その他

■マギの命名法

 徒弟は一人前のマギになる際に、生みの親につけられた俗名を捨てます。そして、師匠から「ヘルメス名(hermetic name)」を授けられ、以後は生涯それを名乗ることになるのです。まあ、力士のしこ名みたいなものですね(笑)
 で、魔術団の公用語はラテン語であるからに、ヘルメス名も当然ラテン語です。でもラテン語の名前なんて、PLの我々はどうしたら?

 それには、簡単な方法が三つあります。
 まず一つには、歴史上のラテン語の名前から流用すること。手っ取り早くは、スエトニウスの『ローマ皇帝伝』を買ってきましょう(岩波文庫、上下巻 620+720円)。ローマ人の名前、つまりはラテン語の名前が山ほど出てきます。下巻の末尾にはバババンと索引状にリストアップされてますし。

 二つ目は、和羅辞典を使うこと。自分のマギを象徴するような言葉をこれで探してやれば、イメージバッチリです。発音とか係り受けがどうしてもからむので、文法の知識が必要になっちゃいますが、ほんの少しなので、入門書をちょびっとかじるだけでOKです。
 ちなみに、私は国際語学社から出ている奴を使っています。4000円。英語にコンプレックスがなければ、英羅+羅英の "Cassel's LATIN ENGLISH Dictionary"がお勧め。こちらはペーパーバック版がわずか 4.95ドル=600円前後で手に入ります(マジ)。

 最後は、適当な名前のラテン語版を使うこと。魔術団にそぐうかどうかは分かりませんが、近世の学術の世界では、英語のジョージがドイツ語ではゲオルグと言うのと同じ感覚で、そのままラテン語化してしまう伝統がありました。たとえばドイツ人のパッヘルベル(Pachelbel)は、公式の出版楽譜ではラテン語でパケルベリウス(Pachelbelius)と署名しています。
 具体的には、尻尾を男性ならus、女性ならa、(中性ならum・・・)あたりに直すのが常道。もっとも、現在使われている名前でラテン語に由来するものも結構あったりして(英語のAntonyとか)、その辺の変遷をまともにたどると一冊の本になってしまいますが。まぁテキトーに。

■心に夢を

 長期的な夢をルールシステムで記述/構築しやすいことは、アルス・マギカの大きな長所です。それがあれば、あとは放っておいても、夢を目指してPCたちが自分からどんどん動いてくれますから。
 その強みを殺さないためには、トループメンバーがなるべく心を広くもち、お互いの夢をおおらかに受け容れあうのが大事だと思います。春コヴナントの成長を見守るようなサガだと、個々の夢を摺り合わせ織り上げていくだけで、なんとなく楽しめるものです。もちろん、サガ自体に明確なテーマやトーン、方向性を設定しているならば、余分な贅肉は無い方がいいですし、そうでなくとも節度は守るべきではありますが。とにかく人の感性は様々なのですから、簡単に斥けてしまってはもったいない。

機械の体で永遠に生きるアグリッパ、
黄昏を制御して世界の深奥にアクセスするメーヤ、
"猫バス"に揺られるラサ、
火あぶりで最期を遂げるソーン

 そうなるかもしれない、そうならないかもしれない、彼らの未来です。これらはみなPLが自分で言っていた事柄なのですが、それをネタにできるのは、トループにこうした馬鹿話を語り合えるゆとりと機会があるおかげです。これも大事なこと。
 まぁ本来的な話をするなら、キャラクター作成・コヴナント作成の段階で、コンセプトワークの一環としてこれを詰められれば、それが一番ではあるですけどね。

■正統性

 師から弟子へと襲名して、「第○代××」って名乗るマギはいませんかね。少数者が派内のシジルを掌握しているトレメーレ派なんかで。跡目決定の験比べ(ケルターメン)をするとか。

「おしゃべり鳥め。ここが塔の中でなければ、あんたのしっぽは体から離れているところだわ」
「そのとおりここは塔の中だ。つまり正当なヘルメ・ハイネでなければ、ここで好き勝手することはできない」
ヘルメ・ハイネが壁ぎわで低い声で言った。
「そして、先代が認めたのはぼくだ。ミス・ダルシラ、今夜はおひきとりを。せっかく見舞いにきてくださったのに、とんだおもてなしで申し訳ないが」
(井辻朱美『ヘルメ・ハイネの水晶の塔』より)

 これすなわち、ReVi“炉辺の守り”。定番ですが強力な呪文です。また、魔術物品の使用権限オプションで表現する手もあります。ともかく、兄弟弟子の相克や師の消えた経緯が、物語の絶好のネタになるでしょう。

 そういや、祖師ウェルディーティウスその人の作であり、雑集派筆頭に代々受け継がれてきた「朝焼けのローブ」ってのがありましたね。予言が外れた(らしい)ことで名声を失い、影響力の低下が著しい現筆頭イマーノラ、跡を継ぐのは誰でしょう? カオス的な雑集派にあって、在りし日の彼女はそのカリスマからさしたる反対もなくその座に就いたのですが。そして、魔術団の終焉は近いとするその予言は、本当に外れたのでしょうか?

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