的に出来が向上するわけ。そのためには適切なスケジューリングが不可欠で、最近の私みたいにたくさん仕事を請け負いすぎて、ちぎっては投げの自転車操業に陥るのは自分の首を絞めているようなものです。 3/27ソプラノのK嬢、トラヴェルソのM嬢、ヴァイオリンのN氏、それにチェンバロの私というメンツで、小さな演奏旅行をしてきました。ワンボックスカーに楽器と人間四人を積み込みまして、弾いて、喋って、食べて、の旅。曇りなく幸せで、あるいは私の二十代で最良の数日間だったかもしれません。J君と私と弟と、三人してふざけながら鉄拳2で明かしたあの夜が、十代にしかありえない時間だったように。 今回は、車ごとフェリーに載せて、佐渡島にも渡りました。朱鷺の羽根はそれはそれは美しい薄紅色でした。あれでプレクトラム(*)を作ったら、どんなにか綺麗でしょう?
ところで、N氏は地元の大学オケのOBなのですが、かのオケには伝統があるそうで。港を出てしばらくしたころを見計らって、真顔で新入部員に、 4/12今月頭の演奏会では久しぶりにアドリブ全開で飛ばしてきました。本来私は派手に個人技かますよりも、アンサンブルの全体に目配りしつつ、共演者の持ち味を引き出していく方が好きですし、また実際得意でもありますが、たまには一人で弾くのもいいものです。 半年前と同じ曲をプログラムに入れたのですが、久しぶりに弾いてみましたら、前回思いもしなかった新しいアイディアが次々と湧いて出て、自分でも次に何が出てくるか楽しみでしかたがありません。それに、先月くらいから実感があるのですが、音楽が確実に大きくなっています。以前はどんなにせかせか小者っぽい演奏だったことか。実際、テンポも1割から2割遅くなっています。半年前の録音を聞くと、脈拍がおかしいとしか思えません。それだけ生き急いでいたのかも? なんにせよ、いまが伸び盛りです。願わくは、死ぬまで変わりつづける、(他人にとっても自分にとっても)目の離せない奏者でありますように。 4/18 昨日の演奏会を最後に、リーダーを務めて仲間と一年半やってきたバンド(?)を、しばらく休むことにしました。 ---- 興ざめな話ではありますが、アンサンブルは、純粋な音楽とは関係のない、人対人の立場や力関係が影響する部分が案外あります。雇われの外人部隊として入るときには基本的に発言権はなく、雇い主の注文に従わないといけませんし、目上の方と一緒になればどうしても、無茶や冒険はしづらいもの。 よき仲間たちに恵まれて、こんなに幸せなことはありません。個人の仕事がたくさん入ったりしてスケジュール的にあまりにキツくなってしまったために、バンドとしての頻繁な公演はしばらく控えることにしたのですが、年明けにその決心をしてからも、何度となく迷いました。こんな得がたい場を離れていいものか、寂しくなるなぁ、と。 そして、これも実感。
美文にして真理です。また私たちの場合これは双方向に成り立って、私の方からも、K嬢のオペラ団の会場の手配をしたり、N氏の合奏団に賛助出演したり。自分の仕事のことだけ考えれば余計な時間と手間かもしれませんが、でも全然苦になりません。友の力になりたいから。 それをプロにとって甘さだと言うなら、プロなどクソ食らえ! ---- 5/30
というわけで、行ってまいりました。木霊す声で「修学旅行」って言ってたのはコレね。 上のページはまだ三分の一くらいしかないですが、これから順次足していきます。収穫を整理して自分の中に定着させないことには、なんのために行ってきたか分かりませんから。 [戻る] |