呪文の特質/Spell Colour


■序文

ヘルメス魔法は予想のつかない難解な技で、数え切れないほどの様々な太古の系譜を引いています。予言、吉兆、占星術、数秘術、誕生星、ホロスコープ、籤占い、呪詛、医術まで、魔法ごとに色合いも行いも異なります。

アルス・マギカ第四版では、ヘルメス魔法の一分野に取り込むことで、これら大きく異なった術を調和させる試みをしています。ボニサグスの技法と形相の導入(そしてラテン語の使用)が、魔術団を構成する様々な系譜の魔法実践を一つにしてくれたのは間違いありませんが、一方で、それぞれ独自だった形式を一つに統一してしまったことは、魔法の豊かな歴史にとって害にもなります。現行のルールはこのジレンマをちゃんと認識していて、魔術師の印や流派の違い、ヘルメスの美点や欠点といったもので多様性を確保しようとしてはいます。しかし、さらなる方法をとれば、中世の魔法の神秘的な風合いと超常の輝きを、さらに獲得できるはずです。そのために私たちは、「呪文の特質」(Spell Colour)という追加の要素を、ヘルメス魔法に導入しました。

「呪文の特質」の目的は、魔術団の系譜にある多様性を反映させ、伝承ヨーロッパという舞台での魔法の行使に、さらに本物らしい味わいを加えることです。意図は立派ですが、ここで様々な魔術系譜を数量化したり分類したりすれば、私たちが避けようとしている「数学的な」感覚を促進してしまいかねません。そのためこれらのルールは、柔軟性と想像力を大いに働かせてもらわなければなりません。「呪文の特質」は魔法にさらなる謎めいた味わいを与え、中世の魔術の骨肉となった多くの古代の系譜を表現するためのものなのです。

■ゲームシステムと「呪文の特質」

現行の第四版ルールには、「射程」「持続」「対象」の三つのパラメータがあります(p.103参照)。「特質」を四番目のパラメータとしてください。「特質」を使うためには、呪文のパラメータの操作とそれによる呪文レベルへの影響を、しっかり把握していることが大事です。たとえば、「射程」のパラメータを一段階変えると呪文のレベルが1強度変わることを思い出してください。パラメータの操作とそれによる呪文レベルへの影響で混乱することがあれば、第四版ルールブックから、呪文のパラメータと開発を記した箇所を読み直してみてください(p.80-82)。「特質」も同じ方法で機能し、それぞれの特質には独自の表と段階があります。「特質」である段階から次の段階に移ると、他の三つのパラメータと同様に、1強度の変化になります。「射程」「持続」「対象」の表と「特質」の表で唯一異なるのは、「特質」の表は反対方向に記されているということです。つまり、表の上に一段階行くごとに、強度は1段階下がります。よく分からなかったら、とりあえず先に読み進んでみてください。たくさん例が出ていますから、それで分かるでしょう。

「射程」「持続」「対象」とは異なり、すべての技法と形相の組み合わせにおいて、デフォルトの「特質」は、「特質」が存在しないことです。つまり、創造時に指定されないかぎり、呪文は「特質」による制約を受けないということになります。「特質」は適用するとたいてい一部を伸ばすのではなく、呪文の力に制約を与え、有用性を損なう結果をもたらします。そのぶん、「特質」があれば、呪文の強度を減らすのに役立つでしょう。このことは、魔術系譜によって容易になるものの制約も生ずるというのを受けています。「特質」があると呪文の有効性に影響をおよぼし、これまでの呪文パラメータと同様に、「特質」は呪文の最終的なレベルに反映します。

たとえば、「天空」の特質を主に用いるマギは、月相によって行使を制限されてもよいなら、通常30レベル呪文である"キルケーの呪い"を20レベルバージョンで開発できます(月相は「天空」の特質の表で2段階となっており、そのためレベルが2強度下がるのです)。この呪文は、効果はレベル30のを保ちますが、行使はレベル20として行えます(開発もレベル20として可能)。ああしかし、この方法で呪文を縛ると、月が決まった相にあるときにしか行使できません。それ以外の時には、ウィースを消費しなくては(下記参照)作用できないのです。マギが望めば、呪文の強度はさらに減らすこともできました。「天空」の特質の表をみると、4強度減らせるというのもあり、そうすると30レベルの呪文が10レベルまで下がりますが、かわりに一年に一日だけしか行使できなくなってしまいます。その日というのは、呪文の開発時に指定され、変更することはできません。30レベルの呪文を学んでいれば、一年に一日だけ10レベルとしてかけられるというのとは違います。そうではなく、「特質」によって、呪文開発時に指定した日以外には行使できなくなるというか、あるいはその日にだけ行使できるようになる、というわけです。

「特質」の範囲は呪文開発中に選択され(月相とか一年に一日とか)、開発しなおさないかぎりこれを変えることはできません。つまり、「特質」によって課された制約は呪文の不可欠な一部となっていて、基本的には避けられないのです。しかし、該当するウィースを消費すれば、これを乗り越えることができます(呪文の実際の効果の1強度あたり1ポーン)。たとえば、上記の"キルケーの呪い"の特質バージョンであれば、6ポーンのウィースが必要になります(元が第6強度の呪文ですから)。ウィースに富んでいるサガでは、乱用を妨げるために、ストーリーガイドはこのルールを禁止することを考えてもかまいません。また、多くの呪文は、特質はあったとしても一つですが、術者が訓練を受けていれば、複数の特質を組み合わせて適用することもありえます。

■「呪文の特質」の使い方

「特質」には多くの種類があり、それぞれ呪文行使への異なったアプローチを反映したつもりです。このルールの最後に列挙してあるものは、「特質」のお勧めの例示と、それらの独特の性質について記したものです。「特質」はそれぞれが独自の魔法の枝分かれだと思ってください。それぞれ対応する技能があり(ゲームルール上は「秘儀知識」に分類されます)、一種類の「特質」の知識が他の種類の理解や行使に役立つことはありません。要するにこれらは様々な魔術の系譜なのです。これらの知識のそれぞれが、魔術理論の別々な枝分かれに類似しています。ですから、第四版の〈魔術理論〉技能が、純粋なヘルメス理論として考えてください。

「特質」を使うには、まずは魔法にそれを取り入れるために必要な秘儀知識をもたなくてはなりません。たとえば、「天空」の特質を用いたいなら、最初に〈天空魔法〉の秘儀知識をもたなくてはならないのです。このマギが「天候」の特質を用いたければ、別の秘儀知識〈嵐使い〉を獲得する必要があります(両方の知識を持っていれば、両方の特質を一つの呪文に編み込むこともできます)。

術者のその知識の値は重要で、術への熟達を表します。「特質」を用いた呪文を開発するときには、マギは〈魔術理論〉の値を「特質」に対応する知識に置き換えて、研究値を算出します。もっとも、これは完全に正しいというわけではありません。〈魔術理論〉とその知識を組み合わせて使いますので、これら二つのうち低い方の値を用いなくてはならないのです。この秘儀知識の値は、「特質」が関係した調査判定などその他の研究活動にも用いられます。さらに、魔法に取り入れることのできる「特質」の段階の変化は、術者の「特質」の値によって限定されます。たとえば、-2強度の変化には、少なくとも「特質」の技能が2以上なくてはなりません。-3強度の変化なら3以上、といった具合です。そのため、5強度ぶんの変化をもたらすには、術者はその「特質」が5以上なければならないわけです(望む効果に関した調査判定に成功することも必要)。「特質」の技能は通常どおり経験値の消費で伸ばすことができます(また、特質のかかった呪文を開発したマギは、通常なら〈魔術理論〉に得られる1点の経験値を、その特質の知識に入れることを選択してもかまいません)。際だった風合いをもつウィースなら、ウィース研究で特質の値を伸ばすこともできますが、これは稀なケースでしょう(ストーリーガイド次第です)。

「特質」の一つの秘儀知識は、キャラクター作成時に取るか、後の物語上のイベントで獲得するかです(特質についての大全書を読んだり、使い方を誰かから教わったりするのでしょう)。「特質」の知識に関する大全書や対話篇を書くこともできます(p.188参照)。

■「呪文の特質」の限界

呪文の中には、本性からして純粋にヘルメス理論に則っているために、「特質」を適用するのが容易でないものもあります。もっとも注目すべき事例は、いわゆる"炉辺のアエギス"の儀式です。「特質」によってこの儀式のさらに有用なバージョンを生みだそうという試みは、何世紀もの努力にもかかわらず実現していません(その中で一番成功したバージョンといえば、10世紀のマギであるカッリマクスのリュシストラートゥス(Lysistratus of Callimachus)の手によるものなのですが、それは術者本人だけに"アエギス"の守りを与えるにすぎず、コヴナントの同僚のマギたちは随分落胆したものでした)。また、ボニサグス派の哲学者たちが自明のこととしているのは、多彩な「特質」の自然主義的で細密な骨組みには、Vim の概念はうまく適合しないということで、これが"アエギス"の行使にうまく影響できない理由であろうとしています。他にも「特質」で影響をしにくい呪文が多数あり、特に Vim の諸呪文にはそれが言えます。ストーリーガイドは、ある状況で「特質」の不適当な使用を見つけたら、この有名なジレンマを理由に、実践を許可しなかったり、呪文の有効性を落としたりしてもかまいません。もっともそれはあまり頻繁には起こらないでしょう。「特質」は環境の中で強力な魔法を織り上げるのを容易にすべくデザインされているからです。たとえば、「場所」の「特質」をよく用いるマギは、コヴナント内でのみ働く呪文を開発するはずです(「特有の場所」により-4強度)。このマギの力はコヴナント内では素晴らしいものでしょうが、何らかの物語上のイベントのために、居心地の良いホールを離れざるをえなくなったらどうなるでしょう? もっと悪ければ、物語上のイベントによって皆でコヴナントを放棄することになるかもしれません(創造的なストーリーガイドの目的とは、こういうジレンマに直面させることでしょう)。注意深く細工した呪文がみな完全に役立たずになってしまうのです(もっとも研究書巻は、将来的に適切なバージョンを再開発する際には、研究値ボーナスを与えてくれます)。大半のプレイヤーはこうした潜在的な問題も考慮するでしょうから、「特質」に高度に依存した呪文には慎重になることでしょう。

■「呪文の特質」と儀式

呪文の開発時に最初から含めておかないかぎり、「特質」はヘルメス理論の呪文の行使には影響できないのが普通です。しかし、これには重要な例外があります。「特質」は、儀式呪文の行使を容易にするためにも利用できるのです。その際には、ウィースのかわりに「特質」を用いることで行われます。適用される「特質」の段階が一段階難しくなるごとに、儀式で消費されるはずのウィースの1ポーン分になると見なします。たとえば、20レベルの Imaginem 呪文"過去の目"を行使しようとするマギは、普通なら4ポーンのロウ・ウィースが必要です(Imaginem か Intellego で)。ここでそのマギが「天空」魔法の知識を用いることができれば、このポーン数を減らすことができるかもしれません。前に出した例でいけば、満月の光の下でのみかけられる(2段階分)呪文にすれば、ウィースは2ポーンしかいらないわけです(この残りの2ポーン分は、「天空」の特質を最初から織り込めば-2強度で減らせます)。

この概念を使うのは見た目ほど単純ではありません。儀式を容易にするために「特質」を加える前に、マギはどんな「特質」の表れが必要か決めなくてはならないからです。そのためには、望む儀式が望む「特質」で完了するような、ふさわしい状況を調査することになります。これを行うには、秘儀知識(=特質)の判定に成功した上で、「特質」の1段階あたり1日がかかります。判定に成功すれば、必要な「特質」が明らかになるでしょう(ストーリーガイドまたはトループ全体で、呪文をよく反映したものを選んでください)。これにはクリエイティブな思考がそれなりに必要でしょう。この調査判定でボッチするとおそらく、正しくない特質や、あるいは危険な特質を見つけてしまいます。ただの失敗なら、答えを見つけるのに失敗したというだけです。

たとえば、儀式"忌まわしき干ばつの招来"に「生贄」の「特質」を3段階(大きな獲物)適用したなら、必要なのはラクダということになるかもしれません。この例で分かるのは、必要な「特質」が分かったからといって、儀式を行うのが簡単というわけではないということです。マギの居場所によっては、生贄にするラクダを見つけるよりは、追加のウィースをかき集める方が楽かもしれません。また、この例では、"大きな獲物"(3段階)の生贄を適用する場合にすぎないことに注意。もう一度調査判定に成功すれば、同じ儀式で違う段階のものを調べることができます。上の例でいえば、1段階(虫)として蝗が必要となるかもしれません(達成するのは同じくらい難しいですが)。なお、一つの呪文の中で、同じ「特質」から複数の段階を取ってはいけません。先の例なら、ラクダと蝗の両方を生贄にしても、効果は変わらないということです。足りなくなったウィースが費やされ、段階の高いラクダだけが利益を与え、蝗はまったく無視されます(もっとも、ボッチダイスは追加されるかもしれませんが)。一方で、異なる「特質」を組み合わせるなら(「生贄」と「天空」など)、効果は累積します。もっともこれは珍しいことですし、複数の「特質」の組み合わせは間違いなく非正統的です。

■「特質」つきの呪文を書巻から行使する

「特質」の前提知識が無ければ、「特質」つきの呪文は開発できないのですが、それでも「特質」つきの呪文を書巻から行使することは可能です。呪文はすでに判読できる形になっていなくてはならず(開発者の個人的な書巻から直接行使するのは無理なのが普通です)、これは第四版の該当ルール(p.78)を用いて行ってください。

行使の手順については、「特質」の存在で生まれる違いがあるかもしれません。通常のヘルメス理論の書巻とは異なり、「特質」つきの書巻は、呪文の成功に必要な手順を記した序文を含んでいるものです(たとえば「祭礼」なら、呪文の詠唱文の前に、必要な香や祭具の種類、いるべき場所などが書かれているものです)。「特質」を正しく用いるには、さらに〈呪文操作〉や【器用】など、呪文の性質に基づいた手順を行うための判定が必要です。その際には、関連した「特質」の本文を参照したりすると手助けになるでしょう。こうした判定で失敗すれば、おそらく呪文の行使自体も失敗に終わります。さらに、「特質」で1段階動くごとに、行使にかかるボッチダイスが1つ増えます。関連する「特質」の技能を術者が持っていたなら、この数は「特質」の技能の値1点につき1つずつ減ります(充分あれば0にもなります)。

■結び

ここでは定式呪文と儀式呪文で「特質」を用いるルールしか論じていません。しかし、魔術物品や秘薬、タリスマンといった研究作業に「特質」を適用することも、そう困難ではないでしょう。即興魔法に取り入れるのはお勧めしません。ただし、特定の状況について「特質」の様子を調べたければ、その様子が表れているあいだは「特質」の技能の値を、即興呪文の行使合計にボーナスとして適用してもよいでしょう。最後になりますが、「特質」に関連した美点欠点も自作できるはずです。


■予鳥/Augures

この「特質」は伝承ヨーロッパの住人にはよく知られており、あらゆる種類の探知に用いられます。秘儀知識〈予鳥〉が必要で、それがあると、あらゆる種類の答えを探知するために、鳥の飛び方や振る舞いを用いることができるようになります。キリスト教徒は鳥のことを、人よりも神に愛された存在と捉え、この技を神との霊的交渉に近いものと考えますから、敬意を持って扱われます。実際、鳥は軽いため上空にもっとも近いと考えられ(プトレマイオスの記述による)、そこにおわす神格の優秀な使者となります。多くの弱小な予言者がこれで得られる敬意を求めて、貴族の宮廷で俗魔法使いとなりました。こうした予言者が行える種類の探知については、第四版ルールブックの45ページを参照してください。

他の「特質」の技に比べて、教会からためらいがちに受け入れられている一方で、「予鳥」を行う者の力はあまり大きくありません。他の探知の技もそうですが、予知の力は弱いし不明瞭なのです。さらに、ヘルメスの呪文で結びつけられるのは、Intellego魔法に厳しく限定され、中でもIntellego Mentem呪文が一般的です。この技の制約となるのは、「予鳥」に結びついたヘルメス魔法は、必要な鳥がいなければ行使できないということだけです。鳥の振る舞い、動き、鳴き声などを観察することで、呪文の行使を容易にしているからです。呪文の行使時にはその鳥がマギの視界内にいなくてはならず、さらにマギは、呪文の効果の1強度あたり少なくとも1ラウンドは、鳥を観察できなくてはいけません。そのため他の「特質」と同様、「予鳥」によって呪文行使に必要な時間は伸び、この「特質」をもつ呪文を速唱することはできません。こうした多くの制約のため、「予鳥」は他の魔術系譜に比べて弱い「特質」となっています。

この技を行う者は、占術目的で必要な鳥を捕まえることがよくありますが、鳥が囚われの身であることに気づくと正確な探知に支障を来してしまうため、それも限界があります。探知を成功させるためには、鳥を自然に放してやらなくてはなりません。これには数分から一時間以上かかるかもしれません。鳥が自然の行動に戻れるほど落ち着いて、呪文に成功できるようになるまでそのくらいかかるのです。放した鳥は飛び去って戻って来ないことも多く、落ち着く前にそうしてマギの視界から出てしまうと、呪文行使が妨げられます。さらに、自然の振る舞いを取り除かれた鳥(例:籠に閉じこめたカモメをシュバルツバルトに放す)は、しばしば正しくない解釈をもたらすでしょう(ボッチダイスの増加、もしくは行使自体の不可)。

この「特質」に結びつけられるIntellego呪文の種類に制約はありません。観察しなくてはいけない鳥に関わる程度です。呪文の強度の1強度あたり1ラウンド以上にわたって(儀式呪文では1強度あたり15分以上にわたって)、必要な鳥を見ることも聞くこともできなければ、呪文は自動的に失敗します。この深刻な制約があるために、この技が用いられることは珍しく、よくこれを呪文に編みこむ者はたいがい、魔術団では俗魔法使いという評判を得ることになるでしょう。とはいえ便利な使い道もたくさんあります。"ウィースの性質感知"などのIntellego Vim呪文に、コヴナントでよく見られるさえずる小鳥を結びつけたり、あるいは"田舎言葉/Tongue of the Folk"に家畜の鶏を結びつけたり(くだらなく思えるかもしれませんが、目標値が15レベルに下がって開発が容易になる上、慎重なマギは鶏を必要な場所、つまりコヴナントと遠くの村の両方に確保しておくでしょう)です。

有名な制約の一方で、「予鳥」には魔術団で望まれている有利点が一つあります。適切な鳥を観察してこの技能を正しく用いることができれば、他の「特質」に関わる調査判定すべてに〈予鳥〉の値が加えられるのです。たとえば、呪文行使に相当する時間を調査に費やしたマギは、「時節」の調査判定に〈予鳥〉の技能値を加えることができます。

「さえずる小鳥」は、スズメからツグミまでヨーロッパに行き渡っていますから、「予鳥」のもっとも簡素な形(-1強度変化)となります。術者は鳥の鳴き声と動きの両方を観察しますから、ある程度小さくさえあれば、とりたててうるさく鳴く必要はありません。「さえずる小鳥」の種類は決めなくてもかまいません。こうした鳥に共通する性質や習性を解釈して、結びついた呪文の行使に役立てるからです。「籠の鳥」も同じく-1強度変化となります。貴族の鷹から籠に入れた鳴き鳥、あるいは農家の鶏やガチョウまで、飼い慣らされたり調教されたりした鳥なら多岐にわたります。ただし「さえずる小鳥」とは異なり、「籠の鳥」の種類は呪文ごとに決めておかなくてはなりません(めんどりに結びついた呪文は、家畜のガチョウでは成功しないのです)。飼い慣らされた性質を見ていますから、「籠の鳥」は外に放さなくても、結びついた呪文の行使に役立てることができます。実際、普段の環境においたままにしておくことがほとんどでしょう。

2段階の強度変化である「特定の小鳥」は、決まった種一つの小さな鳥に結びついた呪文となります(ミソサザイに結びついた呪文なら、他の小鳥では不可能です)。もう一つの2段階強度変化は「猛禽」(鷹・鴉・鷲・フクロウなど)です。これら猛禽ならどれでもかまいませんが、一種類を指定しておくと、3段階の強度変化となります。海鳥も2段階強度変化ですが、こちらは種を指定しなくてはなりません。

渡り鳥は3段階の強度変化にあたり、また種を指定しなくてはなりません(例:カモ・ガチョウ)。「珍しい鳥」および「伝説的な鳥」(例:フェニックス)はそれぞれ4段階と5段階の強度変化にあたりますが、滅多に現れないため、呪文に結びつけられることはあまりありません。もっとも、この強度変化に見合った4点以上の技能値を持っているなら、この技能を用いた調査判定で、こうした鳥が出現する意味を見定めることができるかもしれません。あらゆる階層の中世人は、風変わりな鳥の出現は神からの重要なメッセージだと考えていました。創造的なストーリーガイドは、サガの中でこうした象徴に基づいた出来事を使うことでしょう。「予鳥」に熟練したマギなら、そうした神秘的な出来事の意味に通じているかもしれません。

最後になりますが、術者は選択した鳥の種類を狭めることで、この「特質」の行使をさらに洗練することができます。生まれたばかりの鳥ということにするなら、1段階の強度変化が加わります。例えば、渡り鳥としてガチョウを選択すると-3変化ですが、ガチョウの雛にすれば-4変化となります(しかしもちろん、ガチョウの雛を呪文の「特質」とすれば、大人のガチョウでは呪文行使に役立たなくなりますが)。

実例:
セビリアの審問士ライゼルは、ピレネー山脈とアルプスのカステッラマーレの間を頻繁に旅しています。旅行中悪天候で貴重な時間を失うのに飽き飽きして、InAu25呪文"船乗りの天気読み"を開発することにしました。山岳地帯のあちこちのコヴナントを訪れると、山頂でよく鷹を見ていたため、ライゼルは「予鳥」の技能でもって呪文開発の難易度を下げることにしました。「猛禽」は2段階の強度変化ですから、25レベルのかわりに15レベルで開発できることになります。彼女は旅行中あちこちの山岳のコヴナントで使おうと計画しています。魔法オーラとそこに住むたくさんの鷹を利用して、出発するのに最適な時期を見計ろうというわけです。

■天空/Celestial Colour

占星術はマギの中でも最古の系譜の一つであり、ヨーロッパでは大変尊重されています。占星術の活用には秘儀知識〈天空魔法〉が必要です(サガによっては「占星術」や「天文術」と呼ばれることもあります)。この技能を持っていると、「天空」の特質の呪文を使えるだけでなく、惑星や星座など天空の動きに幅広く通じていることになります(天文学にかかわる判定では、〈自由学科〉のかわりにこの技能を用いることができます)。

天空についての中世の考え方は、プラトンの宇宙観(とカルキディウスら古典学者の註釈)およびキケロの『スキピオの夢』から来ています。そこからもたらされる天空の描写は近代の宇宙科学とは大きく異なっており、天空を精巧な階層として捉えています。地上からもっとも遠いのは「上天/upper air」で、そこには神のような存在が住み、下方は月に達します。上天を魔法で操作することは不可能ですが、天空魔法の術者は、地上を統べる上天の影響を研究することで、自らの縛られる地上の出来事に影響することができます。次に位置するのは「中天/middle air」で、これは月から地上までの間であり、不可視の悪魔や影が住まいしています(「下天/lower air」はさらに謎に包まれ、地下界に関連しています)。ヘルメス魔法や他の特質も含め、中天には魔法で影響することができます。火が上天を支配し、その多くの光は地上からも見てとれます。中天を統べるのはAuramで、それに次いで水と、最後に土が来ます。

この宇宙観の壮麗な構成はたしかに難解で、単純な法則とはとても言えませんが、「天空」の特質の術者が技を用いる際に考えなくてはならない複雑な企みがどのようなものかを、この短い文章で感じてもらえればと思います。

他の特質もそうですが、「天空」の特質では、必ず選択肢があるとはかぎりません。呪文に結びつける最適な天空現象の状態を定めるためには、調査判定が必要です。望む呪文の性質によって、狭いものかもしれませんし、広いものかもしれません。また、注意してほしいのですが、この特質は別に夜にしか使えないというわけではありません(もっとも、天文を行うマギは昼夜逆転していることが多くはありますが)。

もっとも単純な呪文は、速い惑星(火星か水星)の一つが昇っていることで、月に数日か、もしくは2〜3ヶ月に数週間続きます。水星は火星よりも頻繁に昇りますが、ひとたび昇ってしまえば火星の方が長く続きます。別な1強度変化である「頃合」とは、一日の太陽または月の位置によるものです(たとえば「朝」であれば、日の出から数時間となります)。「頃合」としては他に、昼過ぎ・夕暮れ・宵の口・夜更けなどがあります。もう一つ別な1強度変化として、特定の星座(北斗七星・オリオン座・北極星など)が昇っていることというのがあります。これは毎晩数時間だけ続きますが、年間の時季や星座によっても変わります。「頃合」のカテゴリを目安にしてください。

木星と土星は威厳ある惑星で、秩序だって年かさでもあり、ゆえにこれが昇っているのに結びつけた呪文は2段階の強度変化となります。一旦昇れば何週間も続きますが、何ヶ月も沈んだままにもなります。ですから木星や土星に結びついた呪文は不確かといえるでしょう(ただし調査判定に成功すれば、惑星の周期を識別できます)。「寸時」も2段階の強度変化となります。これは毎日起こるある一瞬に結びついたもので、太陽や月の入れ替わりや頂点などがそれに当たります。この「寸時」は数分(最大でも15分)しか続きません。「天空」の2段階の強度変化には、「およその月相」に結びついたものもあり、その月相は呪文開発時に決定して以後変えることはできません。「およその月相」は「正確な月相」よりも広く、数日続きます。たとえば、「およその月相」で満月を指定したとすれば、その連続する三日間の夜のあいだとなるでしょう。指定した惑星(や月)が目に見える必要はなく、昇ってさえいればよいことに注意してください(ただしストーリーガイドは、必要な惑星がよく出ていない場合には、呪文行使にペナルティを与えてもよいかもしれません)。

「正確な月相」は月に一晩だけ続き、これは3段階の強度変化をもたらします。十二宮の一つに結びついた呪文も、3段階の強度変化となります。たとえば磨羯宮を選んだとしたら、山羊座が昇るあいだ(一年に一ヶ月)だけ行使できるわけです。

「天空」での4段階の強度変化は、星の「年に一度」の状態です。星の位置は時間の経過とともに移ろいますから、ローマの暦は毎年の出来事には必ずしも正確ではないのですが、決まった夜がいつ来るかの目安としては比較的信頼が置けます。別な4段階の強度変化は、普通でない天文や、惑星や恒星の合です。こうした天文は頻度が低く、おおむね年に一日だけ(もしくは一年に二度起きて翌年は起きない)です。

「稀な天文」とは、彗星や食、ブルームーン(*)、惑星の特別に異常な状態などです。呪文ごとに特定種の出来事を指定しなくてはなりません。まったく予測のつかない天文(流星など)もありますが、食やブルームーンは(難しいですが)調査判定に成功すれば、予測がつきます。

(*)blue moon: 季節に4度目の満月。3年に1度生ずる。

実例:
クリーアモン派のラッシトールは、〈天空魔法〉の知識を用いて、PeAq35儀式"忌まわしき干ばつの招来"の行使を容易にしたいと思いました。彼はどの十二宮がこの呪文の行使に適しているか調べることにしました(3段階の強度変化)。調査判定に成功した後、ストーリーガイドはラッシトールに、この呪文は処女宮に結びつけられると告げました(双魚宮がもっとも水に結びついた十二宮なので、その対極にある処女宮が、この儀式で行われる水の除去に適合するわけです)。ラッシトールは乙女座が昇っているあいだ(八月の終わりから九月にかけて)にこの儀式を行えば、通常の7ポーンのかわりに4ポーンのウィース消費で儀式を行えます。

■祭礼/Ceremonial Colour

この特質は精霊/spiritや影霊/shadeを召喚したり使役したりする力で殊に有名なもので、秘儀知識〈祭礼魔法〉を必要とします。この特質を結びつけた呪文は入念な儀式を伴うため、通常よりも行使に長時間を要します。この特質を用いた定式呪文は、起こす効果の(特質に基づいた実際の呪文レベルではなく)1強度あたり最低でも1分が必要です。儀式呪文は通常どおり1強度あたり15分です。儀式呪文はこの特質に大変適しているからです。

他の特質とは異なり、一つの呪文に複数の要素を結びつけるのが正しい行使のための条件となります。つまり、この特質のどれかの段階を使うためには、そこに至るまでの各段階のも組み合わせなくてはならないのです。祭礼が次第に複雑になっていくさまを表現しようとしています。例えば、適切な惑星に結びついた呪文(-3強度変化)では、祭具(-2強度変化)および灯りと香(-1強度変化)も必要となります。同じ呪文の場所に結びついた(-4強度変化)版であれば、先の惑星と祭具、灯りと香にもやはり結びつけられることになるのです。それぞれの段階について別個の調査判定が必要で、どれか一つでもおかしなものが交じると、呪文は失敗します。さらに、強度変化1段階ごとに、ボッチダイスも1つ追加しなくてはなりません。

この特質を用いた呪文は常に、術者による入祭唱や祈りから始まり、望む効果を起こすように中天の精霊に願っていきます。その名が示すように、次には複雑な祭礼の祈願がつづきます。まず最初に、必要な灯りと香を点けたり焚いたり撒いたりします。これが1段階目の強度変化を構成します(光と香の両方を使わなくてはならないことに注意)。灯りには、簡素な蝋燭・銅の壺・特定の木の燃焼などがあります。香には、香木もあれば香水や焼いた薬草もあり、呪文の性質に沿って、撒いたり漂わせたりします。どんな灯りや香かは望む効果によって定まり、それを知るには調査判定が必要です。高い段階の強度変化には、それ以前のものも使わなくてはならないということを思い出してください。ですから、灯りと香は、「祭礼」の特質を用いたすべての呪文で行われることになるわけです。もっともその性質は、強度変化が高くなるにつれて変わっていくでしょう。たとえば、最初はただの蝋燭でも、高い強度変化では焚き火になるかもしれません(この置き換えはわりと珍しいですが)。祭礼魔法は灯りと香に依存していますから、結果として面白い制約をもつことになります----行使中は大気が平穏かつ静かでなくてはならないのです。たとえば嵐の中で祭礼つきの呪文をかけようとしても、火が消えたり香料が流されたりして、行使が不可能になりかねません。祭礼つきの呪文を行使しやすいように、魔法で大気を鎮めたり嵐を止めたりするのは(術者に可能なのであれば)行ってもかまいません。もっとも、祭礼つきの呪文をかけはじめてしまった後では、行使を中断しないかぎり、厄介な風や天候を払うことはできません。もし中断すれば呪文は自動的に失敗に終わります(ボッチの可能性は残ります)。

2段階の強度変化を用いるには、適切な祭具を手に入れて、近くに置かなくてはなりません。正しい祭具が何かは呪文の性質に基づき、それを調べるには調査判定が必要です。たとえば、相応しい色の衣服・名前を記した聖なる紙・五芒星・指輪・剣などです。祭具は呪文の焦点具に似ていますが、行使を成功させるために不可欠なところが異なります。祭具による2段階の強度変化には、灯りと香も必要なことに注意してください。

3段階の強度変化は、特定の惑星や恒星への結びつきです。これは夜に行使しなくてはならないのが普通で、天空の配置について調査判定に成功した上で、さらに必要な祭具・灯り・香も使わなくてはなりません。

4段階の強度変化は特定の場所に結びついた祭礼で、「場所」の特質にも似ています。ここでいう場所は常にかなり広くて、望む効果に関連しています(もちろん調査判定が必要です)。たとえば、海や川に関した呪文では、海岸や川岸の一つに結びつくでしょう。

「記した円」は4段階と5段階の強度変化に出てきますが、〈祭礼魔法〉の特徴として最もよく知られているもので、精霊や影霊の召喚に役立ちます。円はヘルメスの法則に基づいて、一切の中断なく完全に描かなくてはなりません(【器用】+〈呪文操作〉の判定が必要)。術者と仲間は円の内側にいなくてはならず、また連続性が破れると、円は内部を邪霊から保護する力を失ってしまいます(円が有効で内部にいる間は、〈祭礼魔法〉の値の5倍のレベルにあたる、召喚された霊に対する結界と見なします)。

精霊の召喚は他の祭礼の呪文よりもさらに長時間かかります。地上に円を描き、大いなる危険に備えて自らの防御を固めなくてはならないからです。精霊はしばしば頑固で、召喚を何度も行わなくてはならないかもしれません。三度呼びかけても現れなかったら、その精霊は現れるつもりがないか、(力が足りなくて)現れられないのでしょう。

死霊の召喚は難しい技で、常にその死霊の血か身体(の一部)を必要とします。この術によく用いられる祭具は、不穏で生気のない世界から死霊を引き出すための、卵や牛乳、蜂蜜、油などです。よく用いられる場所は、その霊が現れるとされる場所で、死んだ場所や教会の墓地などがそれにあたります。精霊召喚についての「祭礼」の特質の強みによって、ヘルメス理論の大きな限界の一つを部分的に回避することができました。10世紀にクリーアモン派マギであるフラーリーのアッボが、「祭礼」の特質の呪文はキリスト教の埋葬式を受けた者の霊魂を召喚できる場合があることを明らかにしたのです。ただしそれが可能なのは、その人間が時ならぬ変死を遂げた場合だけです。死者の身体と霊魂が埋葬式を受けたがらないから成功するのです。

最後になりますが、記した円は、伝統的な精霊召喚を外れた内容にも用いることができます。精霊に関係ないように見える呪文の行使にも、記した円は使えるのです(たとえばPeTe"破砕の手"など)。本当のところを言えば、術者は不可視の精霊の媒介によって、望む魔法効果を作り出しているのです(それは元素精霊かもしれませんし、妖精や悪魔かもしれません)。この例でいえば、中天の精霊が術者の命令にしたがって、指定された石を打ち壊しているわけです。この事例で記した円を用いるにも、術者の防御を固めることは不可欠です。こうして魔法で扱われるのを精霊は嫌がるもので、不用意なマギは本人が"破砕の手"の標的になりかねません。記した円を用いては容易には行えない呪文もあります(ほとんどの Intellego Mentem 呪文がそうです)。精霊が呪文の対象になりにくかったり、望む効果を媒介しにくかったりするのです。こうした性質上の制約をもつ呪文では、「祭礼」による最大の強度変化は、場所に結びつけた-4強度変化ということになります。

実例:
テュータルス派のフレデベルトゥスは、ReCo25呪文"眠れる屍の覚醒"を開発したいと思いました。これは自分の〈祭礼魔法〉技能によく適合する呪文ですが、使い勝手をあまり狭めたくないので、2段階だけの強度変化を選びました(彼の〈祭礼魔法〉技能は3点で、充分足りています)。1段階目の調査判定を行って、赤ん坊の洗礼命名式の蝋燭が必要な灯りをもたらすことと、良い匂いの食べ物が香りとなることを突き止めました(この蝋燭は「誕生」を象徴していて死体の復活にふさわしく、食べ物の匂いは死体を生前の食欲で誘うのに役立つというわけです)。フレデベルトゥスは必要な祭具を調べるための、2段階目の調査判定を行いました。ストーリーガイドは鋤と靴(屍の目覚めている義務を象徴)が必要だと告げました。フレデベルトゥスはこの25レベル呪文を、15レベル呪文として開発に成功しました(2段階の強度変化による)。彼は蝋燭・甘いケーキ・鋤・靴を用意して祭礼を行い、行使判定を行いました。しかし何度やってみても、死体は横たわったままです。どうみても呪文に欠陥があったのです! 祭礼の要素の片方か両方が間違っていたのだと思うのですが、〈祭礼魔法〉の技能が上昇するまでは、再度の調査判定は行えません。翌年になって値が上がり、"眠れる屍の覚醒"の調査判定をもう一度行ったところ、間違っていた箇所が分かりました。鋤と靴ではなく、雄鶏と緑のトルコ石を使うべきだったのです(ストーリーガイドはフレデベルトゥスに、祭具に関する前回の調査判定がボッチだったと告げました)。残念ながら祭具を正しいものに取り替えるだけでは呪文は成功しません。呪文開発の時点から間違っていたからです。フレデベルトゥスは呪文全体を再開発しなくてはなりません。再開発するときには〈魔術理論〉の値を研究値に足せるのが救いです。

■起源/Genethliaci

このポピュラーな「特質」は、よく〈天空魔法〉の一形式と間違われやすいのですが、こちらは秘儀知識〈起源〉を必要とします。俗魔法使いは人の未来を予言するためにこの力を用いますし、近代の宇宙科学が占星術と呼んでいるのもこの技のことです。この「特質」は教会からすると大変に非合法なのですが、それは神が定命の人間に与えた自由意思に反する行いに見えるからで、この技を行う者と評判が立てば、間違いなく教会当局の注意を惹くことになります。〈起源〉の技の中心となる事柄は、個人の誕生日に充分な注意を払い、それに結びついた十二宮と惑星を調べることにあります。プトレマイオスの宇宙観に強く依存しているため、この知識の持ち主は天文学にも若干の素養を得ます(天体に関することでは〈自由学科〉の代用になります)。

この技を最初に魔術団に持ち込んだのはメルケーレで、彼は魔術を行使する力を失ってしまった後でも、ボニサグスを助けてヘルメス魔法にその一部を統合させました。今日でも天禀をもつ赤帽士の多くが、この古い技を会得して祖師の系譜を継いでいます。しかしながら、この「特質」に結びついた魔法の有用性には、大きな限界があります。まず、〈起源〉のついた呪文は人間にだけ作用し、Corpusを含まない魔法は困難です。次に、呪文の対象の生誕の状況についてごく精密な知識がなければ本当の威力は出ず、この情報を得るためには非常に難しい調査判定が必要です。そして何よりまずいことに、生誕の状況は対象ごとに異なりますから、〈起源〉に結びついた呪文は、開発時に決めた特定個人にしか効かないのです。ですから、マギがこの「特質」を用いて呪文を開発するのは、普通は自分自身にかけるためで、せいぜいでも価値のあるコーンソルスにかけるためとなります。治癒の効率を上げるためにもよく用いられ、回復に適した条件を探り出すわけです(対象の誕生日を正しく突き止められていることが前提ですが)。こうした場合には、〈起源〉は必要なウィースの代用とすることができます(儀式呪文で「特質」を使う項に書かれているとおり、1段階の強度変化につき1ポーン節約)。身体に影響する定式魔法の行使も容易になりますし、多くの「特質」の系譜の中でも独特といえるでしょう。この「特質」の用途についてはここではこれ以上触れませんが、想像力と柔軟性があれば、身体魔法にさまざまな使い道があるはずです。

探知の力は〈起源〉の中でも一番有名な要素です。しかし真の未来予知は魔術理論の制約で行えず、この技でさえ難しいことが分かりました(この技を行う俗魔法使いの大半は、嘘をついているか、はっきりしない一般論で煙に巻いているかです)。この技の本当の強みは、ある仕事に着手するのに最適の条件を明らかにすることと、身体を操作することにあります。〈起源〉の強度変化は、他の「特質」とはやや異なります。段階は二つしかなく、各段階の天体の影響は、任意の方法で併用されることを意味しています。これらの影響はそれぞれに調査判定が必要で、出てくる結果は呪文の性質次第です。最終的な強度変化は、呪文に組み入れられた個々の強度変化の合計になります。たとえば、場所(-2強度変化)と惑星(-2強度変化)を組み合わせると、-4強度変化となるのです。この場合、その呪文は特定の場所で、なおかつ決まった惑星が上がっている時にのみ、行使できることになります。他の「特質」と同じく、その場所と惑星は個人や呪文に依存し、それぞれ別個の調査判定で判明します。

-1強度変化の組み合わせはもう少し複雑です。合計を経験値のように計算してください。たとえば、元素(-1強度変化)は-1強度変化をもたらします。-2強度変化を得るには、元素に加えてもう2つの1段階要素(石と動物など)か、もしくは2段階要素が必要です。-2強度変化を得るために、3点の経験値相当が必要だからです。この「特質」で-5強度変化を得るには、挙がっているものをすべて組み合わせる必要があります(場所・惑星・動物・元素・日・時・石)。少しの計算で確認できるでしょう。

この「特質」について最後に一つ指摘しておきます。ストーリーガイドとプレイヤーがどのくらい時間をかけたいかです。〈起源〉の達人は、自らの魔法が数多くの増幅要素/減退要素に影響されていることに気づくかもしれません。それは理論的には、該当する場面や物語のうちに、キャラクターの人生に編み込まれていくことでしょう。

実例:
テュータルス派のマルクス・コンスタンチンは、Animalが苦手なのですが、それでも自分を狼に変身させる呪文を開発したいと思いました。苦手分野なので、レベルが高いと開発はもとより普段の行使にも差し支えると危惧し、〈起源〉を入れてレベルを下げることにしました。基本の呪文として選んだのは、MuCo(An)25の"森駆けるものの姿"です。場所(-2強度変化)のために調査判定を行い、森が必要だと発見しました。この呪文は野外で使うつもりでしたから、マルクスはこの結果に喜び、呪文に結びつけることにしました。適した惑星が昇っているという条件は制約がつきすぎると考え、これは取らないことにしました(もし調査していたら、ローマでは狼は戦いでの勝利に結びついていましたから、火星が適した惑星となったことでしょう)。同様に、日の制限も呪文行使に厳しいと思い、止めておくことにしました。-1強度変化についてそれぞれ調査判定を行い、必要な石はアンチモン(錬金術師のいう、汚染された金を浄化する「灰色狼」)、必要な時は夜(狼は邪悪な性質で知られる)、必要な元素は火(狼の目は暗がりでランタンのように輝く)、必要な動物はそのまま狼、と判明しました。昼間にも使うつもりでしたから、夜の制限は魅力がなく、これは断念しました。結局マルクスは、惑星(-2)と、元素・石・動物の組み合わせで、合計-3強度変化に決めました。そうして、"森駆けるものの姿"をたったレベル10で開発します。Animalが苦手なため、完成までに2季節を要しました。森の中で火のそばにおり、アンチモンの石を握って、狼の目(などトループが認めた狼の印)を持っているときにのみかけられる呪文が完成したわけです。

■時節/Haruspices

この「特質」は時間の周期的な経過を利用して、呪文の行使に最も適した日や時間を定めるものです。一見して「天空」の特質に似ているように見えますが、この特質でいう時間とは、天空のものではなく地上の規則的な周期に基づいています。たとえば季節でいえば、星の属性というよりも、決まった収穫の時期であったり、春の雪解けの時であったり、秋の初霜であったりします。(この特質で「春」を選択した場合、土地によって長くなったり短くなったりします。16週間の長い春もあれば、9週間しかない短い春もあるのです。この種の変化は、星の周期に基づく場合には決して起こりません)。また、この周期はローマ暦に基づいて計算されるわけでもありません。

この特質を用いるには、秘儀知識〈時節〉が必要です。一番簡単な形は、潮の満ち干や、光か闇の存在、その他土地の周期的な現象(たとえばアルプスでは、毎日の山風/Fohnがこれに当たります)です。

2段階の強度変化には、週の決まった日と、一日の決まった時間があります。中世の人々がデジタル時計を持っていなかったことは忘れずに。「一日の時間」は太陽が昇ってからや中天を過ぎてからいくつ、という測り方をします(ですから冬の一時間は夏至の一時間よりかなり短くなります)。3段階の強度変化には、ひと月の決まった日や、年の一季節があります。どちらもローマ暦ではなく、周期的な決まった出来事に結びついているのが普通です。たとえば、ひと月の決まった日であれば、最初に雨の降った日や、月例の市の初日、最初にめんどりが卵を産んだ日、などとなります。こうした出来事はさまざまに起こりますが、普通であれば、呪文をかけられるのは年あたり12日前後となります。「季節」は前述のとおりです。別な例を挙げれば、春の氾濫、リンゴの収穫、マメの収穫、四旬節などとなります。四季の一つもこの段階で指定できますが、それでもローマ暦ではなく、季節の経過に結びついたものになります(たとえば、12月に牛を屠殺した時から翌春に放牧されるときまでが、冬ということになるかもしれません)。

「一年に一日」は4段階の強度変化で、よく祝日が選ばれます(五月祭・ハローウィン・聖マルタンの祝日・イースターなど)。「例年の出来事」も4段階の強度変化で、決まった周期的な事象に基づきます(花が咲いたとき・春に最初のハエが出たとき・一年で一番短い日・夏に最初のガチョウが渡ってきた日・秋の最初の冷えこみなど)「例年の出来事」は予測できるパターンには従いません。

この特質でもっとも強力なものがつくと、十年に一度や百年に一度だけかけられる呪文となります。こうした呪文は非常に珍しく、また儀式であることが多いものです。現在知られているかぎり、これほど強く特質をかけられたヘルメス呪文は、書き記されたものとしては残っていません。

調査判定に成功しないと呪文に適した時間(呪文ごとに異なる)は探り出せないのですが、他の「特質」よりはかなり柔軟性があります。可能な時がいくつか見つかることも多いのです。

実例:
ボニサグス派のギベール・ル・アンドゥリスはなんとも性悪で、CrAn50の儀式呪文である"蝗害の呪い"を村にかけようと思いました(コヴナントの図書館にあった強力な呪文だったのです)。この呪文をかけるには Creo か Animal のウィースが10ポーン必要ですが、ギベールは足りませんでした。彼は〈時節〉の技に通じていましたし、大嫌いな村に復讐するのもそう急ぎませんから、儀式の行使を易しくするために4段階の強度変化(一年に一日/例年の出来事)を組み込むことにしました(ギベールの〈時節〉技能は4なので、これを行うことができます)。調査判定に成功し、夏の収穫期に最初のバッタが現れた日に、この呪文をかけられることを知りました。その日を待ち望み、次の夏になると昆虫を探しにグロッグを野原に送って、ギベールは儀式を行いました。特質を組み込んだため4ポーンのウィースが割り引きされ、残り6ポーンのAnimalウィースを使って、作物と哀れな村人たちを荒らしました。執念深いギベールの魂の悲惨なことといったら。なお、もし彼が調査判定に失敗していたり、グロッグがバッタの現れた日を間違えたりしたら、儀式は失敗し、費やしたウィースは無駄になっていたところでした。

■植物/Herbarii

よく用いらているわりに、この「特質」は魔術団のマギのあいだでは微妙な評価を受けており、その自然的な要素から、田舎者の俗魔法使いのもののように扱われています。この「特質」は他の魔法の系譜より力で劣るものとも見なされています。実際、生物(人間・動物・植物)にだけ、しかも自然な方法でのみ(薬草は人間に翼を生やす呪文には使えません)しか作用できませんし、結びついたヘルメス呪文の行使を助け効果を引き出すには、薬草を直接飲ませたり塗ったりしなくてはなりません。にもかかわらず、薬草の有益な面はよく文書化されており、この「特質」の知識はおそらく魔術団全体に広がっています。この技はブリタニアやノヴゴロドといった、野生の魔法の薬草がまだ豊富にある場所では、特にポピュラーです。なお、「植物」という名前になってはいますが、この技は植物や植物製品の活用にかぎられるわけではありません。それ以外の自然主義的なトーテムも使えます(たとえば石・風・尿・雨・動物製品など)。たとえば、オーク樹から滴るのを集めた雨、狐の血液、蛙石といったものは、世俗の薬草と同様の方法で対象への影響に役立ちます。この「特質」を使うには、技能〈本草学〉が必要です(また関連する判定には、Herbam の5点につき1点を加えることができます)。この「特質」を用いた呪文はすべて、呪文行使に決まった薬草や自然物が必要になります(それが何かは調査判定で判明します)。通常、対象は指定された薬草を飲んだり塗ったりしなくてはなりません(必ずではありません。常識に任せます)。薬草の用途は上記のとおりですが、それに加えて、探知や自然操作の目的(天候への影響など)で用いることもできます。これらの場合、望む効果の強度によって、用いる特質の程度が決まります。

人間や動物に直接影響する薬草(慢性の病気を和らげたり傷を与えたり)は、この「特質」のもっとも簡単な使い方です(-1強度変化)。治癒の薬草や毒としてよく知られているもの(動物毒も含む)は、対象にそうした効果を与える呪文に役立つはずです。一つの呪文の条件を満たす薬草の種類はさまざまあります(あるPeCo呪文をかけるには、蜘蛛の毒でも、蛇の毒でも、蛙の毒液でも選べるでしょう)。

対象の感情に影響する薬草は、2段階の強度変化となります。愛や憎悪を誘発したり操ったりはもっとも容易です(神秘の媚薬が登場する中世の伝説はたくさんあります)。それ以外の感情もこの「特質」の利用によって、引き起こしたり影響したりできます。特に七つの大罪(怠惰・嫉妬・高慢・好色・貪欲・憎悪・大食)はそれが言えます。特別に複雑な感情や思考は、この「特質」をもってしても操るのは簡単でなく、望む形で影響できない場合もあるかもしれません。感情に影響できるのが分かっていても、Mentem の達人の多くは、この「特質」を用いて生の感情を引き起こすのは陳腐な手で、俗魔法のたぐいだと見なしています。

3段階の強度変化には、決まった珍しい薬草を使わなくてはなりません(調査判定で判明します)。こうした薬草は、望む感情を引き起こしたり治癒に作用したりと、さまざまな効果を起こします。珍しい薬草は、妖精の森の空き地など、魔法の地で見つかります。世俗の薬草や自然のトーテムでは、生物に不自然な形で作用する力は限られています。

もう一つの3段階の強度変化は、誘導呪物の使用です。この場合、これより低い特質(1段階か2段階の強度変化)の呪文を、薬草に加えて対象への誘導呪物も必要とすることで、3段階の強度変化に上げることになります。たとえば、薔薇の必要な愛の呪文(普通なら2段階強度変化)に、対象への誘導呪物も必須とすれば、3段階の強度変化になるのです(この誘導呪物の具体的な性質は、呪文によって定まります。媚薬なら対象の髪の毛が必要で、それ以外の誘導呪物を使っても成功しません)。珍しい薬草と誘導呪物を組み合わせると、この「特質」で最も強力な4段階の強度変化となります。

実例:
雑集派のフランチェスカは魔女に教わり、魔法の呪文に薬草を用いる秘密を知りました。彼女は、人の話の真偽を見極める呪文(InMe20"虚言の凍れる息"と似たような)を開発しようと思いました。「植物」の技能を用いて調査判定をしたところ、蛙の舌が適すると分かりました(ああ、対象は蛙の舌を飲まなくてはならないのです。でもフランチェスカは、シチューの中に入れて出せばそれも可能だろうと見ています)。ストーリーガイドはこれを2段階の強度変化としましたので、10レベルとして、名付けて"嘘つきの哀れ/Wretch of the Pathetic Liar"を開発しました(この呪文の影響下で対象は嘘をつくと、痙攣の発作を起こすのです)。対象が蛙の舌を食べなくてはならない(そもそも蛙の舌を手に入れるのはもちろん)という制限からして、この呪文は自分のコヴナントの平和な内部でだけ役立つものになりそうです(最初から覚悟していたことですが)。

■吟誦/Invocation

このカテゴリは実際には二つの別個の「特質」を含んでいます。一つは身体動作であり、もう一つは音声(歌と言葉)です。「吟誦」は異教(スラヴ/ゲルマン/マジャールなど)の儀式に結びついていることがよくあり、そのため魔術団ではやや不審の眼で見られています。雑集派のマギのいくたりかはこの技の達人と思われ、彼らの行う歌や踊りは非ラテン系の伝統を行っています。「吟誦」の二つの種類はここでは一緒に挙げられていますが、これは両者の共通性を強調するためです(二種類の「吟誦」を組み合わせて行うマギが多くいることも反映しています)。しかし、これらはまったく別個の技能であって、それに応じた扱いをしますので、別々の秘儀知識が必要となります。各々が強力な「特質」でありえますが、「特質」の付かないヘルメス魔法に比べて行使に長時間かかるという悪名も持っています。「吟誦」の性質によって、この「特質」を用いている定式呪文は、通常の行使時間の2倍(2ラウンド)から数分かかります。さらに、「吟誦」の複雑で精密な性質から、この「特質」のついた呪文は速唱することができません(たとえ習熟呪文であっても)。「吟誦」のもう一つの変わった面は、焦点具に関わることです。この「特質」を用いた多くの呪文は、魔力を呼び起こすのに焦点具を使わなくてはならず(決まった歌や踊りに加えて)、焦点具なしでは完全に失敗してしまいます。さらに悪いことに、機敏さや優雅さを失うと、踊りや大きな動作を充分に行うことができなくなり、これらの呪文は役に立たなくなります(正しく呪文行使を行うためには、行使判定に成功するだけでなく、踊りなら【器用】+〈舞踊〉、歌や朗唱なら【交渉】+〈歌唱〉の判定にも成功しなくてはなりません)。ぶきっちょな術者はこの「特質」をまともに使える力がない結果になるかもしれません。さらに、必要な踊りを完成させるのに充分な空間がなくてはなりません。こうした制約から、多くの術者が呪文に「吟誦」を用いなくなっていきました。しかし、「吟誦」には他の「特質」より有利な点が一つあります。それは、「吟誦」では通常の定式呪文の儀式バージョンを作ることができるというものです。行使にかかる時間は最初から長いわけです(通常どおり1強度あたり15分)し、ヘルメス法典で禁じられているとはいえ、この種の「特質」は精霊や悪魔の召喚を容易にすることで知られています。

「吟誦」で一番簡単なのは、単純な歌や朗唱、あるいは精巧な身振りです。決まった朗唱や歌、大きな身振りを、呪文開発時にデザインしておかなくてはならず、そしてそれを後から変えることはできません。この「特質」を用いた呪文の行使に成功するには、該当する歌や踊りの判定が必要ですが、難易度は比較的低めです(ただしこの判定に失敗すると呪文が失敗します)。さらに複雑な歌や踊りは2段階の強度変化となりますが、難易度も上がることになります。

3段階の強度変化には、複数の参加者が必要です(古代の異教の儀式から引いていて、審問士たちは難色を示しますが、欧州の辺境では大目に見られています)。合唱は複数の参加者による歌や朗唱を伴います----ユニゾンであったり、輪唱であったりしますが、それは呪文の性質や歌の系譜によって決まります。群舞(音声以外で合唱に対応するもの)は、一群の踊り手が呪文行使に影響するための決まった方法で動くのです(同時の身振りであったり、荒々しい波打ちであったり、皆で手を天にさしのべたりします)。こうした儀式の難しさは、他の参加者にも依存します(マギが踊りを完璧に成し遂げたとしても、仲間がそうでなければ、呪文は失敗したり、ボッチすらするかもしれません)。

マギによっては(特にカリマクス派/House Callimachus(*)の者は)、歌うかわりに楽器を用いることができます。これは普通は不可能で、楽器に関連した+1の美点が必要です。

(*)原著者たちのハウスルール

実例:
雑集派のラインマールは音声の「吟誦」に熟達していますが、彼はゲルマンの伝統に基づいたそれを師匠から教わりました(この系譜はビシゴート族に広がっています)。ラインマールはこの技能を用いて、"木棒の逸らし"の「特質」つきバージョンを開発しようと思いました。この呪文はレベル20で、木製武器による既知の攻撃をすべて逸らします(第四版ルールのp.133を参照)。ラインマールは簡単な朗唱(もちろん古代ゲルマンのです)を入れて、呪文の強度を1つ下げ、レベル15としました。ストーリーガイドは、この呪文をかけるときには、ラインマールは効果の持続するかぎり朗唱を続けなくてはならないとしました。彼が必要な集中判定(朗唱の)を続けられるかぎり、呪文は持続するでしょう。

■場所/Location Colours

この「特質」で要求されるのは一定の場所で呪文をかけることだけで、また、秘儀知識〈地点魔法/Locus Magic〉が必要です。他の「特質」と同じように、その場所の性質は呪文によって決まり、術者が選ぶことは必ずしもできません(調査判定が必要です)。強度変化は、場所を見つける難しさと、場所の範囲の広さを反映するようになっています。

従って、よくある場所はもっと普通でない場所に比べて、強度変化が小さくなります。行使には呪文の創造時に定めた場所が必要で、後から変えることはできません(たとえば戦場を選んだなら、別な「少ない」場所に変えることはできないのです)。「よくある」場所はこの「特質」のもっとも簡単な形で、一日歩く中でたいがい見つかるものがこれに当たります。すなわち、野原・池・丘の上・川岸・森・道・墓地・村・粉挽き場などです。「少ない」場所はこれより見つけにくいものの、通常の範囲を外れていないところです。洞窟・大聖堂・湖・戦場・トネリコの林・ローマ遺跡・橋などです。「珍しい」場所は、そこに住んでいない者はまず遭遇することのない場所です。砂漠・火山・氷河・トロールの橋・温泉・王の出生地といった伝説的な場所がこれにあたります。「固有」の場所は文字通りです(特定の城・コヴナント・決まった山頂・聖エマの墓・スイスのコンスタンス湖・ストーンヘンジなど)。この便利さはマギの個人的な場所次第で、呪文によってさまざまでしょう。調査判定を行う際には、多くの選択肢が見つかるかもしれないことに注意。たとえば、「固有」の場所に呪文を結びつけようとした場合、その場所とは国中で一番高い山だということになるかもしれません。マギの住んでいる場所に応じて、これはアルプスかもしれず、スカイ島の山かもしれず、ピレネー山脈の頂上かもしれません。このように、同じ呪文に複数の場所が「固有」になりうる場合があります。しかし、スコットランドのマギがスカイ島の山頂を「固有」の場所として選択したら、その呪文はもはや他の場所では(アルプスの山頂でも)作用しません。スカイ島に結びついたからです。「別世界」はもっとも強力な「場所」です。エデンの園・ステュクス川・オリュンポス山・アルカディアの一部・精霊界・アトランティスなどがこれに当たります。個々のサガの神秘度によっては、こうした場所は見いだすことが不可能かもしれません。

実例:
ビョルネール派のカプラは、MuCo25"熊の不屈の賦与"を開発しようと思いました。彼の研究値は30しかありませんから、この呪文を開発するには5季節かかってしまいます。そんなに長くはしたくなかったし、経過を早めるウィースも無かったので、カプラは呪文に「場所」の特質を入れられるかどうか調べてみることにしました。彼の〈地点魔法〉技能は2しかなく、最初の2段階の強度変化しか行えません(「よくある」か「少ない」場所)。それぞれについて一回ずつ、合計二回の調査判定をしたところ(三日かかります)、「よくある」場所の方は川岸、「少ない」場所の方は洞窟だと分かりました(どちらも熊が住処にする場所です)。コヴナントとその周辺地域は乾いた洞窟が多く、彼はこの2段階の強度変化を入れることにしました。ここで注意なのですが、洞窟はカプラの環境ではありふれているかもしれませんが、それでもこの「特質」の目的では「少ない」場所のままとなります。研究値は30でも、「特質」で2段階強度が下がって25レベルから15レベルとなります。ですからこの「特質」つきの呪文は1季節で開発できるのです! この呪文は通常どおり作用しますが、洞窟以外の場所ではウィースを5ポーン使わないと成功しません(ただし呪文の行使後に洞窟を離れるなら、持続の「太陽」のあいだ効力は続きます)。
カプラは後にこの呪文をコヴナントの蔵書に書き加えました。その呪文を学んだり書巻から行使したりしようとする者も、彼の入れたこの「特質」(洞窟にいないと行使に失敗する)に縛られることになります。

■生贄・鮮血魔法/Sacrificial Colour・Blood Magic

この有名な技を用いるには、秘儀知識〈生贄魔法〉(またの名を〈鮮血魔法〉とも)が必要です。該当する生贄が何かは、術者が任意に選べるわけではありません。望む効果に強く結びついた性質のものが生贄となり、それは調査しなくてはなりません(イントロダクションの中で書いた、"忌まわしき干ばつの招来"にラクダを使う話はその好例です)。厳密なガイドラインはここでは挙げませんが、この「特質」の利用にあたっては想像力と直観力を働かせることが必要です。生贄に合致しない呪文も数多くあります(MentemやVimに多い)。こうした呪文では「生贄」を呪文に盛り込むのに苦労することでしょう(ストーリーガイドは呪文自体を却下したり、必要な研究値を上げたりしてください)。

生物全体の生贄は必要なく、決まった方法での切断を行う呪文もあります。たとえば動物や人間の内臓(特に肝臓)は、探知の力で有名です。この「特質」を用いたIntellego呪文のほとんどすべては、こうした肝占いをとるでしょう。それでも獣の正しい生贄が必要なことに注意。とはいえ、用いられた獣は必ずしも死ぬわけではありません。たとえば、蛙の舌を切り取る(-1強度変化)のは、"虚言の凍える息"を15レベルバージョンにするでしょう----蛙の舌は真実を引き出す力で知られているからです。殺さなくてよい切断を行う場合には、獣全体の生贄より力で劣るため、強度変化は通常より1段階小さいものと見なします。上記の例では、蛙の-1強度変化は0段階に減ってしまいます(この場合親切なストーリーガイドは、いくらかの利益を残してあげてもよいでしょう。18レベルバージョンにするなどです)。

もっとも簡単な生贄は-1強度変化をもたらすもので、齧歯類などの小さな生物を用います。よく見られる魚や、蜘蛛や蜂などあらゆる種類の昆虫もこれに当たります。これらの生物の生贄は、特定の数で行います(3羽の雀、7匹の鱒など)。昆虫の生贄はしばしば大量を必要とします(蜂の巣全部など)。

蛙はよくある動物の中でもっとも魔法的なものですが、用途がとても広いのでそのぶん効力も薄まり、この一番下の段階に格下げすることにします。

2段階の強度変化は小さな獲物です(狐・羊・兎など)。羊は非常に従順な性質をもっているためここに含めます。2段階強度変化を与える生物には他にも、爬虫類(蛇と亀などの両生類も)と大きな鳥(鷹・梟などの大きめの猛禽)があります。

大きな獲物と珍しい動物は3段階の強度変化です。大きな獲物という言葉は、牛・鹿・狼・熊といった、大きいか獰猛な生物を指します。珍しい動物とは、白い毛の兎や100歳のフクロウなど、なかなか見られない生物のことです。こうした「珍しい」性質があると、他の段階に当たるものでもここに上がります。

伝説の獣は4段階の強度変化となります。少しだけ例を挙げれば、獅子・象・グリフォン・ユニコーン・人魚・ワイアーム・タコ・フェニックスなどです。人間もこの段階になります。人間は神の似姿として作られていますから、最も強力で危険な生贄となるのです。こうした生贄をたびたび行うマギは、地獄の勢力から干渉を受けることが知られています。また、哀れな人間の霊魂は、この死霊術師の殺人犯に取り憑くとも言われています。

5段階強度変化となる最強の生贄は、特定状態の人間です。つまり、幼児・処女・長男・修道士・癩病患者・酔っぱらいなどです(常に呪文の用途に関係します)。生贄が本当に必要な条件を備えているか、気を配らなくてはなりません。そうでない生贄を使うと、呪文は失敗してしまうからです(「クソ! この娘は処女だと言われたのに!」)。固有の獣も5段階の強度変化をもたらします。こうした生物は悪名高く、魔法を帯びていて、かなり危険なことが多いものです。クラーゲンフルトのワイアームやライン川のローレライなどがこれに当たります。ボニサグス派のサイシニンは、こうした獣を生贄に使うと、その身体にあったウィースが減るかもしれないと警告しています。

最後になりますが、呪文で指定されていないかぎり、生物は生贄や切断をされるときまで健康でなくてはなりません。老齢の、あるいは幼い生物では、望む魔力を引き出すのに成功しないことがよくありますから、術者は慎重に用いてください。この「特質」を用いる死霊術師は、中世の妖術師が蒙る悪名をまったく払えません。流派によっては(イェルビトン派とボニサグス派トリアノマ系)、メンバーにこの手の魔法を完全に(もしくは少なくとも人間の生贄は)禁じています。魔術団の他の団員たちはこの技を禁じられてはいませんが、多くのマギがこの「特質」を行うものを軽蔑しています。この技を行う者は魔術団で「死霊術師」という評判をもつことが多いものです。

実例:
雑集派のランは新人のマギで、出来たばかりの春コヴナントから、丘の上に防御壁を築くのを容易にする呪文の開発役に選ばれました。コヴナントの土地にたくさん転がっている岩を材料にして、グロッグたちがなめらかな壁をすばやく作れるように、MuTe15"粘土のごとき岩塊"を用いることにしました。彼のMuTeの研究値は20ですから、これを完成するには3季節かかります。しかし1点ですが〈生贄魔法〉技能があったので、めざとくそれを用いれば呪文の強度が1つ減って15レベルから10レベルになり、1季節で開発できるようになります。ランは調査判定に成功し、必要な生贄はモグラだと判明しました(モグラの決まった殺し方----窒息だったり腑分けであったり----も分かりました)。ランは呪文を1季節で開発し、グロッグを数人送ってモグラを捕まえさせました。開発が終わればいつでも呪文をかけられますが、それにはモグラの生贄が必要です。

■物品/Talismanic Colour

この広範な「特質」はヘルメス魔法への影響力は弱めなのですが、魔術団と教会/世俗のそれぞれの権威から幅広い敬意を受けています(宝石の神秘的な力を用いるラテン系の伝統からくるものです)。

「物品」の特質は、魔法行使に影響するためにさまざまな焦点具を用います。こうした焦点具は呪文の一部となっていて、この特質が組み込まれたら、その呪文は指定の焦点具がなければ行使できなくなります。しかし、さまざまな種類のある通常の焦点具とは異なり、魔法の使用を補助するのに必要な「物品」は、指定された範囲にかぎられます。これはたとえば宝石であったり、指輪や宝飾品であったり、さまざまな木だったりします。術者は用いる媒体を選択しておかねばならず、技能はその媒体を用いた場合のみに限定されます(また、指定された「物品」はそれ以外の焦点具に取って代わります)。「物品」魔法のさまざまな種類ごとに、別個の秘儀知識が必要となります(それぞれの知識を取っていないかぎり、宝石を操作する技能をもつマギは木を用いることはできません)。

宝石は「物品」の中でも最もよくあるもので、魔法の呪文と世俗の生物に影響を与える力が知られています。

「物品」に調整された呪文は、該当する品物がないかぎり行使できないのが普通です。ロウ・ウィースは行使を補助できます(呪文の特質のイントロダクションを参照)が、「物品」の呪文はそのようにして行使するのがとりわけ難しくなっています。品物の代用としてウィースを用いる場合には、呪文の効果上の強度の2倍を費やさなくてはなりません(第六強度である"キルケーの呪い"の「物品」バージョンを品物なしで行使するには、12ポーンものウィースが必要なのです!)

冒頭に挙げた「物品」の種類は、あくまでも提案にすぎません。それ以外の種類の物品魔法を追加するのを遠慮する必要はありません(史実の伝統に則るのが望まれますが)。ほとんどの術者は、代々の決まった品物を受け継いでいて、利便性が限られています(宝石を用いるマギは、裕福な貴族と結んだ宮廷魔術師であるか、あるいは自分自身が貴族であるかでしょう)。

実例:
イェルビトン派のラエルテースは、宝石の使用とその魔法への組み込みに熟練しています。この知識をReMe20"正しき権威の霊威"に組み込もうと考えました。調査判定に成功したところ、この呪文に適した宝石は金であると分かりました。ストーリーガイドはさらに、この金には紫水晶が組み込まれている必要があるとしました。紫水晶は第四版p.148にあるように焦点具でもあり、望む効果を引き出すために結びついているからです。必要な宝飾品を手に入れ(ラエルテースは幸運なことにとても裕福でした。貴族の血を引いていたからです)、2段階強度を下げてレベル10とすることができました。金と紫水晶を身につけているときにかぎり、この呪文は行使することができます(もしくは8ポーンのウィースを消費するかです。上述)。

■天候/Tempestarii

この「特質」は地上の天候状態に依拠するもので、秘儀知識〈嵐使い〉(天候魔法)を必要とします。祖師メリニータはこの技を用いており、ボニサグスを助けてヘルメス魔法に取り入れました。この「特質」に導かれた魔法を作用させるためには、必要な状況のある中で呪文をかけなくてはなりません。たとえば日光が指定されているなら、術者は太陽が輝いている場所にいなければならないのです(そして雲の陰に隠れないことを祈りましょう)。大木の影に立っていたとしても、太陽が周囲に照っていれば呪文は成功するかもしれません(こうした場合はストーリーガイドやトループが裁定する必要があります。天気の気まぐれな性質から、この「特質」がいつ使えるかは予想がつきません...ですから、あるとき大木の影で日光の必要な呪文が使えたとしても、次もそうだとは限らないのです)。

この「特質」の強度は、天候状態の起こる頻度によっており、よくある現象は珍しい現象に比べてずっと易しくなっています。他の「特質」とは異なり、調査判定によって一つの呪文に多くの可能性が判明することがよくあります。カテゴリーになりうる天候は、天候自体と同じくらい多様で、ありふれたものから無さそうなものまで様々です。より多くを自分で作成していただくために、少しだけ例を挙げておきます。

「正常」の天候はもっとも簡易なもので、1段階の強度変化となります。過ごしやすい気温・日光・穏やかな風・雲などがあります。「よくある」(2段階の強度変化)はやや正常から外れたもので、地面に降りた露・雨・曇りの日・霧・寒い気温・暑い気温などとなります。3段階の強度変化は「少ない」現象で、雷雨・雪・地面の霜・うだるような暑さ・凍えるような寒さ・強風・天気雨などです。「珍しい」天候はあられ・洪水・砂嵐・竜巻・虹などで、これが4段階の強度変化となります。これらの「珍しい」現象の場合には、術者はその現象を目にしていなくてはなりません。この種の特質でもっとも強大なのは、ハリケーン・大洪水・津波といった伝説的な出来事で、「異様」(-5強度変化)に該当します。魔法で起こしたこの手の出来事は、「特質」つきの呪文の行使を可能にするには不十分かもしれません。天候の長さで段階が決まるのではなく、頻度で決まることに注意してください。たとえば洪水は一度起これば数週間続くかもしれませんし、場所によっては予報のできる出来事かもしれませんが、それでも「珍しい」現象には変わりません。

他の「特質」と同様に、呪文に結びつく天候は開発時に定められ、たとえ同じ段階でも、後で別の天候に変えることはできません(雪も雷雨も同じく「少ない」-3強度変化ですが、雪に結びついた呪文は雷雨では行使できませんし、逆もまたしかりです)。さらに、呪文に結びついた天候はマギの任意に決められるものではなく、また発見には調査判定に成功することが必要です(複数の天候が選択肢として出ることはありえますが)。

実例:
テュータルス派のシモーネは、PeCo40"癩の呪い"を、把握している「天候」に結びつけたいと思いました。曇りの日(住んでいるイングランドではよくある)にそれを結びつけることで、呪文のレベルを30まで下げつつ、かける上での柔軟性をある程度確保しました。次の夏には、シモーネの住処は40日にもわたって曇らない日が続き(なんと奇妙な!)、シモーネは物語のあいだ新しい呪文を行使することができませんでした(特質の代用として必要な8ポーンのウィースを持っていなかったのは残念なことでした)。


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