楽士の呟き

2004年夏

6/1

 かねてより字数制限などで問題のあった掲示板を、とうとう新しいものに替えました。探してみると品のいいものがあれこれ公開されており、美を愛する者としてこれなんか特にお気に入りなんですが、他のページとのデザインの統一感も無視できず、この選択になったものです。ブラウザ依存の問題もありましたしね。ともあれ、お気軽に書きこみくださいませ。

6/6

 今日のプログラムはダウランド。みーやさんによる的確な人物評をちょっと引用してみましょう。

彼の歌曲は哀愁に満ちたものが多いです。作品のスタイルとしてはカンツォーネぽかったり、パヴァーヌぽかったりと、リズムは多彩なのですけど、・・・一貫して、歌詞が暗い!(^^;。悲哀に満ち、人生に失望しています。しかも、悲しみの中に浸り込んだ、一種の陶酔感さえ見て取れるという。ダメだこりゃな人生です。それ程までに女王のリュート奏者の地位が欲しかったのか・・・。可哀想と涙を誘う。いや、それよりも呆れる・・・。歌詞だけ読んでいると、自殺した中学生の日記を読んでいる気がしてくるのです。

 うんうん。そういうダメダメなとこがいいんですよ。歌詞も大好き。
 私が彼を知ったのは高校生のころでした。中学時代はまじめで健全なバッハとともにあったので、徳やら人生やらを諦めて自分の世界に引きこもり、ひたすらに憂いの美を奏でるダウランドの姿はちょっとショックで。音楽の女神を暗に指したリュートソング、『ぼくは見た、あの人が泣くのを/I saw my Lady weep』はまさしく絶品です。

6/13

 二十歳近くまで漫画は読みませんでした。別に誰に止められていたわけでもなくって、単に活字が好きで好きでしょうがなかったのね。だから漫画を読みはじめたきっかけも活字の本から。かつてハヤカワ文庫FTがカバーのイラストに少女漫画家をいろいろ投入した時期があったらしく。フィリス・アイゼンシュタイン『妖魔の騎士』の下巻表紙に描かれたギルドラムをみて、「ほぅ、これは綺麗だ。画家は? めるへんめーかー? 漫画描いてるのか。見てみたいもんだ」とまあ、そんな経緯で。

 ですから私は、漫画に関してはいまだ面食いです。ストーリーテリングの手腕は当然ですが、同時に絵柄も綺麗でないと。その両面を高いレベルで満たしていたのが、1990年前後のわかつきめぐみ。"白い"と評される画面が素晴らしい。
 最近の私的ヒットは、藤田貴美の『ご主人様に甘いりんごのお菓子』かな。川原泉もそうですが、普段がどうあれ、やろうと思えばこういう美しい絵を完璧に描ける技術力があるのね。

6/20

 今回更新のアルス・マギカ時代の音楽の稿で、ダンスリー合奏団に触れてますが、彼らの演奏を初めて聴いたのも、やっぱり↑のダウランドと同じ、高校生のころでした。特にディスクの最後に収められた、作者不詳の"黒い雨"。

 あれから十年といえば、私も歳をとるわけです。でも、そのぶん力もつけました。あのころはチェンバロなんて触わったこともありませんでしたが、それがこうして演奏活動しているわけですからね。
 憧れに向かって歩みつつあるのは、もちろん私だけではありません。同輩のH嬢(リコーダー)やM嬢(ガンバ)は、今では他ならぬダンスリーのメンバーになっています。彼女たちとは、毎年夏の講習会で顔を合わせて、即席のアンサンブルを組むのが恒例になっているのですが、腕前の釣り合った合奏のなんと楽しいことか。相方のミスを心配してフォローに気を回しておく必要などなく、自分のインスピレーションを存分に解放して、遠慮なく音の対話ができるのです。今年はそれぞれどんなふうに成長しているでしょう? こういう仲間がいると、普段の修業にも張り合いがあるってものです。

6/27

 よく言われることですが。テュータルス派の紋章って、ドリームキャストの逆回りなんですよね。確かにまぁ、いろんな意味でドリームキャストな連中ですけど。

 あと、

三つの指輪は空の下なるエルフの王に、
七つの指輪は岩の館のドワーフの君に、
九つは死すべき運命の人の子に、
一つは暗き御座の冥王のため、
影横たわるモルドールの国に。

 …なんか抜けてませんか? そう、「五つ」がないですね。五つの指輪はウェルディーティウスの左手に。コレです(HoHを元に作成した流派一覧をご覧あれ)。

7/1

 おかげさまで一周年のべ 3,500hit に感謝いたします。
 ちょうどAmazon.comに大量注文してあったサプリも届きましたし、これであと十年は戦える....

7/4

 どうも毎年、夏至の前後だけは身体のリズムが朝型になります。夜明けとともに目覚める健康的な生活。で、7月半ばになるといつもの夜型に戻るんです。この不思議。

 そういや、アルス・マギカの line developer である David Chart氏は、このごろセーラームーンに萌えておられるようです。もう4〜5年前になりましょうか、先代の Damelon氏がポケモンにハマったときにも、「次のサプリは Ars Pokemon だろう。魔法レギオーでポケモンをゲットするんだ」とかいうジョークが流行ったものですが。

7/18

 繁華街中央の地下通路でゲリラ的なライブを企んでいます。チェンバロのストリートミュージシャンはたぶん前代未聞。管轄の国道事務所に申請中ですが、さて許可が下りますかどうか。(ゴスペルや弦楽なら無許可でやっても、警察が来たら逃げればいいのかもしれないけど、チェンバロ担いで逃げるのでは荷重による移動力低下で絶対捕まる^^;)

 今週のびっくりはピアノでマリオ(※動画8MB)。演奏者と編曲者の凄腕に脱帽です。やっぱピアノって表現力あるなぁ。私らの世代の共通言語だし、これ大道芸でやればコインざっくざくでしょう。羨ましい。

7/25

 半年がかりでようやく自動車学校を卒業しました。さすがに仕事をしながらだとキツかった…(学生の方、今のうちにとっておいた方がいいですよ)。今年の前半はこの足かせがあったせいで、フルパワー稼働しているのに鍵盤に向かう時間は大幅減という、泣きたくなるような状態でした。でも、これでやっと解放されます。そして、自分で楽器が運べる!

 終わってみての感想ですが、運転免許の教習カリキュラムってえらく洗練されているんですね。驚きました。学科の教本はどこからかじってもちゃんと分かるように作ってあるし、理詰めで多彩。技能の方も漸次進捗で、規定時間重ねるといつの間にか乗れるようになっていました。さすが全国で無数の取得者に教育しているだけあります。フィードバックのシステムがしっかりしているんでしょう。
 ただ参ったのは学科の講義。やれ○行目に線引けだの、マークしろだの、まるで中学校の授業です。教本に書いてあることは読めば分かるんですから、書いてないことを教えてくれい。

8/1

 ストリートライブはあっさり許可出ました。おひねり入れの鍋は(防犯上)置いちゃいかんと言われてしまったので、現金収入は見込めませんが、それでも宣伝にはなるでしょう。俺の歌を聴けーってな感じで8月22日、おっしゃ発進ゴー!

8/8

 オルガンの音色の一つに、ヴォクス・フマーナ(Vox Humana)というものがあります。文字通り「人間の声」を模したパイプ列ですが、実態は共鳴体を工夫したリード管であり、あくまでも「言われてみればそんなふうにも聞こえるか」という程度のものです。まぁそれでも、中世の自由七科以来の伝統では、器楽は声楽の下位に位置づけられる存在ですから、歴代のビルダーたちは創意工夫でもって人の声を目指したんですな。

 さて、先日兄弟子から聞いた怪談(というか伝説)を一つ。
 ちょうど大バッハの亡くなった頃、ドイツのある街にオルガン職人がいました。彼は由緒ある教会からオルガン建造の依頼を受け、これは名誉なことだと張り切って仕事にとりかかったのでした。
 ところが、心魂傾けた仕事にもかかわらず、このヴォクス・フマーナがどうしても思うような音色になりません。ここのオルガンは私の代表作になるはずなのに、なぜだ、どこが悪いんだ、ああ、納期がせまってくる☆×■◎※△!!

 そこで彼はどうしたか。悪魔と取引したのです。
 自らの血と魂を売って、悪魔から秘密の合金を受け取りました。それを材料にパイプを作ったところ、ヴォクス・フマーナはパイプから血をたらたらと流しながら正真正銘の人の声で歌い出したのです。コラールを弾けば、まさしく四声体の合唱となりました。
 こうして彼の執念は実を結んだのでした。そのオルガンは今でも血を流して人の声で歌い、録音したCDも出ているそうです。聴きたいような、聴きたくないような。

8/16

 オペラ『ポッペアの戴冠』をやってから、今日でもう丸一年になります。月日の経つのは早いものです。
 自らもドゥルシッラ役を歌いつつ、愉快な面々をまとめてあの大作をプロデュースしたK嬢は、大言壮語をしない控えめな人柄ながら、要所要所を常にしっかり押さえていて、彼女でなければとても公演まで漕ぎつけられなかったに違いありません。この1月末には突発性難聴に罹って片耳の聴力を失うという大変な不幸に見舞われましたが、それで自棄になったりせずに歌い続け、このごろは来年夏の企画に精力的に取り組んでいます(今度の演目はモーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』)。

 貴女に心からの敬意を。この腕が役に立つときがあれば、

わたしを呼んでくれますか? きっとまいります。どんなことをしていても、ほうり出して馳せ参じます。

 (P.A.マキリップ『妖女サイベルの呼び声』より、サールのコーレン)

8/22

 今日はストーリーライブの日。Veni, Vidi, Vici(来た見た勝った)。
 そして疲れた。六時間演奏は並大抵じゃありません。みなさんもバードに歌わせすぎないように

[戻る]