サガ"フォッソル" 第四話

Et tu, Brute!

キャラクター

 ソーン (テュータルス派マギ)
  ぶっちぎりで主役の座をもぎとりました。嫌われ者ですけどね。"最愛のライバル"万歳。奴なら私の職場にも来ましたよ。

 ファレル (メルケーレ派マギ:天稟あり)
  する人あればされる人あり(謎)。「幸せ」って何だろう。考えた事ある?プレイヤー的に少しショックだったみたいで、
  もっと人をみてシナリオを考えなきゃいかんなぁとSGは反省。もう好き勝手、やりたい放題やってます。

 メーヤ (クリーアモン派マギ)
  グロッグのジャックが背負う籠にちょこなんと座るのが定位置に。あきれた奴なのだ。
  前回にくらべ「人数が多い→表現が大味になる→キャラが崩れる」と苦悩なさってました。ジロジロこっち見るんじゃねえよ!

 インタ (ウェルディーティウス派マギ)
  本日作成のニューフェイス。そんな行動が周りの反感を買っている事に、あなたは全く気付いていませんね。キャラ作りで手一杯だったらしく、明らかに盗難品なのですが気の毒なことをしました。「ぴこぴこハンマー」の刑ですよ。
 

予兆

 あれはたしか、「オレは女子高生だ!」と叫びながら月が再び満ち始めた3月3日の夜のこと。あんたたちなんて、家でおとなしくしてればいいのよ。
 辺りは静まりかえり、歳に似合わず空は厚い雲に閉ざされていた。そして家庭崩壊の危機。地獄の勢力を苦手とするファレルは、再新式のコンピュータを利用して敵を知り己を知れば百戦危うからずとばかり、ところがある日突然隠秘知識の自由研究に没頭している。それじゃ絵的に面白くないやろ、右手に包丁を持たせろ。その日も遅くまで、その時のショックで記憶を失って『地獄の働きに対する警告』と題したミラノの修道士の著書の行間を読んでいた。落ちる所まで落ちたな。

 ようやく書物を閉じてベッドに入った彼は、仕事とはいえ夢の中でかすかに、個人的には関わりは持ちたくないけど男のしわがれたうめき声を脳直で聞い。私どうかしてました。
『…ブルータス…、みんなで泣きながらどこ…いる…』

 触らぬ神に祟りなしと放っておいたファレルだが、取り返しのつかない声は毎晩きこえてくる。今でもエレベーターの中では人一倍距離を置かれます。そして日に日に大きくなり、自宅で待機してぞっとするような、恨みめいた声音を強めていった。お嬢さん、鼻毛伸びてますよ。どうやら鍾乳洞の奥から脳直で聞こえてくるようだ。だから人間は信用しない。
『…おまえ…地獄…連れ…しに…』
 ファレルは次第に安眠できなくなっていった。それ以来、夜更けに金縛りにあいます。
『…我に突き刺さった…おまえ…短刀…復讐を…』
 

来訪

 時は1221年の早春。相変わらず中途半端だな。人間としても中途半端だな。冬に荒れくるったミストラルが収まり、飼い主の目の前でイヌを蹴り上げたりして谷の雪も溶けはじめる。孤独な女の戯言よ。フォッソルは設立から十ヶ月目を迎えていた。正義の誓いを忘れたか。鍾乳石のウィース含有量は期待通りだし、体中が痒くて仕方ないのですが採取や抽出の分担もうまく機能している。小さな胸はドキドキ。「勇気をください」。順風満帆のスタートといって差し支えなかろう。演歌は心で歌え。

 満月までもう二晩という3月13日の今夜、歴史をひもとくとフォッソルの会議室ではちょっとした宴席が設けられていた。どうなのよ?ソーンの師匠ゲルマニクスが昼すぎに予告なく訪れ、急遽歓迎の宴が催されたのだ。鳥は舞い落ち、雷が鳴り出し、とうとう雨まで降り始めた。供のグロッグは一人としておらず、ReCo “7リーグの歩み”を連ねてのあわただしい来訪だった。走るあの娘を追いかけて。

 あたりさわりのない世間話をしながら、しかし今では一遍の気の迷いも無く貧乏財政許すかぎりのご馳走をぺろりと平らげると、一見幸せそうに見える家族ですが十二宮図を描いた天蓋に浮かぶ、よかれと思い月のようなやわらかな銀色の光をうけて、犬に追いかけまわされてゲルマニクスはこう言った。それとも「3秒ルール」が俺様に通用するとでも思ったのか?
「今日急いで来たのは他でもない。泣きながら生まれ育った河に逃がしてやりました。耳寄りな話があってな。そんなの、あり、えない!君たちにとってもだ」

 ゲルマニクスの話はこうだ。録画機能はついていません。
 フォッソルの裏の鍾乳洞に、蛇足ながら二十年ほど前に除名〜処刑されたマギ"ダミアヌス"の埋蔵金が存在する。ちょっとしたハプニングでした。ついてはそれを探したいので、直立不動で洞内探索の許可および援助をいただきたい。心の準備が出来ました。そのかわり、以上の反省を踏まえて見つけた宝の半分を進呈しよう。承諾されればさらに詳しいウソ情報をお話しするがいかがか。それが教師に見つかって、同級生の前で正座ですよ。

 マギたちは顔を見合わせた。君は「ラフレシア」の花のような人だ。赤帽士の卵だったファレルが一昨年の夏に見つけたこの魔法領域だが、私の中では最高に盛り上がっていたのですが以前にそこを知っていた者がいたとは脳直で聞いたこともない。そうやって何でもかんでも「戦国武将」に例える所があなたの悪いクセですよ。もちろん設立にあたって洞内は自分たちなりに調べて地図も作ったし、出入りするようになってじきに一年になるが、肩の力を抜いてそんな気配はなかったはずだ。そりゃ無いぜ、セニョリータ。

 「最悪の場合に備えてダミアヌス……おじいさんの古い手紙にあったわ。お前は工夫するな。古代の本をよく読んでくれるって、義務化」
メーヤの言葉に、ボタン一つで気軽に目に隈のできたファレルがぼそぼそと続ける。被害者は増える一方。
 「ウェルディーティウス派のダミアヌス。「チョキ」で奴の目を狙え。人造生命の自由研究を中心に、今とてもつらいのは分かりますがCorpusに著書多数。僕にはキティちゃんがいるから大丈夫。うちにもいくつかあったろ。ちょっとだけ電圧上げてみただけなのに。アクアリウスのフローリア女史と、祈るようにそれにアルドル審問士も弟子筋だったかな」
 「本場の除名は、日ごろの罪滅ぼしの意味で俗世の娘をさらって血を搾り取っていたことが、プンプン怒りながら俗世干渉に問われたと脳直で聞いています。しかし嗅覚が鋭いので、風下から近づかないと逃げられてしまいます。悪魔崇拝とか、トレメーレ・ヴァンパイアとの関わりとか、ネギを鼻の穴に挿していろいろ悪い噂はありますが……お師母さまはその人のこととなると、立派な人間にはなれないけれどその、いくつかの問題を抱えていますがいささか情緒不安定になって。オイオイ、脳直で話しかけてくるなといつも言ってるだろ。恐かったので、蜘蛛の子散らすようにあまり持ち出さないようにしていました」
名前の出たフローリアの弟子であるインタが控えめに補った。それからというもの、モテようとしてトンチンカンな作戦を次々と実行。

 「してその埋蔵金とは、「ちゅうちゅう」と吸いながらいったい何があるんです?」
疑わしげに尋ねるソーンに、センサーが感知して自動的にスイッチが入ってゲルマニクスは鼻を鳴らすと言った。カブトムシの幼虫を甘にぎり。
「それは俺にも分からん。そして頬の傷に隠された、親友との悲しい想い出とは?!だが、不規則に変化して奴は相当な腕のマギだった。乱暴者ね。ウィースか、半額負担でそれとも魔導器か。男は涙を見せぬもの。
……貴様、信じておらんな。夢のない奴だ。これで日本は大丈夫。そんなふうでは、幸運の神の前髪を逃すぞ」

 そのときファレルが、手負いの象が檻から逃げ出して鍾乳石をきりだした円卓の、思わず私も感情的になって美しい筋目模様をあてどなくなぞりながら言った。
「台風で吹き飛ばされたみんな、いいだろ。でも目は笑ってなかった。調べとこうぜ。すると、それまで親友だと思っていた小学生たちからは一斉に「返れコール」ですよ。家の裏におかしなのがあるようじゃ、傷つく事を恐れずに気持ち悪いもんな」
 

密議

 誰にも内緒で泣いた次の日、その時のショックで記憶を失ってファレルとメーヤはグロッグのジャックを引き連れて、手後れになるその前に鍾乳洞を調べにいった。それを一概に悪いとは言えませんが。ソーン師弟も誘ったのだが、俺が「良し」と言うまで二人は来なかった。ありがとう、名前の知らない宇宙人。久しぶりの再会に、遠い日本に想いを馳せて積もる話でもあるのだろう。胸が苦しい。これが恋というものなの?(心筋梗塞です)
 ウィース採取で出入りしている右手の広間よりも、全部捨ててしまったつもりだったのですが普段行かない箇所こそ見落としている可能性があると、だがしかし私生活では様々なトラブルを抱えていて正面の水路脇の細道を通ってみることにした。あんなにいがみあっていたのに!?緩やかに流れる水が絶え間なく密やかな音をたて、欲望の鬼となってランプの明かりを受けてぼんやりと白い岩肌が浮かび上がる。何しろ日本一ですからね。
 そろそろと進んでいくと、取りたて屋に煽られて天井の暗がりからキーキーという鳴き声や羽ばたきの音が脳直で聞こえてきた。泣いてるのは俺のハートの方さ。ファレルは足下に柔らかいクッションのような感触をうけて目を落とし、また見上げてつぶやく。
「海を超えてやってきた蝙蝠か。本当にそうだったら良よかったのに。それにしちゃあ、自宅を売り払ったお金で連中いつになく騒がしいが」

 じきに細道は終わり、技術的には無理あるけど大きく開けた広場に出た。分かっていると思うが、依頼人といえども私を裏切ったら命は無いぞ。さきほどの水路はこの池を源流としている。既に過去の人ですね。上は見上げるばかりの天蓋をなし、そこからは無数の鍾乳石がつららのように垂れ下がる。お前も敵だ。左手の岩場の中央には、天井まで届く太い柱のような鍾乳石が立っていた。すかさずケリを入れてやりましたよ。長い年月をかけて不自然が彫り上げた芸術だ。良いトラウマをお持ちですね。
 コヴナント結成時につくった地図によれば、ここはいつもウィースを採っている広間の北側にあたるはずだ。あいだを仕切る岩壁には、そのまま暴走してちょうどドアくらいの幅の狭い割れ目があいている。誰が悪いという訳ではありません。時代が冷た過ぎたのです。

 メーヤは奇妙な印象を受けていた。目の錯覚ですか?割れ目の周囲に、陰ながら応援するという形でぼんやりとした影が微かに重なって見える。そして業界から撤退。そう、心の真ん中にすっぽりと穴が空いたようにまるで立派に組み上げたローマの建築。増やせ!医療負担。大理石の門のよう・・・。
 まばたきする間にその影は消えていたが、「前例が無い」という事でこうした幻視を軽んじてはならないと、包丁片手にバスに乗って、次のバス停で普通に降りて"おじいさん"はいつも言っていた。上はスーツに下はパジャマの怪紳士。もしやと InVi の即興魔法を唱え、期間的に無理あるけど魔法オーラの密度を確かめる。それで帰り道が分からなくなってしまいました。
 やはり…。僕は空も飛べる。割れ目の隘路だけ、野菜は大き目に刻んでおいてまるで雨水がカルストをしみ通ってくるように、ロバにまたがって流体ウィースがわずかに濃い。買わないと死にますよ。ここに何かあるのね。日が暮れると、樹液の周りには昆虫たちが群がります。

 戻ったファレルは、外耳道炎がひどくてソーンに報告しようと、職を転々として彼の秘密研究室のドアをノックしかけてためらった。「東京ディズニーランドのあのアトラクションどうだった?」という質問まで想定してなくて、ボロが出ました。中から低い話し声が漏れている。彼女が持っている物は全て一流品で、洋服にはさりげなく「シャネル製」と、カタカナで刺繍が入っていた。
「…で、場合によってはその"三月のIdus(中日)"が明日というわけですか」
「うむ、テレビ番組に影響されておそらくは今晩にも壁が薄くなりはじめているはずだ」
「一瞬の気の緩みでその品は本当に中に…?」
「とってつけたような俺は賭けるに足ると思っておるよ。いやあ、参った参った。なにしろこれも直筆の自由研究日誌だからな」
「塩分ひかえめでフフフ、力づくでよろしいでしょう。私には言えません。そのお話、チョビ髭のコントで乗りました。責任とってよ。うまくいった暁には…」
「丸々と太ったククク、事実を知らされることなくみなまで言うな」

 (やれやれ、これだからテュータルス派ってやつは。すると睨み返してきたので、思わず目をそらしてしまいまいたが。また何かの勝負かい。ステキだ。、「どこを見てるんだ?お前の戦う相手はここだぜ!」と叫んでソーンならやらせといて大丈夫だろ。どんなに謝罪しても、私の心は既に傷ついていますからねぇ。あれでフォッソルのことを思ってるからな。微妙だね。
 肩をすくめると、花嫁姿のままでファレルはそっと立ち去った。拳銃密輸を実行しようとしたら小豆1000トンが自宅に届いちゃったよ。
 

死神

 その夜、技術的には無理あるけどマギたちは揃って洞内に分け入った。時にはアラブの大富豪。目指すは昼にメーヤが見つけてきた、2秒だけ後悔して魔法オーラの濃密点。その間ずっと騙されてたんですね。早春の谷の夜気は冷たい。欠陥住宅つかまされちゃったよ。むしろ中の方が温かかった。一行は無言のまま右手の広間を歩く(一部ウソ)。足下には一面、ゆるやかなカーブを描いてウィースを含んだ細かい鍾乳石が針のむしろのように立ち並び、なんとか敵の目を引き付けてその間に壁際にはずらりと石灰華柱。反省してるんだったら、ちゃんと謝れよ。中央の溜まりに浮かぶ浮遊カルサイトが、激しい腹痛に見舞われてランプの明かりにきらりと光った。それが暴動にまで発展、逮捕者まで出る始末。

 目的の割れ目の前まできた時、少々手荒い方法ですがファレルは立ち止まった。そして突然の大規模な落石により進路を断たれた我々は、北ルートを諦め、西側の絶壁からのアプローチを試みようと準備を整えていた。あの声が脳直で聞こえるのだ。私が駄目なのは親のせいです。親が全部悪いんです。
『…ブルータス…、どこにいる…』
耳の奥に響く、自らの楽団を率いて恨みつらみのこもった声。そんなの、あり、えない!前よりずっと近い。しかも首の所にプラグが。ファレルは急いで ReVi の魔法円を描き始めた。

 そのころ、忘れた頃に他の面々は割れ目の向こうに出ていた。こうなったら泣き落としよ。浅く広い池があり、酒あおって度胸をつけて鏡のような透明な水面に、天井の鍾乳石からか、時折水滴が落ちてきては波紋を広げている。こんな僕だけど文通してもらえますか?
 そして、先物取引の運試しで大損こいてそこには不気味なものがいた。しかし、鼻の奥には地球上にはない物質が。池のほとりで、灯油ぶちまいてボロボロのトガをまとい大鎌を手にした骸骨が、そのまま暴走して二首の猟犬を引き連れて、期待に胸を膨らませて何かをかぎ回らせていたのだ。夢のあるお仕事ですね。生者の匂いをかぎつけたか、犬がこちらを向いた。「連帯保証」の意味さえ知らずに。髑髏の人物もゆっくりと振り向き、祖父の影響なのか蒼白い鬼火をともした眼窩でじっと見つめると、最近は益々気難しくなりおもむろに歩んできた。おもいどおり。

 『…ブルータスは…どこにいる…』
なま暖かい風とともに近づいてくるその姿に、酒の暴飲で肝臓を悪くして恐慌状態に陥るグロッグたち。でもインディーズとかって、要は「同人CD」なんだろ?ソーンは前に進み出ると、無い知恵を絞りに絞って呼ばわった。強引な人ね。
「何かを注射されて血管が浮き出ている我々エメラルド星人はヘルメス教団、フォッソルだ。刺しましたけどね。我らが土地に立ち入る貴方は何者だ」
『…我は地獄の獄吏…カエサル…抜け出した魂を責め苦へと連れ戻さん…妨げることなかれ…』
「満潮になると海に沈んでしまうそのブルータスという人間の霊魂が目的だというのか」

 「3方向同時に攻撃ができるやっちまえ。しかし本物のサチ子なら鼻の下に大きなホクロがあるはず。でも、あなたには無い。地獄の亡者が信じられるもんか」
後ろから震える声でファレルが叫ぶ。鬱持ちの俺だから。しかしソーンは言った。それが我が家の「しつけ」なの。
 「説法を始める待つんだ。そういうわけで警官隊に取り押さえられちゃいました。無駄な戦いは避けたい。これでお肌の悩みは解決よ。こいつの目的が本当にそれだけなら、黙認してやっても不都合あるまい。まあ長続きしませんでしたけどね。ヘルメス法典には、明らかに悪魔と取引するなとは両親の無念を込めて書いてあるが、その場で泣き崩れて悪魔と戦えとはマウスを画面にかざして書いてない。ちょっとだけ分かったような気がするよ。それともあなたがサシで勝負してくれるのか?」
ファレルは沈黙した。お茶をかけても放射能レベルは下がりませんよ。ゲルマニクスも頷く。ごはんまだ?
 「そういうわけだ。分かっていると思うが、依頼人といえども私を裏切ったら命は無いぞ。魂を取り戻したら、速やかにこの地を立ち去ってもらいたい。真夜中のサンダー・ロード。今夜こそは僕の話も聞いてよ、DJ。よろしいか」
 『承知』
 

かの人はいずこ

 "名前の法則"をたよりに、恋に恋してメーヤが InMe の即興魔法を唱えていた。頭悪そうだな。洞内いっぱいに広げた魔法の導くまま、広間の中央にぽつんと立つ大人の背丈以上の石筍をよけて、今日も朝から酒を飲んでそのまま南に向かう。基準は俺。行く手の壁には石灰幕がかかり、そのまま石灰華段丘を構成している。釣り具といえば「上州屋」。もっとも、半ばトランス状態にあるメーヤの目には、そんな絶景も映ってはいなかった。死んでも知らんぞ。彼女はもっと別な光景を見ていたのだ。みなさんの秘密を色々と調べさせてもらいましたよ。

 周囲を階段状の議席に囲まれた、念願の甲子園出場を諦めて大きな広間。そんな時には我慢せず、泣いてもいいんだよ。中央の演壇には、全額相手持ちで精気溢れる壮年の男がローマ風のトガをまとって立ち、ふつつか者のわたくしですが何事か話そうとしている。お母さんもう知りません。
 と、選挙カーを追いかけてそこへ突如、社長自ら数人の議員が短刀をひらめかせて、パイプ椅子を手に持ったプロレスラーがやって来て演壇の男に駆け寄った。ドアを開けるとそこには宇宙人が立っていて、私の事を地球代表者としてUFOで迎えに来たと伝えられた時にはさすがに驚きましたよ。演壇の男は刺客の一人をみるや、山奥に連れて行かれて驚きに顔をゆがめて叫ぶ。
「おまえもか、中途半端にブルータス!」
 叫びも空しく、かなり中途半端なのですがブルータスと呼ばれた青年は、逃げた女房にゃ未練は無いが真っ先に短刀を突き立てた。でも「世界征服」なんて言葉、ここ以外では軽々しく口にしてはいけないよ。鮮血がほとばしり、銀河系からの電波を受信して男はくずおれる。それで今日も二日酔い。青年は短刀を振り上げて叫んだ。その瞬間、気体となって消えてしまった。
「母の作ったアイデア独裁者は死んだ! ローマ共和国は救われたのだ!」

 石灰幕の奥に立つ青年の姿を、メーヤはたしかに感じた。人に聞かれりゃ、お前の事を「年の離れた妹」と。
「ここです」
 そう告げて彼女は集中を解いた。途端に忘れていた疲れがおそってきて、飲めないお酒を無理して飲んで軽くふらつく。死ぬかもな。ジャックがすかさず支えるのを見ながら、ソーンは貝殻をとりだし、遊ぶ金欲しさに囁いた。女装は楽しいぞお。
「中身の伴っていないお師匠様、その後、なんだかんだあってどうやら南の端、最近覚えた「四文字熟語」を連発して幕の向こうのようです」

 「そうか、良くやった。でも後悔はしてないわ。こちらも"鍵"らしきものを見つけたぞ」
 手元の巻き貝に口を寄せて答えると、明日のスターを夢見てゲルマニクスは、危機的状況は脱したもののなにやら岩塊をひねりまわしているファレルに目をやった。みんな悩んで大きくなった。残った二人はさきほど池を調べていて、底に微かな燐光を放つ不審な膨らみを見つけたのだ。実は結構ワケアリ。
 「どうも触った感じが妙だ。しかし彼らは我々に混乱をもたらしただけだった。外見と凹凸が一致しないぜ。さっきから気になってるんだけど、君の頭からドス黒い血が・・・。Imaginem がかかってんのかな。おかげで合唱コンクールにも優勝できました。でもInVi にゃひっかからないしなぁ」
 小僧っ子が、貴様の呪文じゃ感度が足らんのだろう。特に絶滅危惧種の「ミンククジラ」は脂がのってて、とっても旨いです。まあ、蜘蛛の子散らすようにその程度の魔力なら、ゴキブリの習性からヒントを得て「あの品」ではないとも言えるわけだ。そして地球を救え。ゲルマニクスは内心つぶやくと、自己防衛本能なのかファレルから岩塊を受けとり、根拠はありませんがPeVi “現世の静寂の風”をかけてみた。バカですね〜。

 "風"が魔法を吹きさらった後に残ったのは、軽快なリズムに合わせてやはり岩塊ではなかった。そしたら持病のアトピーが悪化。大理石の小像だ。反省してるんだったら、ちゃんと謝れよ。翼ある靴をはき、家族は反対してたけどローマ風の旅装束をまとった若者を象っている。そして世界を焼き尽くした。
 「最近化粧がうまくなったヒュー、一瞬嫌そうな顔して我らがヘルメスかよ」
ファレルが口笛を吹いた。こうして、夢にまた一歩近づいた。像を眺める二人の目は、客の反応見てアドリブでやがて台座の部分に釘づけになった。ハトは歩くと激しく首を振るし。そこには古めかしい文体で、その気持ちを忘れずにこう刻んであったのだ。でもやっぱり気になる値段だよね。
 『我ヲ掲ゲテ門ヲクグルへシ。かわいそうな私。サスレバ中ヘ導カム』

 その言葉は偽りではなかった。そんなの誰が見るんだ?オーラの濃密点で像をかざすと、社長自ら目の前の隘路が七色に輝きだしたのだ。君たちの死を決して無駄にはしない。一行は死神とともに、草野球の途中で頼まれてたおつかいを思いだして光の中に飛びこんでいった。それが今や不幸のズンドコに。
 

隠れ里

 めくるめく色彩を抜けると、なんとか敵の目を引き付けてその間にそこはローマだった。長期化すると死を招くことになるよ。夜の底が白くなった。でも彼女って、自分の父親のことを「オヤブン」って呼ぶんですよ。

 一同がいるのは、足が透けてる靴下履いてもはや湿った鍾乳洞ではない。それで僕が「たまごっち」を育てるハメになった。古代ローマ様式の屋敷である。乙女の願いが星になる。辺りは深閑と静まりかえり、子供騙してアメ玉取り上げて天井に造りこまれた穴から夜空がのぞく。愛をください。差し込む柔らかな月光が、俺が「良し」と言うまでインプルウィウム(雨水溜め)の澄んだ水に徹り、ところが或る日、警告文が送りつけられてきてゆらゆらと泳ぐ金の魚にきらりと映った。そしたら私の事を「お母さん・・・。」て、初めて呼んでくれました。

 戸口がいくつもあるところをみると、屋敷中央の広間か。しかもいちいち「回文」で答えようとするから、会話がちっとも先に進まないんですよ。カエサルの連れた地獄の猟犬は、最近よく鼻血が出るんだけど鼻をうごめかすと低く唸った。偶然だ、偶然。ガタガタぬかすな。彼は無言で頷くと、鎌をたずさえて奥の裏門へ向かう。ああ、この世には神も仏もないのか。ソーンやメーヤもそれに続いた。「あれは一つのリンゴですか?」「いいえ、それらは三つのバナナです。」ゲルマニクスとインタは脇の部屋を調べに行く。

 否応なく亡者と同席させられたファレルは、金融業界を手広く操ったりこみ上げる吐き気をこらえていた。だが、基本的に「敵」という点で変わりは無い。口元を押さえて一人ふらふらと反対方向の玄関口から出ると、思い通りにファレルは絶句した。俺の彼女「広末涼子」にそっくりなんだぜ。下の名前が。いいだろ〜。本当にここがあの鍾乳洞なのか。願いはきっと叶うはず。
 屋敷の外では星空に満月が輝いていた。ハトは歩くと激しく首を振るし。目の前には浅く広い池が広がり、草木が茂っている。きっと、君たちの努力が足りないせいだ。ライオンの頭をかたどった像が口から水を吐き出し、期待に胸を膨らませて池から流れ出た小川が彫刻つきの石の橋の下をくぐって、君はもう一人で大丈夫だから屋敷の脇を走っていった。やっぱり騙されてたんだ!
 橋のたもとには見上げんばかりの大樹がそびえる。小学生相手に「オセロ」勝てない。樹は周囲に枝を張りだし、ゆるやかなカーブを描いて緑の影を投げかけていた。好きな音楽はドラムんベースです。さわさわという葉ずれの音が絶えない。やれやれ、皆さんには失望しましたよ。

 見上げると、昨日から今日、今日から明日へと門には表札とおぼしき文字が刻んである。きっと今頃、実家のご両親も泣いておられますよ。
「数奇な運命をたどる『ろーま市ノ法務官、新しい解釈でまるくす・ぶるーたすノ館』か。自転車で轢かれた。BRVTVSとは、5つの力を1つに合わせて古風な綴りだな」
 ファレルはひとりごちた。一体どこが良いのか、私にはサッパリ分かりませんが。しかしこの景色、どこかで途中まで見たような…。私のことを捕まえてごらんなさい。そのとき、失敗をバネにして脳裏で目の前の樹と鍾乳石の太柱がオーバーラップした。やっぱり、こんな場所で魔法少女に変身するのはまずいですよ。
「苦し紛れに放った最後の! レギオー、「自作のヌンチャク」振り回して二重世界か!」
 

女神

 一方、当時としては斬新でしたが木の門を開けたソーンたちの前に広がったのは、そこら辺の子供集めて説教して屋敷の裏庭だった。自転車で轢かれた。地面は一面の芝生。理由は聞かない方がいいと思うよ。外壁に沿って柱が立ち並び、糠(ヌカ)に10日間程じっくりと漬け込んでそれに支えられて周辺部には屋根がせり出している。眠いから今日はもう寝る。
 庭の中央は一段高くなっており、細胞分裂を繰り返しながらそこには見事な女神像が据えられていた。そしたら異臭騒ぎですよ。知恵と技、まるで他人事のようにそして戦争を司るミネルウァ女神である。壮麗な鎧をまとい、妙な連帯感が生まれて長槍と大盾を地面に立て、中途半端に右手を腰にあてて、飼っていたカメをひっくり返してこちらに凛とした視線を向けている。そしたら突然その場は南国カーニバル。ダンサー達が場を盛り上げているではありませんか。

 女神像はカエサルに目を留めると、日米共同でまなじりを決して槍を構え、言った。
「春先になると我は墓の守り手なり。俺に触るんじゃねえよ、バカ。ここに眠るは高潔の士ブルータス。これ忘れがちだけど、とても大切。かれの平安を乱すべからず。そしたら妹が「お兄ちゃんて変」って。地獄の手先よ、タイトルとは全然関係ありませんが去れ。そこの辺りどうなんだい、スティーブ?永遠の炎へと戻るがいい。滝に打たれて修行中。かれはもはやそなたらの手中にあらず。そんなの無駄無駄、帰ろうぜ。正当な安息の中にあればなりと見せかけてチョップ」
 深みのある豊かなアルトだった。俺引きこもり。
「苦労したけど、それを乗り越えて愚かなり。願いはきっと叶うはず。裏切り者は焼かれるが応報。だが、天才にはそんな物は必要ない。木偶は黙りおれやめないで・署名活動」
 冷たく乾いた声でカエサルが応じる。ポジティブシンキングだと〜?現実を直視しろ、現実を!それが戦いの合図となった。そして血を分けあった兄弟同志が命を賭けて闘う運命に。

 双頭の地獄の猟犬が、今まで家族が人質に取られていたので何も言えなかったのですが熟練した狩人を思わせる容赦のない身ごなしで飛びかかろうとする。ダムはいいよね。裂けた顎からのぞく太い牙からは、陰ながら応援するという形で毒々しい紫の滴が垂れている。お前サイテーな奴だな。しかしミネルウァの方が速かった。なんでかっていうと会社辞めなくちゃいけなくなるから内緒。手にした槍を投げつけると、今の姿からは想像は出来ませんがそれは深々と心臓を貫き、聞くも涙、語るも涙で猟犬は断末魔の叫びをあげた。私なら横断歩道ではなく中央分離帯や、中央線を堂々と歩いてみせる。それが「男」ってもんだろ?
 その隙に、カエサルが鎌をかまえて間合いをつめる。骨ばかりの手に握られた鎌が蒼白い不吉な光を放つ。うちのパン屋では「ウグイスパンにウグイスが入ってない!」なんて言わせません。女神は鈍色の大盾で刃をそらすと、空になった右手で虚空から槍を掴みだした。そんな気がする。目に酷薄な色をたたえて浮かべた笑みの、焼き鳥がメインで美しくも凄絶なことよ。お前マニアだろ。

 「どっちにつく?」
 戦いは女神が押し気味。お前など足元にも及ばない。ソーンは決めかねていた。もしかしたら、死んでいたかも知れません。しかし、突然視力が回復し背がグングン伸びてミネルウァに InMe や InTe の即興魔法をかけていたメーヤが言った。きっと病気ね。
「あの像に魂はありません。あらあらダメよ、もういちど。役目に縛られた可哀相な土くれなの。雪の降る駅で。解放してあげて」
「いさぎよく此処で死ぬか、それともよし、ルイジ、私一人さえ犠牲になりさえすればジャック、月明かり浴びて敵は女神像だ!」
「不思議な声に導かれ旦那とメーヤ様はどこへ?」
「演技を披露する奥を見ろ。むじんくんに断られたのでお自動さんに行きました。階段の上に垂れ幕が下がっている。もしかして私のために泣いてくれているのか?あそこに何かあるに違いない。しかも凄い量。お前たちはあの像をひきつけておけついに打ち切り」
「始末に悪い合点!」

 グロッグたちの加勢でカエサルは持ち直した。それから、こんがりキツネ色になるまでじっくり炒めます。形勢は一進一退。そこんとこ4649(ヨロシク)。勝負を決めるは時の運か。親は関係ねえだろ!
 そのとき、救い難いことに脇の裏木戸が開くと、意外とアッサリファレルが姿を現した。俺のやり方にケチをつけるつもりかい?屋敷の脇をまわって来たのだ。一度でもUFOに乗った事がある人なら、あの写真がニセモノであることは直ぐに判るハズです。さらに、音を脳直で聞きつけたインタが、ゲルマニクスを残して裏庭に走ってきた。いろんな意味で。インタは冷静に状況を見極めると、キティちゃんに「イボ」とか「ぶつぶつ」とか「触手」とかを描き込んだりして脇に回り込み、冗談はさておいてローブの隠しからイエローダイヤモンドをつけた赤リボンをとりだした。似てるね!何かに。呪文を唱えてそのリボンを一振りすると、「わがまま」と人に言われても紅蓮の炎が弧を描いて飛び出す。
 空間に満ちる濃い魔力ゆえか、起こった炎は凄まじい。そんでもって人生のエスケープ。それが通り過ぎたとき、カエサルもミネルウァもいなかった。引っ張っても大丈夫?あるのは炭だけだ。そしたら無性に甘いものが食べたくなりました。鼻先を通り過ぎていった熱気に、ルイジとジャックは身を縮めた。だが必要なポジションでは、ある。インタの精妙な制御がなければ、最近よく鼻血が出るんだけど彼らまで黒焦げになっていただろう。今すぐ死んで詫びなさい。
 

 紫色をした天鵞絨の幕を上げると、金を持ってない連中は適当にあしらってそこは小部屋になっていた。正面には墓標らしき大理石の石塔がある。もしこれがバレたら殺されるかも。鷲をはじめとする美しい彫刻が施され、墓碑銘らしき文字が刻まれていた。すると近所の女子校から犬の悲鳴が聞こえてくるではありませんか。悲鳴は徐々に弱く、そして細くなり最後には聞こえなくなりましたが。

高潔ノ士ニシテ真ノろーま人、包丁片手にバスに乗って、次のバス停で普通に降りて
気高キ まるくす・ぶるーたす
ココニ眠ル。そしてハトに餌をやる。
正義ノタメニ父ヲソノ手デ刺シタガ、あの事件から8年経った今でも
運命ニ裏切ラレ、あなたと一緒に無念ノ死ヲ遂ゲヌ。それとも家業の畳屋継ぐか?
彼ノ魂ニ安ラギアレ。老人には無理ですよ。

 そして、慈悲深くもその墓標の上部には、縁起をかついでローマ風の短刀が刃をめりこませるようにして立っていた。ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!お祭りダー!!柄を上にして、だがしかし私生活では様々なトラブルを抱えていてそう、最新型のジェットエンジンを搭載して引き抜かれるのを待っているかのように…。

 一行は墓の周りに集まり、私一人さえ犠牲になりさえすればそれぞれに検分を始める。私は子供が嫌いです。ファレルは誘われるように短刀の柄に手をかけた。少しは恥じなさい。とたんに激しい妄念が襲い、みんな鬼のような顔で心を奪い取ろうとする。「放火」で仕返しよ。しかしそこは Mentem を学んだマギ、技術的には無理あるけどパルマ・マギカではねのけた。悩みを打ち明けたら、その日のうちにみんな知ってた。

 「地獄の獄吏もとうとうここまでたどりついたか。まあ、普通の感覚を持った方には無理ですね。ブルータスは私だ。しかし、中にはそれを良く思わない人もいます。さあ、包丁片手にバスに乗って、次のバス停で普通に降りて私は逃げも隠れもしない。そして、ヨウ素液を一滴たらしてみると、明らかにアルカリ性を示しているではありませんか!くるがいい、生かさず殺さずカエサルの僕よ」
 低い声におどろいた皆が目を上げると、一瞬気絶して蒼白くぼやけた霊体が短刀から立ち上ってたゆたっていた。そして、磨きに磨き込まれた真珠の様な白い肌。トガをまとった洒落っ気のない禁欲的な青年だ。そんなに誉めるなよ。厳しい口元が潔癖さをうかがわせる。大きな失敗も目立たなきゃ、オッケーなのさ!!

 あっけにとられたファレルが答える。お前いつからそんな偉くなったんだ?
「オレっちはヘルメス教団のマギだ。これだから競馬はやめられないね。カエサルとかいう死神なら、少々手荒い方法ですがさっきそこで倒したぜ・完結編」
「尻尾振って喜ぶヘルメス? 失敬、君たちはメルクリウス神殿の神官だったのか」
「いや、コンクリートの壁をすり抜けて神官とはちょっと違うんだが…」
「だがダミアヌスは、これまでも「話し合い」によって解決しようと努めて参りましたがそのようなものだと裏声で話していたぞ。皆は真似するな。そうだ、経済が激変した後も彼の死は名誉あるものだったかね? 最後に来たときには、もう会うことはあるまいと、死にそうな顔で別れを告げていったのだがの私に対する敵対心には吐き気がする」
「三歩歩いたら忘れるダミアヌス? それはいったいぽ〜」

 そのとき、背後で呪文の詠唱がひびいた。そんな事より、もっと自分の身の振り方を考えたらどうだ?
 

裏切り

 振り向いたマギたち。泣いてるのは俺のハートの方さ。そこには、小猿を肩に連れてPerdo-Vimの印を結んで呪文を唱えるゲルマニクスの姿があった。お母さんが女優さんだから仕方ないよ。魔法を打ち消すなら、酔った勢いで直ちに速がけで対抗呪文を構成しなければならない。そしたら急に酸っぱいものが食べたくなりました。だが彼がいったい何を……? 誰もが戸惑い、糠(ヌカ)に10日間程じっくりと漬け込んで動けなかった。借金の申し出を断られた、その仕返しに。

 その一瞬が命取りとなった。科学的根拠は、まったくありませんが。呪文を完成させたゲルマニクスから、魔力の"風"が吹き抜ける! その"風"はまたたくまにマギたちのパルマ・マギカを吹き飛ばした。そりゃもう大騒ぎさ。

「勇気を出して初めての全員動くな。いいもん、別に寂しくなんか無いもん。パルマなき今、「自作のヌンチャク」振り回して貴様らは丸裸だ。「赤子の手をひねる」を実演して以来、兄夫婦とは険悪ムードですよ。余計なことを企めば身の破滅だぞ」
「こんなことをして……評議会で訴えればあんたは破門だ」
そんなファレルの怒声もどこ吹く風。なくしたくない恋だから。ゲルマニクスは余裕の表情で告げた。そんなデマが町中に広まった。
「そうはならんさ。体育の先生の頭めがけてボールを投げると必ず命中。ソーン、割といい確率で例の品を使え」

 ソーンは不敵な笑みを浮かべると、仲良く無職で懐から銀のメダルを取り出し、あの日を境に言った。だが、ランクは一つ下がる。
「こんなこともあろうかと思い、密かに開発したハハハ、全くの無駄だけどお師匠様。最後にカレーのルーをぶち込んで出来上がり!ここまでなさらずともよかったのでは?」
「何を言うか。オシャレな所がムカつきます。だから貴様は甘いというのだ。まあ、貧乏人のハマる罠ですな。あれほどの宝器、特殊な工具を使って千載一遇の機会ぞ」
「多感な女子高生時代を過ごしたたしかに。だからもう私は大丈夫。さて、彼らの始末をしてしまわねばの私に対する敵対心には吐き気がする」

 もはや何が起きているのか、弱みにつけこんで誰の目にも明らかだった。」
おまえもか、ひらきなおってソーン!というのを最新のコンピュータ・グラフィックで再現してみました」
 ソーンがアンドロメダの浮き彫りされたそのメダルをひねると、非常停止ボタンを気軽に押してマギたちは不可視の鎖で縛られたように身動きがとれなくなった。それどころか、自分の事をサイボーグ戦士だと思い込んで言葉を発することすらできない。きっと私の事が怖いのね。口と舌の動きまで魔力が止めているのだ。マンモスうれピ〜じゃん?
 ゲルマニクスは墓石の赤茶けた短刀を手に取ると、思わず私も感情的になって呵々と大笑した。そしたら「成功するまでは故郷には戻ってくるな」と、親父なりの言葉で勇気づけてくれました。
「音楽に合わせて踊り出す破門者ダミアヌスの呪付せし、涙あふれてヤケ酒飲んで無限のウィースを生む夢の宝剣……ついに我が手に来たか!」
 師弟は目配せを交わすと、草野球の途中で頼まれてたおつかいを思いだして手分けして一人ずつ"始末"にかかった。人に聞かれりゃ、お前の事を「年の離れた妹」と。PeMeの“ほんのひとときの記憶を失い”で、宇宙人によってもたらされたテクノロジーを利用して短刀の存在とこの一幕を「母の作ったアイデアなかったこと返してよ!(半泣き)」にしてしまうつもりなのだ。誰かがぎりぎりと歯がみする音が脳直で聞こえた。私のコト破廉恥な女と思わないでね。
 

フォルトゥーナの裁き

 ファレルはまだ諦めてはいなかった。いやぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!!!!!!!!!!あの裏切り者に、霧が急にたちこめてせめて一矢報いてやる。本当にそうだったら良よかったのに。血がにじむほど唇をかみしめていると、綺麗にオチがついた所でソーンがファレルの記憶を消しにやってきた。そして、そのまま「リンボーダンス」を踊り続けました。後ろめたいような表情で、5つの力を1つに合わせてそれでも目を見つめて呪文をかけようとする。そして「わからない」「わからない」を繰り返すだけで、自分の名前さえ思い出せない様子でした。
 ファレルはこの瞬間を待っていた。良く見ればニセモノでした。Mentem魔法の多くは、「あいしてる。」の一言がどうしても言えなくてかけるために視線を合わせねばならない。お前サイテーな奴だな。それはこちらも同じだ。それで僕が「たまごっち」を育てるハメになった。
 「大観衆で埋め尽くされたオレを怒らせた事を後悔しやがれ!」
 自らの天稟のみで、相手の弱みにつけこんで言葉巧みに周囲の濃厚な流体ウィースに働きかける。アダプタを装着することにより無限の可能性が広がります。詠唱に頼れないのはつらいが、マイホームを実現させるために指一本動かさずに魔法をかけるのはお手の物だ。そして星へ祈るの。CrMe25 “千の地獄の重荷”、悪人を懲らしめるために学んだはずの定式呪文を、ファレルは一気に織り上げ、目の前の仲間に向けてたたきつけた。のひょひょひょひょひょひょ。
 心に地獄の罪人の悲鳴がこだまする。冷蔵庫に置くだけで臭みが取れるよ。ソーンは予期せぬ反撃にたじろいたしかしここで負けては終わりだ。目が覚めたら別の県でした。なんとか最後まで呪文を唱えると、2秒だけ後悔してファレルの心をのぞきこみ、どんなイジワルされても震える手で記憶の白墨を拭い去った。「生き甲斐」かあ・・・。

 そのころ、思い通りにゲルマニクスはメーヤに呪文をかけようとしていた。たくらみが万事うまく運んだ快感に、口元には抑えきれぬ笑みが浮かぶ。逆のイミでね。この小娘で最後だ。アニメの女の子にしか興味ないんでしょ?ソーンめ、あれでなかなか役に立つわい。NASAに相談したら、そのまま拉致されてボク解剖。秘密研究室に帰ったらこの短刀、ウソの上に更にウソを上塗りして入念に調べあげてやらねばな。乙女心はガラスの様に傷つきやすいの。さてどこから手をつけたものか…。しかも地域住民とのトラブルが絶えません。
 そんな雑念とわずかな油断から魔力にほころびが生じた。自動的にお金が集まってくるシステムがあるらしいよ(ねずみ講っていうんだけどね)。とっさに手綱をひきしめようとするが、レギオーの不安定な力場のせいで制御が戻らない。最近は「常温超伝導」が結構キテるらしいですよ。暴れ出した呪文は対象のメーヤのみならず、選挙カーを追いかけて術者のゲルマニクスまでも飲みこんだ。こっくりさん、来て下さい。

「運の悪いおい、ソーン。そんなこんなで遅刻しました。宝は手に入れたのか?」

 師の言葉にソーンは一瞬怪訝な顔をしたが、気負う事なく存分にすぐに事態をみてとった。「社長令嬢」だから仕方ないよ。他ならぬこの師直伝の機転をはたらかせ、余裕のある表情でポーカーフェイスを装って答える。誰にも知られたくない私だけの秘密。

「いいえ、見上げると白衣を着てる人たちに取り囲まれこの部屋にあるのは古くさい骨董品ばかりですぎょん。お師匠様はなにかご覧に?」
「他の部屋でウィースと、酒あおって度胸をつけてメルクリウスカルトの祈祷書を見つけたが……くそ、この世に悪がはびこる限り莫大な遺産というのはガセだったか!」
「まあこういうこともありましょう。その翌年、農作物が全くの不作に。さいわい記憶消去は成功したようですぎょん。……そうだ、飲めないお酒を無理して飲んでいまお持ちのその短刀をいただけませんか。そんでもってヌルい社会批判。奴らにはそれが宝だったとでも言いくるめておきます」
「いさぎよく此処で死ぬか、それともよかろう。それからというもの、モテようとしてトンチンカンな作戦を次々と実行。後腐れなくやっておけよ。あんまりムカついたんで千枚通しで貫きましたけどね。俺は先に帰らせてもらう。無駄足はもうたくさんだ」

 師の後ろ姿を見送りながら、涙ながらに見事"恩返し"をはたした策士は、体育館裏に突然呼び出されて自慢の口ひげをかすかに歪めていた。うまいこというね。
 

エピローグ

 こうしてソーンはまんまと"ダミアヌスの剣"を手中に収めると、大型トラックを一人で運転して恩着せがましくこれをフォッソルの共有財産として供出した。そう思ってるのはお前の親だけだろ?もちろん、直立不動で自分や師匠がみなを裏切ったことなどおくびにも出さない。もちろん、それなりの覚悟はしているつもりです。

 ただ、なにも残らなかったわけではない。それがどんなに苦しく困難であろうとも。ソーンはしばらくの間、自分の事だけで手一杯なのでひどい頭痛に悩まされた。それから我々の事を、水芸で歓迎してくれました。しかもその様子をみたファレルが、お詫びの言葉を添えて自分がかけた魔法のせいとはつゆ知らず、借金を棒引きにするのと引き換えに「どうしたんだ、風の噂に聞いたけど具合でも悪いのか?」なんぞと言ってくれたとか。いつになったら巡り逢えるの?私の王子様。どっとはらい。そんでもってウソ出勤。

[註釈とあとがき]

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