(以下、キャペに渡したハンドアウトそのままです) コヴナントからデュランス川をさかのぼること丸1日、カヴァイヨンからカドネ城へと続く街道沿いにオルゴンという小さな街があります。キャペはそこを治める荘園領主です。 キャペ卿の生家は、パリに近い北フランスのシャンパーニュ地方に広大な所領をもつ有力貴族です。本来ならキャペもその一族として、フランス王の宮廷に侍るはずでしたが、家の都合でとんでもない運命を背負うことになってしまったのです。 しかし…遠いノヴゴロド共和国へ送る手筈を調えていたところ、時の国王であったフィリップ尊厳王が屋敷を訪れたのです。フィリップ王は気まぐれを起こしてこの珍獣をほしがりました。廷臣である父に、それを拒むことができたでしょうか? しかし、約束を反故にされたハスキー犬は怒りました。 祝福なのか呪いなのか、以後キャペは満月の夜にハスキー犬に変身してしまうようになりました。当然、そんな者がいるとなっては恥さらし、一族の者たちはキャペを忌み嫌い、早くから騎士の道を外して大学に追いやりました。もっとも、キャペ本人にとっては、大学でアリストテレスの動物誌を研究した毎日は、まさに天国だったようですが。 あれから20年。老いた父親は亡くなり、長兄のオーギュスタンが家督を継ぎました。南フランスにはびこるカタリ派という異端に対して十字軍が発令され、それに便乗したフィリップ王は南部諸侯を攻略しています。戦いの趨勢は国王の勝利に傾きつつあり、参陣した長兄も領地をいくつも奪いとりました。 [戻る] |