魔術物品
■姿奪いの鏡
この大きな姿見には、ちょうど唐草模様でもあるかのように、蜘蛛が糸で複雑な文様を織りなすさまが縁取りされている。鏡面は傷一つなく磨き上げられているが、普段はそれをうかがうことはできない。天鵞絨の布で覆ってあるからだ。
布が外されるや、鏡面は波打ち、最初に映した人間を餌食とする。五官に犠牲者が及ぼすはずの作用を、すべて鏡の中に捕らえてしまうのである。対象の映像も音声も何もかも、鏡の世界に映るだけで、本人には何一つ残らない。
目の前に出ても見てもらえない。言葉をかけても聞きとってもらえない。髪の香りにも気づいてくれない。頬に手をそえても肌触りもない。効果が切れるまで、誰にも気づいてもらえず、影法師のようにさまようよりないのである。
Rego-Imaginem 40 R:伸腕
D:月 T:個 効果頻度:1日1回
ウィリアム・モリスの遺作『不思議なみずうみの島々』からヒントをもらったアイディアです。悪い魔女はこうやって虜の姫をアンシーン・サーバントに仕立て、助けに来た騎士を他ならぬ姫自身に接待させるわけですな。ふふふ、陰険。感覚作用がないというだけで、物を運ぶなど物理的な面は普段通りなのがミソです。
■風独楽
トネリコの木でできた独楽で、風の表面で回転するよう呪付されている。紐で回して軸に片足立ちすれば、一緒に空を飛ぶことができるだろう。
もちろん、バランスをとるのは難しい。飛ぶ方向をうまくコントロールするには、〔【器用】+〈運動〉〕判定で難易度9を出すこと。失敗すると意図せぬ飛び方をし(SGが決定)、ボッチすると転落する。
Rego-Auram 10 R:接触
D:直径 T:小 効果頻度:無制限
ネタはアニメ『となりのトトロ』から。メリニータ派なんかに似合いそうですね。ちょっと調べてみたんですが、独楽は世界中に分布しており、紀元前エジプトですでにみられるそうです。
■橘中の楽
大きな木の実で、20パイント入りのカメほどもある。上部に小さな穴が空いており、覗きこむと、中には緑豊かなミニチュアの楽園が見える。指先をつっこむと、吸いこまれるような強い風とともに落下感があり、そしていつしか自分の周りにその楽園が広がっていることに気づくだろう。
Muto-XX(全形相)
25 R:自身 D:特殊 T:個 効果頻度:無制限
内にあるもののサイズをすべて−5するというカラクリでした。ハッキリ言って力技。ヘルメス魔法でレギオーを新規創造できれば、こんな苦労はないんですがねぇ…。入口の穴は中から見れば太陽でしょう。さて出るには?
■留めの灰
タイムを燃やした灰に呪付した秘薬。振りかけて和えた食品について、月が満ち欠けするまで、鮮度の低下を防ぐ。同じ目方の黄金でもなければ買えない香辛料に比べ、まだしも安価なので、各地の宮廷でひそかに重宝されている。伝手のマギから仕入れたこの秘薬を利用し、内陸/山地で海産物を売りさばく商人もいるという。
なにぶん秘薬の媒体が媒体だけに、味が多少スモーキーになってしまうのはやむをえない。とはいえ真っ白塩漬けやら、腐りかけを調味料でごまかすやらのご時世に、灰まじりくらいで素材の味が保たれるのは驚異の的である。
Creo-Animal 10 R:接触,D:月,T:個
植物を対象としたHerbamのバージョンも十分考えられるでしょう。肉に比べれば食品保存の必要性はそれほど高くありませんが、それはそれでマギの研究材料の保管などに使えるはず。
なお、どうせですから調味料も…と、制約術法にMutoやImaginemをかませて美味しくすることもできるでしょうが、なんかそこまですると錬金術でチーズケーキを作る世界になりますな。まぁお好みでどうぞ。
■真実の口
海神ポセイドンの息子であるトリトンの顔をかたどった、大きな石の円盤。嘘つきが顔の口に手を差しこむと、石のトリトンはその手をがっきと噛んで離さない。太陽が沈むと解放してくれるが、それまでに力任せに抜こうとするなら、【筋力】で判定して難易度9を出すこと。
Muto-Terram 7 R:接触
D:太陽 T:個 効果頻度:無制限、使用権限付加、呪付物自身にのみ影響
『ローマの休日』のアレ。使用権限の内容は「嘘つき」で、発動のトリガーは「口に手を差し込む」でした。射程が「接触」ってのも皮肉っちゅうか(笑)
この使い方はSGによって採否分かれるところでしょうが、いずれにせよ使用権限オプションは使いでがあります。ある者にしか弾けないと予言され、それ以外が弾こうとしても、弦からは何一つ音が出ない竪琴とか。士道に悖る行いをしたら、持ち上がらないほど重くなる盾とか。あるいは逆映しとして、医師の誓いを守るかぎり決して底をつかない薬瓶とかね。コンパニオンなど俗世がらみでお使いください。
[戻る]
|