永続効果

 アルス・マギカの第五版ルールでは、第四版までに存在した「永続」(無条件で効果が永続する)の持続パラメータが排除されています。それでも「人は無限に魅せられる」と申しますか、歴史上の永久機関研究よろしく、永続を求めてしまうのが人の性なわけで…。

■実現方法

 まずはマギたちのヘルメス魔法の範囲で考えてみますと、基本ルールブックに書かれていますように、魔術物品を用いる方法が第一に挙げられます。持続を「太陽」、頻度を1日2回、そして日の出/日没をトリガーとした環境発動のオプションをつけることで、切れるタイミングに合わせて自動的に追加起動する原理です。ルールブックの記載によれば、これによって一瞬たりとも効果が明滅することはないと見なすとのこと。マギ以外でも効果を発動できるという、魔術物品のアドバンテージを活かした方法でした。

 ただし魔術物品の場合、一つの永続効果ごとに一つの物品を物理的に作成する必要があって、それには最低でも一季節の時間が必要。これが最大のデメリットですね。そこで、効果生成にかかる時間的コストに優れる呪文ではなんとかならないか、ということになります。
 呪文の場合、魔術物品と同じ方法では、術者が貼り付いて永遠にかけ直しつづけることになり、笑い話にしかなりません(もっとも、それを定期的な更新が必要な封印などと位置づけて、物語のネタに使うことはできますが)。単発の呪文で永続する持続パラメータで、術式を構成しなくてはいけないわけです。
 その要件を満たすもので、まず挙げられるのは、メリニータ派の秘儀《妖精魔法》で使えるようになる持続「条件/Until(condition)」です。特定の条件が満たされるまで持続するというもの。また、動かない対象であれば、一般のヘルメス魔法の持続「魔法円/Ring」(対象が円の外に出るか、魔法円が破壊されるまで)でも可能です。
 それと、これは非常に限定された状況の話になりますが、たとえば日の出が永遠にこない場所でなら、持続「太陽」は事実上永続に等しくなります。夜の帳が降りたままのレギオー内とか、時間の流れがでたらめなアルカディア、薄暮のままの夢の中(Mysteries RE所収の秘儀《夢魔法》で夢の中に侵入している場合)などならどうでしょう?

 ヘルメス魔法以外ですと、もう少し便利そうな方法がいくつかあります。一つには神聖界の術を学ぶこと。持続「潔斎/Fast」(肉を摂らず一日一度の食事だけで暮らすあいだ)や持続「恩寵/Grace」(大罪を犯さないかぎり持続)といったパラメータを使えるようになります。
 もう一つは、言うまでもなく地獄界に転ぶことで、持続「棄教/Forsaken」(悔い改めをするまで)があります。制約の少ない最も優れた方法ですが、死ねば地獄行きですので、その点はご覚悟を。

■副作用

 首尾よく永続(もしくは疑似永続)な効果を生成できたとして、ここに問題が一つ残ります。それは歪曲。
 対象は効果を受けつづけるかぎり、1年あたり5点(または1点:その対象専用に開発されている場合のみ)の歪曲値を蓄積してしまいます。20年で歪曲値100、終末の黄昏の刻限となる歪曲度10(=歪曲値275)にも、わずか55年で到達してしまうのです。

 このため、特にマギのみなさんには、あまり自分を対象にするのはお勧めできません。地獄界や神聖界だと歪曲の影響こそあれ、黄昏のような「門限」が無いので、だいぶマシです。
 また、これら魔術にかかわらない一般の生物や無生物を対象にする場合で考えると、歪曲度5に達する15年くらいはまあ許容範囲でしょうか。

 あとまあマンチな話をしてしまうと、わずかでいいので何らかの実力値を獲得できれば、歪曲の影響が一切なくなります。《大いなる秘薬/Great Elixir》(Mysteries RE所収)に到達した錬金術師マギなんかは、それこそドーピングし放題ですな、ぐふふ。

 穿った見方をするなら、この歪曲のルールの導入こそが、第五版になって持続「永続」を無くした理由なのでしょう。「石像を PeVi したら、実は千年前に石化された古代人だった」というようなネタが少しやりづらくなって、ちょっと残念ではありますが、でもまあ歪曲の影響を付与する覚悟があればそれも出来なくはないです。

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