コヴナント
■学び舎
〈魔術理論〉は、普通にマギとして暮らしていく分には、現世を去るころ7〜8点になるくらいのペースで問題ありません。呪付などでもちょこちょこと経験点をもらえますから、特別なことをしなくとも十分足りるでしょう。
しかし、一流の研究者になろうとすれば、事情は異なります。ここでいう一流とは、現行の理論の発展に貢献できる程度、ぶっちゃけ
WGRE の基礎研究(Original Research)ルールに耐えられるだけのスペックの持ち主ということです。そうしたクラスで求められる〈魔術理論〉は少なくとも15。この値、術法のスケールに直すと75(経験点1425)に相当するといえば、その凄まじさがお分かりいただけるかと思います。
さて、〈魔術理論〉をふくむ知識を伸ばそうというとき、最初に考えられるのが読書です。といって、自分の著書を読んでも勉強になりませんから、他の人と文通ということになります。当時、文通相手が多いのは、学者として評価が高いという勲章でした(言葉を交わしても得るところのない低レベルの学者を相手に、誰がわざわざ貴重な時間と紙を費やそうと思うでしょうか)。
ところが、実際のルールを検討してみると、これが案外難しいです。まず、対象読者の制約のため、紀要書や対話篇は現実的ではありません。基本ルールだと残るは専修書(要するに論文)ですが、文通サークル全体の人数(=著作回数の上限)が、向上速度に負けないほど多くないといけません。WGREにある注釈書(Comentary)のルールを採用すれば何とかなりそうですが、それでもそれだけつきあいが多いとなかなか大変(いや、えてして現実社会もそんなものかもしれませんけど)。
ただ、文通は、共同研究に進展しうる点は評価できます。類似呪文をつくっておいてもらったり、該当分野の権威から意見を仰いだり(呪付物の調査はもちろん、私がSGなら制約術法の緩和とか基礎研究における洞察とかも認めます)できるわけです。理学系でなく工学系というか、理論の発展より実用方面に進みたい方にはお勧めです。
かといって、訓練や議論では教師の数値が天井になってしまうし、ウィース研究は実質的に稽古扱いで能率が悪い。さあ困りました。
しかし、ここに一筋の光があります。幸せの青い鳥はすぐそばに。「同じコヴナントで切磋琢磨する学友」がそれです!
ある程度の素養をもつ二人の学友に恵まれれば、
1) 一人が対話篇を執筆する。
2)
次の季節から三人で代わる代わる教師役を務めて「輪読会」(ルール的には講義)をする。
というサイクルが期待できます。
こうした講義の場合には、「教師の点数が生徒より高くなくてはならない」という制約がないのです。三人とも【知性】+2、【交渉】±0、〈著述〉4、〈講義〉4と仮定すると、書き上がる対話篇の品質が10、講義の学習値が11となって、全員が毎年6点ずつの経験点を得られます。元手が時間だけで、しかも外部に依存しないため、長期的に安定して続けられるのが大きいです。このペースなら20年で〈魔術理論〉が15に達しますから、上々といえるのではないでしょうか。
……と、ここまで前置き(←長い)。
ともに〈魔術理論〉の研鑽を積み、大きな研究業績を上げようと夢見る研究者たちのコヴナントって、いかがでしょう? 寄宿生活を送り、ゼミを開いたり、成果を共有したりして、刺激を与えあうのです。
何を、なぜ研究するのか、そこをうまく設定することが鍵になりそうです。地道な研究の日々(基礎研究の過程で煮つまって、洞察を得ようとあちこち当たるとか、意見の相違から学友のあいだで諍いが起きるとか)、そしてついに成果が実ったときに、それをめぐってマギ社会に大きな波紋が広がることまで視野に入れれば……ボニサグス派の成果共有義務が絡んだりして、きっと面白いサガになりますよ。NPCとして出して、PCのコヴナントを巻きこんでやるのもグッドです。
■裏の仕事
魔法という絶大な力をもちながら俗世不干渉の規定に縛られ、またドミニオンを避けて研究環境を確保する面からも、多くのコヴナントは人里離れた場所で隠遁生活をおくります。けれども、人の世にまぎれて生きていくことを選んだコヴナントもあり、彼らを演じるのもおもしろいでしょう。その際には、いわゆる「世を忍ぶ仮の姿」を考えるとうまくいきます。
特殊な職人集団として浮き世をわたり、裏では教団に属するなんてのが王道。その特殊技能をマギの得意分野に結びつけるのです。中世には、常軌を逸した高度な技術は悪魔との取引や聖人の奇蹟に帰着させられ、そうした伝説は現在まで数多く残っていますから、そのあたりに取材するのもいいですね。
- 《聖建築/sacred architecture》(Mysteries所収)でゴシック聖堂の建築家。大聖堂の建築ラッシュだった当時は、一揃えの職人たちがグループをつくっては各所を巡回し、世代交代すら挟みつつ長い時間をかけて、天まで届く塔を建てました。
- 秘伝の釉薬(=Imaginemの秘薬)を用いる、華やかな陶磁器の職人たち。西洋の陶器の歴史は12世紀ころのイベリア半島のムスリムたちに始まるんだそうで、1220年の伝承ヨーロッパでは驚異の技術です。
- カロリングの工房ゆかりの刀匠。錬金術系の結社"Line
of Carolinus"はイェルビトン派の傍流で、《魔法鍛冶/magesmith》(WGRE所収)を魔術団にもたらしたのは彼らです。ゾーリンゲンとかダマスクスに住むとそれらしいですね。名剣デュランダルを鍛えてみませんか?
- 画家には、本人が自覚しているかどうかは別として、本質を見抜く心眼がありそう。あるいは金属細工師とか、ステンドグラスの名人とか。ウェルディーティウス派にした場合、投射具が絵筆に、魔術物品が絵になりましょうか。売るときにはゲーテの取引をしませう。
また、アルス・マギカとしては少し邪道かもしれませんが、ファンタジックなトーンのサガなら、
- 月光を、清流を、春風を糸にする織り姫。心獣が蜘蛛のビョルネール派でキマリ。
- 思い出を精製する香り屋(亡き人の香水使ふたびに減る)
- 絶望している人のところへひょっこり現れて、「希望を吹きこむ猫」を渡して歩く貸猫屋。"猫"は
MuAn(Me) の秘薬か何かで昇仙させます^^;
- 客の望む夢をひととき見せる夢売り。R:視線のCrMe呪文ですが、サガのテーマによっては、秘薬にして麻薬っぽくしてみることも。
などなど。いろいろ遊べます。
■ラピュータ計画
ラピュタはかつて恐るべき科学力で天空にあり、全地上を支配した恐怖の帝国だったのだ
白色彗星帝国でも可。世界征服をたくらみ、空に浮かぶ城を密かに建造します。巨大な魔術物品に見立てて、強力な効果をいくつも仕込んでいく、その過程をサガとして楽しみましょう。もちろん機が熟するまで、管区の他の連中に勘づかれちゃいけません。
- ReTe30で天空に浮かぶ(一応「呪付物自身に影響」なので、呪付レベルはこれの半分で済みます)。
- 必要に応じてCrAu(Pe,Vi)の特殊な嵐を展開して防御。目視や接近をはばむだけでなく、揚陸部隊の飛行呪文を消滅させ、パルマ・マギカも吹っ飛ばす。
- ウィースで突破力を上乗せして力任せに突破してこようとする敵の呪文(特にテレポート)、これを防ぐ対策。高レベルの“炉辺の守り”はもちろん、それに重ねてこちらもウィース増幅のReVi秘薬で魔法抵抗を張ります。
- 地上爆撃兵器。CrIgの超巨大砲とか、CrAuの雷電装置とか。
- ウェルディーティウス派の自動人形/Automata技術("Mysteries"所収)でロボット兵を配備。
- PeTeによる「滅びの言葉」も備えませう。良い言葉に力を与えるには悪い言葉も必要です^^;
などなど。ああ、莫大な呪付スペースは、中枢に巨大な宝石を据えて稼ぎます。
で、完成の暁にはこんな手順で。
- 敵しうる唯一の存在は魔術団。宗主座ドゥレンマールの上空を急襲し、「見るがいい、ラピュタの雷を!」。
- 攻めてくるフランボー派の連中をたたき落として「人がゴミのようだ」。
- 魔術団を黙らせた後ではじめて、俗世の制圧に着手します。まずは手始めに神聖ローマ皇帝フリードリヒ二世の居城あたり。ちょいと脅せばすぐ降伏するでしょう。それとも教皇庁を先にする方がスマートかしらん。
あの…わかってると思いますが、ネタですんでひとつ…。
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